文献情報
文献番号
202310033A
報告書区分
総括
研究課題名
新生児慢性肺疾患の患者と家族のQOL向上を目指す包括的研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23FC1004
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
難波 文彦(埼玉医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 中村 友彦(地方独立行政法人長野県立病院機構長野県立こども病院)
- 高橋 尚人(東京大学 医学部附属病院 小児・新生児集中治療部)
- 平野 慎也(地方独立行政法人 大阪府立病院機構 大阪府立母子保健総合医療センター 新生児科)
- 中西 秀彦(北里大学 医学部)
- 諫山 哲哉(国立成育医療研究センター 新生児科)
- 大田 えりか(伊東 えりか)(聖路加国際大学大学院 看護系研究科 国際看護学)
- 石隈 利紀(筑波大学大学院人間総合科学研究科)
- 小橋 昌司(兵庫県立大学工学研究科)
- 仲村 秀俊(埼玉医科大学 医学部)
- 岡崎 薫(東京都立小児総合医療センター 新生児科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
4,230,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
めざましい周産期医療の発展により、低出生体重児の生存率は劇的な改善を示したが、新生児慢性肺疾患(CLD)は未だ高頻度で重篤な、未熟児の合併症であり、発症率は増加している。
本研究では、成人期までの呼吸予後に影響するとされるCLDに関する問題を解決し、CLD患者さらには患者家族の長期的なQOL向上に貢献することを目的とした。
本研究では、成人期までの呼吸予後に影響するとされるCLDに関する問題を解決し、CLD患者さらには患者家族の長期的なQOL向上に貢献することを目的とした。
研究方法
1) CLD児とその家族の予後およびQOL改善のための調査・研究
① 小児慢性特定疾患データを用いたCLD児の支援ニーズ把握のための実態調査
② 在宅酸素療法及び人工換気呼吸療法に関する実態調査と在宅酸素療法ガイドラインの作成
③ 重症CLD医療的ケア児の家族に対する実態調査
④ 人工知能(AI)を用いたCLD児の呼吸予後予測法の開発
2) CLD疾患レジストリの構築
① 重症CLD疾患レジストリの構築と運用
② 早産・CLDに関連する成人呼吸器疾患レジストリの構築
3) 質改善(quality improvement)研究
4) CLD病型分類およびCLD診療ガイドラインの改訂
① 系統的レビューとメタ解析
② CLD分類改訂
③ CLD病型分類の表現型-サイトカインプロファイルを中心に-
④ CLD診療ガイドライン改訂
① 小児慢性特定疾患データを用いたCLD児の支援ニーズ把握のための実態調査
② 在宅酸素療法及び人工換気呼吸療法に関する実態調査と在宅酸素療法ガイドラインの作成
③ 重症CLD医療的ケア児の家族に対する実態調査
④ 人工知能(AI)を用いたCLD児の呼吸予後予測法の開発
2) CLD疾患レジストリの構築
① 重症CLD疾患レジストリの構築と運用
② 早産・CLDに関連する成人呼吸器疾患レジストリの構築
3) 質改善(quality improvement)研究
4) CLD病型分類およびCLD診療ガイドラインの改訂
① 系統的レビューとメタ解析
② CLD分類改訂
③ CLD病型分類の表現型-サイトカインプロファイルを中心に-
④ CLD診療ガイドライン改訂
結果と考察
1)-①:
小児慢性特定疾患治療研究事業に係る医療意見書登録データの研究目的利用申請を行った。
1)-②:
在宅酸素療法に関するアンケート回答率は91.1%であった。在宅酸素療法導入基準の取り決めは施設毎に異なっていた。退院後の在宅酸素療法の慢性期管理方針も施設毎に様々であった。中止時期の判断は具体的な取り決めがない施設が多かった。導入基準、管理方針ともガイドラインの整備が必要と考えられた。
1)-③:
i. 家族は、多様な主題に対し、多様なネガティブ感情やポジティブ感情を抱いていた。また、語りの7割が自身の困りに対し、自己対処した上での発言であると整理された。
ii. 早産児の両親に対しインタビュー調査を行ったところ、「不満」「不安・心配」「孤独」等のネガティブ感情は、概ねどの母親にも共通したが、後期早産児の家族からは、支援が不足していることへの不満が語られた。
1)-④:
胸部画像全体を対象としたとき、DenseNet201が最も高精度であった。撮影画像から胸部領域のみを限定した重症化予測を行ったところ、同じくDenseNet201が最も高精度であった。
2)-①
重症慢性肺疾患のレジストリを構築し、令和5年8月よりデータ収集を始めた。令和6年3月時点で7例の登録があった。
2)-②
日本呼吸器学会との共同で、早産・低出生体重関連COPDインターネット・サーベイを日本呼吸器学会ホームページ上に作成し、使用を開始した。今後インターネット・サーベイを通じて、低出生体重に関連した患者の特徴を明らかにする予定である。
3):
ステロイド吸入、生後早期からの容量調節性従圧人工換気がCLD予後に有効であった。早期カフェイン投与が重症度の高い22-23週群のみで有意差がみられたことは今後のCLD管理方法に影響を与える可能性があると推測された。
4)-①:
CLDに対するサーファクタント混合ブデソニド気管内投与に関する系統的レビューと呼吸窮迫症候群の診断精度に関するレビューのプロトコルを作成した。
4)-②:
CLD新分類の主要項目である組織学的絨毛膜羊膜炎、SGA、胸部エックス線正面像におけるBubbly/Cystic所見の有無の組み合わせが、長期呼吸予後、神経発達予後と有意な関連性があることを証明した。また研究成果を国内外での学会で発表することにより、新病型分類を国内外に周知した。
4)-③:
CLDとSGA両方あり群は両方なし群よりも日齢1-7でMCP-1が、日齢25-31でIL-8が有意に高値だった。またCLDとCAMの両方あり群は両方なし群よりも日齢25-31でTNFαが有意に高値だった。
4)-④
ガイドラインで新たに扱うべき臨床的疑問を特定し、それぞれに対する系統的レビュー計画書の作成を行った上で、系統的レビューを行った。次年度は、系統的レビューに基づき、科学的根拠のまとめと推奨を作成し、診療ガイドライン作成を行う予定である。
小児慢性特定疾患治療研究事業に係る医療意見書登録データの研究目的利用申請を行った。
1)-②:
在宅酸素療法に関するアンケート回答率は91.1%であった。在宅酸素療法導入基準の取り決めは施設毎に異なっていた。退院後の在宅酸素療法の慢性期管理方針も施設毎に様々であった。中止時期の判断は具体的な取り決めがない施設が多かった。導入基準、管理方針ともガイドラインの整備が必要と考えられた。
1)-③:
i. 家族は、多様な主題に対し、多様なネガティブ感情やポジティブ感情を抱いていた。また、語りの7割が自身の困りに対し、自己対処した上での発言であると整理された。
ii. 早産児の両親に対しインタビュー調査を行ったところ、「不満」「不安・心配」「孤独」等のネガティブ感情は、概ねどの母親にも共通したが、後期早産児の家族からは、支援が不足していることへの不満が語られた。
1)-④:
胸部画像全体を対象としたとき、DenseNet201が最も高精度であった。撮影画像から胸部領域のみを限定した重症化予測を行ったところ、同じくDenseNet201が最も高精度であった。
2)-①
重症慢性肺疾患のレジストリを構築し、令和5年8月よりデータ収集を始めた。令和6年3月時点で7例の登録があった。
2)-②
日本呼吸器学会との共同で、早産・低出生体重関連COPDインターネット・サーベイを日本呼吸器学会ホームページ上に作成し、使用を開始した。今後インターネット・サーベイを通じて、低出生体重に関連した患者の特徴を明らかにする予定である。
3):
ステロイド吸入、生後早期からの容量調節性従圧人工換気がCLD予後に有効であった。早期カフェイン投与が重症度の高い22-23週群のみで有意差がみられたことは今後のCLD管理方法に影響を与える可能性があると推測された。
4)-①:
CLDに対するサーファクタント混合ブデソニド気管内投与に関する系統的レビューと呼吸窮迫症候群の診断精度に関するレビューのプロトコルを作成した。
4)-②:
CLD新分類の主要項目である組織学的絨毛膜羊膜炎、SGA、胸部エックス線正面像におけるBubbly/Cystic所見の有無の組み合わせが、長期呼吸予後、神経発達予後と有意な関連性があることを証明した。また研究成果を国内外での学会で発表することにより、新病型分類を国内外に周知した。
4)-③:
CLDとSGA両方あり群は両方なし群よりも日齢1-7でMCP-1が、日齢25-31でIL-8が有意に高値だった。またCLDとCAMの両方あり群は両方なし群よりも日齢25-31でTNFαが有意に高値だった。
4)-④
ガイドラインで新たに扱うべき臨床的疑問を特定し、それぞれに対する系統的レビュー計画書の作成を行った上で、系統的レビューを行った。次年度は、系統的レビューに基づき、科学的根拠のまとめと推奨を作成し、診療ガイドライン作成を行う予定である。
結論
CLDに関する諸問題を解決し、患者及び患者家族が受ける医療水準およびQOLの向上に貢献するため、①CLDの実態調査、②予後予測法開発、③疾患レジストリの構築・運用、④質改善研究、⑤CLD病型分類の普及・利用、⑥系統的レビューとメタ解析、⑦ガイドライン作成を行った。その結果、CLD患者が受ける医療水準およびQOLの向上が期待される。
公開日・更新日
公開日
2025-06-11
更新日
-