我が国における神経核内封入体病患者の実態調査および、診療ガイドライン作成に向けた調査研究

文献情報

文献番号
202310031A
報告書区分
総括
研究課題名
我が国における神経核内封入体病患者の実態調査および、診療ガイドライン作成に向けた調査研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23FC1002
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
曽根 淳(愛知医科大学 加齢医科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 岩崎 靖(愛知医科大学  加齢医科学研究所 神経病理部門)
  • 田中 章景(横浜市立大学 大学院医学研究科)
  • 高嶋 博(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 水野 敏樹(京都府立医科大学医学研究科)
  • 石井 一弘(筑波大学 医学医療系神経内科)
  • 石浦 浩之(岡山大学 学術研究院医歯薬学域脳神経内科学)
  • 熊田 聡子(東京都立神経病院 神経小児科)
  • 吉田 眞理(愛知医科大学 加齢医科学研究所)
  • 大橋 渉(愛知医科大学 臨床研究支援センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
神経核内封入体病 (Neuronal intranuclear inclusion disease : NIID)は、H&E標本においてエオジン好性に染色される核内封入体が、中枢神経系および末梢神経系の細胞、さらに一般臓器の細胞の核内に広く認められる神経変性疾患である。臨床診断は困難とされてきたが、NIID の生前診断に皮膚生検が有効であることを報告した後、症例を蓄積し、NIID の原因遺伝子がNOTCH2NLC 遺伝子のGGCリピート配列の延長であることを報告した。
これらの研究成果をもとに、2019 年より、難治性疾患政策研究事業において、NIID 症例の臨床所見、検査所見、皮膚生検さらに遺伝子検査結果を検討し、NIID の診断基準案および重症度分類案を作成、検討し、改訂を重ねた。現在、感度、特異度などを細かく検討した案について、日本神経学会の承認を受けるため、審議を受けている。
本研究班では、診断基準案の承認手続きを継続しつつ、前研究班で開始されたNIID の全国疫学調査研究を継続し、縦断的なNIID の患者情報を収集、検討することで、NIID の診療ガイドライン作成に資するデータの構築をすすめる。NIID の診療ガイドラインについては、現時点で、NIID 多数例での臨床像を検討している論文の数は少なく、制定するに十分なエビデンスが揃っているとは言い難い状況である。そこで、将来的に診療ガイドラインの策定に資するエビデンスの構築を、報告症例数の少ない小児例を含めて行うことを目的とする。
研究方法
NIIDが疑われる症例に対し、皮膚生検および遺伝子検査を行い、双方とも陽性である症例を蓄積し臨床像を解析する。研究班の各施設が中心となって、全国疫学調査研究への登録を進める。並行してNIIDの臨床データ、および皮膚生検結果、遺伝子検査結果について、分担研究者である大橋渉を中心に統計学的手法を用い解析する。
高頻度に認められる臨床症状および検査異常さらに、NIID診断基準における診断のカテゴリーについても、臨床症状および検査結果の組み合わせのさまざまなパターンについて、それぞれ感度および特異度を検討し、その妥当性を検
討し診断基準を作成、日本神経学会の承認を得たのち、厚生労働省に提出する。
結果と考察
NIID多数例での感度、特異度の解析結果を元に研究班内で繰り返し討議を行ない、NIID診断基準最終案を作成、日本神経学会に提出し、令和5年6月14日付で承認を得た。それをもって、厚生労働省に提出し、新規指定難病として
の指定を依頼している。
 また、小児NIID例の蓄積を進めるため、小児神経学会と連携し、令和6年5月に開催される第65回日本小児神経学会学術集会において、教育講演としてNIIDの臨床像について小児神経医に広く解説するとともに、全国調査への協力を
呼びかける予定となっている。
 また、ニューロパチーのコホートで、遺伝子解析の結果、診断が確定できなかった1783症例について、NOTCH2NLC遺伝子のGGCリピート異常伸長を解析したところ、22家系26症例で延長が認められた。
結論
NIIDの診断基準が日本神経学会の承認を得たことにより、NIIDの疾患概念がさらに臨床の場面に浸透し、診断症例が増加することが予測される。
また、多数例での検討の結果、本邦の末梢神経障害のコホートにおいてNOTCH2NLCのGGCリピート延長が比較的多くの症例で認められたことから、NIIDの末梢神経障害が、臨床的に重要であることが明らかとなった。小児例については、現時点では報告は少ない。
神経核内封入体病の診断基準が日本神経学会で承認されたため、臨床の場面で広く運用するとともに、他の学会員、特に小児科領域に広く啓蒙することが必要である

公開日・更新日

公開日
2025-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-05-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202310031Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,200,000円
(2)補助金確定額
5,200,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,216,382円
人件費・謝金 954,359円
旅費 395,949円
その他 433,310円
間接経費 1,200,000円
合計 5,200,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2024-09-09
更新日
2024-09-10