文献情報
文献番号
202310025A
報告書区分
総括
研究課題名
遺伝性骨髄不全症の登録システムの構築と診断基準・重症度分類・診断ガイドラインの確立に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22FC1011
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
伊藤 悦朗(国立大学法人 弘前大学 大学院医学研究科地域医療学)
研究分担者(所属機関)
- 張替 秀郎(東北大学 大学院医学系研究科)
- 矢部 普正(東海大学 医学部医学科)
- 真部 淳(国立大学法人 北海道大学大学院 医学研究院 小児科学教室)
- 高橋 義行(名古屋大学大学院医学系研究科 成長発達医学)
- 菅野 仁(東京女子医科大学 医学部)
- 勝木 陽子(九州大学 大学院薬学研究院)
- 藤田 雅俊(九州大学 大学院薬学研究院)
- 高田 穣(京都大学 放射線生物研究センター)
- 大賀 正一(国立大学法人九州大学 医学研究院成長発達医学分野)
- 照井 君典(弘前大学 大学院医学研究科小児科学)
- 古山 和道(岩手医科大学生化学講座分子医化学分野)
- 多賀 崇(滋賀医科大学 医学部)
- 小林 正夫(広島大学)
- 唐川 修平(広島大学病院 小児科)
- 渡邉 健一郎(静岡県立こども病院 血液腫瘍科)
- 金兼 弘和(東京医科歯科大学 大学院 小児地域成育医療学講座)
- 山口 博樹(日本医科大学 医学部)
- 神尾 卓哉(東京慈恵会医科大学 小児科学講座)
- 小林 明恵(弘前大学大学院 医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
12,308,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
主要な遺伝性骨髄不全症(IBMFS)には、ダイアモンド・ブラックファン貧血(DBA)、ファンコニ貧血(FA)、遺伝性鉄芽球性貧血(CSA)、先天性赤血球形成異常症(CDA)、シュワッハマン・ダイアモンド症候群(SDS)、先天性角化不全症(DC)、先天性好中球減少症(SCN)の7疾患がある。本研究の対象疾患は、上述の7疾患に加え、IBMFSと鑑別診断が難しい先天性溶血性貧血(CHA)の8疾患である。先行班研究を発展させ、「遺伝性骨髄不全症のレジストリ」を確立し、より優れた「診断基準・重症度分類・診断ガイドライン」の作成を目指す。これまでの研究を通じて確立した解析基盤を共有し、全ゲノムシークエンス解析拠点、日本小児血液・がん学会の疾患登録事業や原発性免疫不全班とも連携し、正確な診断に基づいた新規症例の把握と検体収集を行う。遺伝子診断を含めた中央診断を行い、正確な診断に基づいた疫学調査を行う。難病プラットフォームを用いた「遺伝性骨髄不全症候群のレジストリ」の構築を進め、より精度の高い疾患データベースの確立とエビデンスに基づいた診断基準、重症度分類を診療ガイドラインの改訂を行う。
研究方法
本研究申請では、発症数が少なく共通点の多い遺伝性骨髄不全症の医療水準の向上をより効果的に進めるために、一つの研究班に統合して研究を推進する。本研究班は、8つの疾患別研究拠点から構成され、各研究拠点(DBA(伊藤)、SA(張替)、FA(矢部・高田)、CDA(高橋・真部)、DC (高橋、山口)、SDS (渡邉)、SCN(小林)、CHA(菅野))は、疫学調査、臨床データおよび検体の収集、遺伝子診断のための既知の原因遺伝子解析とバイオマーカーなどの特殊検査を担当する。研究代表者(伊藤)が、DBAの研究を担当するとともに研究全体を統括する。令和5年度は、データ収集と観察研究を継続し、正確な遺伝性骨髄不全症の実態把握を行い、より精度の高い疾患データベースの確立とエビデンスに基づいた重症度分類の改訂を行う。
結果と考察
各研究拠点は、疫学調査、臨床データおよび検体の収集、遺伝子診断のための既知の原因遺伝子解析とバイオマーカーなどの特殊検査を担当し正確な診断に基づいた新規症例の把握と検体収集を行った。DBAは、12例が新規登録され、2例(17%)に既報の遺伝子変異を認めた。原因遺伝子を同定することができなかったDBAの検体(31症例93検体)を、國土班に依頼して全ゲノムシークエンスを行い、4例にDBAの原因遺伝子、1例にSBDS遺伝子の変異を同定した。これまでに273例のDBAの臨床情報と検体の収集および遺伝子解析を行い、149例(54.6%)に原因遺伝子を見出した。CSA 2例の登録があり、ALAS2変異が検出された。造血細胞移植を施行した80例のFA症例における固形がんの発症と予後を解析した。19例が固形がんを発症、発症年齢は中央値25歳、発症後の5年生存率は41.4%であった。原因遺伝子が明らかになっていないDCを含む骨髄不全症117例に対してDCの新規原因遺伝子変異であるPARN変異を検索したが、変異は認められなかった。溶血性貧血疑い150症例にパネル遺伝子検査を行い、赤血球膜異常症50%、赤血球酵素異常症14%、ヘモグロビン異常症2%、CDA3%を同定した。CHAの造血幹細胞移植では無効造血や鉄過剰症により生着不全リスクが高い。3例のCHA症例にハイドロキシウレア単剤によるpreconditioningを行い、有用性・安全性を示唆する結果が得られた。乳児期早期の同種臍帯血移植が、Kostmann症候群の好中球減少のみならず神経合併症の改善にも有効であることが示唆された。遺伝性骨髄不全症候群を疑う123例に対して、ターゲットシーケンスを実施し、DBA4例、DC3例、ADH5/ALDH2欠損症3例、FA2例、CDA1例を同定した。2017年に出版した先天性骨髄不全症診療ガイドラインの改訂版「遺伝性骨髄不全症診療ガイドライン2023」を日本小児血液・がん学会の承認を受けて出版した。本研究班で得られたデータをもとに、各疾患の重症度分類の改訂を行った。さらに、難病プラットフォーム(AMED 松田班)を用いた「遺伝性骨髄不全症候群のレジストリ」にDBA症例を中心にWeb登録を進めた。
結論
正確な診断に基づいた新規症例の把握と検体収集を行い、先天性骨髄不全症のより精度の高い疾患データベースの構築を推進した。造血細胞移植を受けた80例のFA症例の疫学調査から、我が国のFAに伴う固形がんのまとまった疫学データが初めて得られた。本研究班で得られたデータをもとに遺伝性骨髄不全症の重症度分類の改訂を行った。遺伝性骨髄不全症診療ガイドライン2023を日本小児血液・がん学会の承認を受けて出版した
公開日・更新日
公開日
2025-07-02
更新日
-