癌胎児性抗原を利用した肝がんの超早期診断法と発症予防ワクチンの開発

文献情報

文献番号
200933015A
報告書区分
総括
研究課題名
癌胎児性抗原を利用した肝がんの超早期診断法と発症予防ワクチンの開発
課題番号
H20-肝炎・一般-002
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
中面 哲也(国立がん研究センター東病院 臨床開発センター)
研究分担者(所属機関)
  • 木下 平(国立がん研究センター東病院)
  • 池田 公史(国立がん研究センター東病院)
  • 古瀬 純司(杏林大学医学部)
  • 千住 覚(熊本大学大学院生命科学研究部)
  • 河島 光彦(国立がん研究センター東病院)
  • 野村 和弘(東京労災病院)
  • 小井戸 薫雄(東京慈恵会医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
24,696,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
肝細胞がん(HCC)の超早期診断法と発症予防ワクチンの開発を主な目的とし、肝細胞がんの新規免疫細胞療法の開発も目指す。
研究方法
1.HCCの超早期診断法の開発
2.HCCの発症予防ワクチンの開発
3.CTL療法の開発
4.陽子線治療の安全性と有効性の検討
5.ES-DCワクチン及び細胞療法の開発
結果と考察
HCC根治的切除後AFPが正常値まで下がりきらない症例が存在し、それらの多くは術後再発をきたすことが確認され、また血清GPC3のHCC超早期診断への可能性を示すことができた。GPC3ペプチドワクチンの臨床第1相試験により、安全性と免疫学的有効性を確認することができ、臨床的効果も見出すことができた。22年度は慢性肝炎・肝硬変患者を対象とした予防ワクチン開発のための臨床試験を計画し実施する。陽子線との併用も検討する。ペプチドワクチン投与患者6名からGPC3ペプチド特異的CTLクローンを樹立した。今後はGPC3ペプチド特異的T細胞移入療法も目指した検討も行う。陽子線治療はきわめて良好な局所制御率と生存率を示した。治療前インドシアニン・グリーン滞留率15分値(ICG R15%)と30 Cobalt-Gray-Equivalent(CGE)以上が投与された非癌部の体積(V30%)を用いて症例選択を行うことにより、陽子線治療の局所制御とGPC3の再発予防との相乗効果が期待できる臨床試験の対象を適確に抽出できる可能性が示唆された。マウスiPS-DCを用いてOVA抗原特異的な細胞傷害性T細胞の活性化とOVA抗原特異的な抗腫瘍免疫応答の誘導を行うことが可能であった。OP9細胞との共培養による血液細胞への分化誘導法に基づき、ヒトiPS細胞を樹状細胞およびマクロファージへ分化させることができた。ヒトiPS-DCが、アロT細胞に対する刺激能力、抗原提示機能、サイトカイン産生能力など、樹状細胞としての機能を備えていることを確認した。
結論
HCC根治的切除後の再発予知における術後AFP値の有用性が示され、また血清中GPC3値はHCC超早期診断に有用である可能性が示唆された。GPC3を標的とするペプチドワクチンの安全性と免疫学的有効性を確認することができ、臨床的効果も見出すことができた。さらにワクチン投与患者PBMCからGPC3ペプチド特異的CTLクローンを樹立し、GPC3陽性癌細胞株を傷害しうることを示した。ICG R15%とV30%は切除不能HCCに対する陽子線治療の適応判断に有用であると考えられた。ヒトのiPS細胞は機能的な樹状細胞を作成するための細胞ソースとなりうることが示された。

公開日・更新日

公開日
2011-06-06
更新日
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