フォン・ヒッペル・リンドウ病における実態調査・診療体制構築とQOL向上のための総合的研究

文献情報

文献番号
202310015A
報告書区分
総括
研究課題名
フォン・ヒッペル・リンドウ病における実態調査・診療体制構築とQOL向上のための総合的研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22FC1001
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
辻川 明孝(京都大学 大学院医学研究科眼科学)
研究分担者(所属機関)
  • 石田 晋(北海道大学 大学院医学研究科 眼科学)
  • 海野 倫明(東北大学 大学院医学系研究科 消化器外科学)
  • 江藤 正俊(九州大学 大学院医学研究院 泌尿器科学分野)
  • 小杉 眞司(京都大学 大学院医学研究科 医療倫理学・遺伝 医療学)
  • 齊藤 延人(東京大学医学部附属病院 脳神経外科学)
  • 妹尾 浩(京都大学大学院 医学研究科 消化器内科学)
  • 高橋 綾子(京都大学 大学院医学研究科 眼科学)
  • 竹越 一博(筑波大学 医学医療系臨床医学域スポー ツ医学検査医学)
  • 中村 英二郎(国立研究開発法人国立がん研究セン ター中央病院 泌尿器・後腹膜腫瘍科)
  • 中本 裕士(京都大学 医学部医学研究科 画像診断学・核医 学)
  • 長谷川 奉延(慶應義塾大学 医学部医学研究科 小児科学)
  • 武笠 晃丈(熊本大学 大学院生命科学研 究部 脳神経外科 学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
2,650,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
フォン・ヒッペル・リンドウ(VHL)病は、常染色体優性遺伝の希少難病(推定有病率36,000人に1人)であり、脳脊髄血管芽腫、網膜血管腫、膵神経内分泌腫瘍・多発膵嚢胞、腎細胞癌、褐色細胞腫、内リンパ嚢腫瘍などを合併する症候群である。小児期から生涯にわたって全身に発症を繰り返し、複数回の手術を要し、四肢麻痺、めまい、視覚障害などQOLの低下も著しい。身体機能の温存には、複数診療科が連携し継続して検査を行い、適切な時期での治療介入を行うことが必須となる。本症候群は、希少疾患のため疫学も不明であり、専門医が少数であるため適切な医療を受けられる十分な診療体制は構築されていない。本研究の目的は、疫学・実態調査、現在の医療体制に即した診断・治療の標準化を実現し、患者・家族に対して適切な医療体制および社会福祉制度の環境を整え、QOLを向上させ、本症候群の臨床的克服に向けた基盤を整備することである。
研究方法
①各診療科のVHL病専門家にて、診断基準・重症度分類や診療指針の改訂を行い、関連学会の承認を得て、一般公開を行う。指定難病の申請を行う。
②遺伝子診断・カウンセリングも含めた診療体制の整備を行う。
③ナショナルデータベース(全国民規模レセプトデータベース)を利用した疫学調査を実施する。
④患者への啓発活動として、患者会ほっとChainと連携を行う。
⑤国際連携として、米国VHL Allianceにおける国際拠点施設として連携を行う。
結果と考察
①本研究班13名の研究代表者・分担者に加え、研究協力者として合計11診療科のVHL病専門家42名を全国より選任、合計55名の研究班を結成し、令和5年5月7日第3回班会議を開催した。診断基準・重症度分類・および改訂した診療の手引きに関して、9関連学会において承認を得た。令和6年1月厚生科学審議会指定難病検討委員会へ指定難病の指定申請を行った。令和6年2月 『VHL病診療の手引き(2024年版)』として、各関連学会および患者会へ連絡、一般公開をウェブ上で行った。
②本邦では遺伝学的検査が保険適応ではなく、十分な検査体制が整備されていないことから、日本唯一のVHL病センターを有する京都大学附属病院にてG1438「フォン・ヒッペル・リンドウ病に関する遺伝学的研究」を令和6年1月に運用開始した。また遺伝カウンセリングについては、同センターにて、遺伝カウンセリングを行い、令和4-6年度科学研究費助成事業若手研究として、「遺伝性腫瘍家系の未発症血縁者を健康行動に繋げる支援プログラムの検討:VHL病を中心に」を平行して開始した。
③疫学研究として昨年度の解析に加えさらに、各病変を有する患者における他病変の有病割合、居住地における有病割合などのデータ解析を行った。
④患者会との連携については、令和5年6月25日「VHL病における腎細胞癌の概要」の医療講演会を行った。
⑤国際連携として、毎月開催されるVHL Alliance Tumor BoardのWEB症例カンファレンスにも毎回参加し交流を深め、最新の知見を取り入れた。
 VHL病は、診断、適切なフォローアップ、適切な時期での治療介入が、患者の身体機能の温存、QOL向上に重要であるが、希少疾患であり、複数診療科に病変がまたがるため国内での診療体制は十分に構築されているとは言い難い。また常染色体顕性遺伝かつ浸透率がほぼ100%であることから遺伝学的アプローチ・ケアも重要である。本研究では、7年ぶりに診療指針および診断基準・重症度分類を大幅改訂し、関連学会から承認を得て、「VHL病診療の手引き(2024年版)」として一般公開した。医療従事者および患者が参照することで、本邦でのVHL病の診療の質を底上げし、早期発見・適切な管理による身体機能の温存、QOLの向上などの成果が期待される。遺伝カウンセリング・遺伝学的検査は未だ国内での体制が整備されておらず、まずは研究にて具体的なカウンセリング体制・検査体制の基盤の作成を開始した。本年度も患者会と連携し、医療講演会を実施することで、患者自身への疾患への理解を深めることもできた。国際的なWEBカンファレンスに参加することで、先行承認・使用実績のある海外の最新知見を取り入れ、今後も世界水準のVHL病診療に向けて情報共有を行っている。
結論
遺伝性希少難病フォン・ヒッペル・リンドウ(VHL)病の診療体制の構築と社会福祉制度の整備による臨床的克服、QOL向上を目的として、「VHL病診療の手引き(2024年版)を一般公開し、診断・治療の標準化、疫学調査、患者への啓発活動、国際連携を行った。VHL病患者の早期診断、適切な時期かつ低侵襲治療介入を実現するなど医療の質を底上げし、早期発見・適切な管理による身体機能の温存、QOLの向上などの成果に繋がる成果が期待される。

公開日・更新日

公開日
2025-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-05-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202310015B
報告書区分
総合
研究課題名
フォン・ヒッペル・リンドウ病における実態調査・診療体制構築とQOL向上のための総合的研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22FC1001
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
辻川 明孝(京都大学 大学院医学研究科眼科学)
研究分担者(所属機関)
  • 石田 晋(北海道大学 大学院医学研究科 眼科学)
  • 海野 倫明(東北大学 大学院医学系研究科 消化器外科学)
  • 江藤 正俊(九州大学 大学院医学研究院 泌尿器科学分野)
  • 小杉 眞司(京都大学大学院 医学研究科 医療倫理学・遺伝医療学)
  • 齊藤 延人(東京大学医学部附属病院 脳神経外科学)
  • 妹尾 浩(京都大学大学院 医学研究科 消化器内科学)
  • 高橋 綾子(京都大学 大学院医学研究科 眼科学)
  • 竹越 一博(筑波大学 医学医療系 臨床医学域スポー ツ医学 検査医学)
  • 中村 英二郎(国立研究開発法人 国立がん研究セン ター中央病院 泌尿器・後腹膜腫 瘍科)
  • 中本 裕士(京都大学 医学部医学研究科 画像診断学・核医 学)
  • 長谷川 奉延(慶應義塾大学 医学部 医学研究科 小児科学)
  • 武笠 晃丈(熊本大学 大学院生命科学研究部 脳神経外科学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
フォン・ヒッペル・リンドウ(VHL)病は、常染色体優性遺伝の希少難病(推定有病率36,000人に1人)であり、脳脊髄血管芽腫、網膜血管腫、膵神経内分泌腫瘍・多発膵嚢胞、腎細胞癌、褐色細胞腫、内リンパ嚢腫瘍などを合併する症候群である。小児期から生涯にわたって全身に発症を繰り返し、複数回の手術を要し、四肢麻痺、めまい、視覚障害などQOLの低下も著しい。身体機能の温存には、複数診療科が連携し継続して検査を行い、適切な時期での治療介入を行うことが必須となる。本症候群は、希少疾患のため疫学も不明であり、専門医が少数であるため適切な医療を受けられる十分な診療体制は構築されていない。本研究の目的は、疫学・実態調査、現在の医療体制に即した診断・治療の標準化を実現し、患者・家族に対して適切な医療体制および社会福祉制度の環境を整え、QOLを向上させ、本症候群の臨床的克服に向けた基盤を整備することである。
研究方法
①各診療科のVHL病専門家にて、診断基準・重症度分類や診療指針の改訂を行い、関連学会の承認を得て、一般公開を行う。指定難病の申請を行う。
②遺伝子診断・カウンセリングも含めた診療体制の整備を行う。
③ナショナルデータベース(全国民規模レセプトデータベース)を利用した疫学調査を実施する。
④患者への啓発活動として、患者会ほっとChainと連携を行う。
⑤国際連携として、米国VHL Allianceにおける国際拠点施設に申請し、連携を行う。
結果と考察
①本研究班13名の研究代表者・分担者に加え、研究協力者11診療科のVHL病専門家42名を選任し、合計55名の研究班を結成した。診断基準・重症度分類・改訂した診療の手引きに関して、9関連学会において承認を得た。令和6年1月厚生科学審議会指定難病検討委員会へ指定難病の指定申請を行った。令和6年2月 『VHL病診療の手引き(2024年版)』として、各関連学会および患者会へ連絡、一般公開をウェブ上で行った。
②本邦では遺伝学的検査が保険適応ではなく、十分な検査体制が整備されていないことから、日本唯一のVHL病センターを有する京都大学附属病院にて、遺伝学的検査および遺伝カウンセリングに関する研究を平行して開始した。
③ナショナルデータベース(全国民規模レセプトデータベース)にて疫学研究を行った。本邦におけるVHL病の有病者数は1,448人、診断年齢の平均は40.1歳であった。各臓器におけるVHL病関連腫瘍の有病割合、合併の割合、居住地における有病割合などを明らかにした。
④患者会との連携については、令和4年6月26日、令和5年6月25日医療講演会を行った。
⑤京都大学VHL病センターが令和4年12月に米国VHL Allianceの国際連携施設として認定された。VHLA国際WEB症例カンファレンスに毎月参加し交流を深め、最新の知見を取り入れた。
 VHL病は、診断、適切なフォローアップ、適切な時期での治療介入が、患者の身体機能の温存、QOL向上に重要であるが、希少疾患であり、複数診療科に病変がまたがるため国内での診療体制は十分に構築されているとは言い難い。また常染色体顕性遺伝かつ浸透率がほぼ100%であることから遺伝学的アプローチ・ケアも重要である。本研究では、7年ぶりに診療指針および診断基準・重症度分類を大幅改訂し、最新の知見にもとづいた標準的診療を策定し、関連学会から承認を得て、「VHL病診療の手引き(2024年版)」として一般公開した。医療従事者および患者が参照することで、本邦でのVHL病の診療の質を底上げし、早期発見・適切な管理による身体機能の温存、QOLの向上などの成果が期待される。レセプトデータベースでの疫学研究を行うことで、本邦における本症候群の全体像、臨床表現型が明らかにされた。遺伝カウンセリング・遺伝学的検査について具体的なカウンセリング体制・検査体制の基盤の作成を開始した。患者会と連携し、医療講演会を実施することで、患者自身への疾患への理解を深めることもできた。またVHL病新規治療薬HIF-2α阻害薬の治験が令和5年から国内で開始されており、国際拠点施設として認定され、国際的なWEBカンファレンスに参加することで、先行承認・使用実績のある海外の最新知見を取り入れ、診療水準の向上に貢献した。
結論
遺伝性希少難病フォン・ヒッペル・リンドウ(VHL)病の診療体制の構築と社会福祉制度の整備による臨床的克服、QOL向上を目的として、「VHL病診療の手引き(2024年版)」を一般公開し、診断・治療の標準化、疫学調査、患者への啓発活動、国際連携を行った。VHL病患者の早期診断、適切な時期かつ低侵襲治療介入を実現するなど医療の質を底上げし、早期発見・適切な管理による身体機能の温存、QOLの向上などの成果に繋がる成果が期待される。

公開日・更新日

公開日
2025-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-05-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202310015C

成果

専門的・学術的観点からの成果
ナショナルデータベース疫学研究を行い、本邦における希少難病の疫学が明らかにされた。また遺伝学的研究を行い、今後、本疾患の遺伝学的検査および遺伝カウンセリング体制の構築の基盤となった。
臨床的観点からの成果
各領域の専門家にて、VHL病の診断基準、ガイドラインの大幅改訂を7年ぶりに行った。VHL病患者の早期診断、適切な時期かつ低侵襲治療介入を実現するなど医療の質を底上げし、早期発見・適切な管理による身体機能の温存、QOLの向上などの成果に繋がる成果が期待される。
ガイドライン等の開発
『フォン・ヒッペル・リンドウ病診療の手引き(2024年版)』を令和6年2月公開し、各関連学会および患者会へ連絡、ウェブ上で一般公開を行った。
その他行政的観点からの成果
ナショナルデータベース疫学研究を行った。令和6年1月、厚生科学審議会指定難病検討委員会へ指定難病の指定申請を行った。
その他のインパクト
患者会での講演による啓発活動を行った。米国VHL Allianceのinternational clinical care centerとしての認定を京都大学医学部附属病院VHL病センターが受け、国際連携を行った。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
6件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
ホームページ1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Takahashi A, Nakamura E, Tsujikawa A, et al
Novel Manifestation of Retinal Hemangioblastomas Detected by OCT Angiography in von Hippel-Lindau Disease
Ophthalmology , 130 (7) , 748-755  (2023)
10.1016/j.ophtha.2023.02.008
原著論文2
Takamori H, Yamasaki T, Nakamura E, et al.
Development of drugs targeting hypoxia-inducible factor against tumor cells with VHL mutation: Story of 127 years.
Cancer Sci. , 114 (4) , 1208-1217  (2023)
10.1111/cas.15728

公開日・更新日

公開日
2025-05-23
更新日
-

収支報告書

文献番号
202310015Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,445,000円
(2)補助金確定額
3,445,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 907,752円
人件費・謝金 1,518,541円
旅費 54,780円
その他 168,927円
間接経費 795,000円
合計 3,445,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2024-10-01
更新日
-