ウイルス肝炎による肝がんの再発防止メカニズムの解明に関する研究

文献情報

文献番号
200933008A
報告書区分
総括
研究課題名
ウイルス肝炎による肝がんの再発防止メカニズムの解明に関する研究
課題番号
H19-肝炎・一般-008
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
小俣 政男(山梨県)
研究分担者(所属機関)
  • 石橋 大海(国立病院機構長崎医療センター 臨床研究センター)
  • 正木 尚彦(国立国際医療センター戸山病院 第二消化器科)
  • 金井 文彦(千葉大学医学部附属病院 消化器内科)
  • 吉田 晴彦(東京大学医学部附属病院 消化器内科)
  • 椎名 秀一朗(東京大学医学部附属病院 消化器内科)
  • 建石 良介(東京大学医学部附属病院 消化器内科)
  • 浅岡 良成(東京大学医学部附属病院 消化器内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
25,990,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
診断法・治療法の発達により肝癌の予後は5年生存率40%前後にまで改善されたが根治的治療後でも年率15-20%に及ぶ再発が予後の更なる改善を阻んでいる。本研究では発達した分子生物学的手技を用いて、先天的遺伝素因および癌結節の後天的遺伝子異常を解析して肝癌再発機序の網羅的解明を目指す。これは個々の患者について再発防止措置を最適化したテーラーメード医療構築につながるものと考える。
研究方法
Genomicな一塩基多型(SNP)が再発を含めた肝癌の予後に及ぼす影響について、90万か所のSNP座を同時に解析して網羅的な解析を行った。平成21年度は、男性かつ飲酒量50g/日未満のC型肝細胞患者のうち比較的若年発症49症例の白血球由来DNAを解析し、健常者コントロール184例と比較した。特に有意差を認めた12か所のSNPのなかで、Taqmanプローブの利用可能な7か所に関してC型肝細胞患者80症例の検証コホートにおいて解析した。肝癌発生年齢を解析対象としてログランク検定を行った。
結果と考察
検証コホートにおいて検討した7か所のSNPの内2か所について、ともにマイナーアレルホモ接合の男性症例が、有意に若年で肝癌を発症していることがわかった。これらのSNPサイトはいずれもADARB2遺伝子の近傍に位置していた。同じファミリーに属するADARB1は、グルタミン酸受容体のmRNAを編集し、多様性を持たせるほか、HDVのRNAに影響を与えることが報告されている。一方、ADARB2は、細胞内のRNA編集酵素をコードしているが詳しい機能は不明である。推測としては、外来RNAに対する自然免疫応答として誘導されたRNA編集酵素が内因性の核酸に影響し、発癌に働く可能性が考えられ、今後の検討が待たれる。一方、臨床的には、このSNPが初発肝癌のみでなく、再発リスクの評価にも役立つかの検討が必要である。
 なお、分担研究として肝癌治癒切除後の再発危険因子の検討、C型肝癌治療後のインターフェロン治療が再発に及ぼす影響、核酸アナログ製剤投与中のB型慢性肝障害患者からの肝癌発生率の解析、ソラフェニブ投与進行肝癌患者の副作用の解析、、再発肝癌結節が以前のCTでいかに描出されていたかの解析を行った。
結論
男性C型肝細胞癌において若年発癌に関連するSNPを見出した。

公開日・更新日

公開日
2010-06-07
更新日
-

文献情報

文献番号
200933008B
報告書区分
総合
研究課題名
ウイルス肝炎による肝がんの再発防止メカニズムの解明に関する研究
課題番号
H19-肝炎・一般-008
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
小俣 政男(山梨県)
研究分担者(所属機関)
  • 石橋 大海(国立病院機構長崎医療センター 臨床研究センター)
  • 正木 尚彦(国立国際医療センター戸山病院 第二消化器科)
  • 古瀬 純司(杏林大学医学部内科学 腫瘍科)
  • 金井 文彦(千葉大学医学部附属病院 消化器内科)
  • 吉田 晴彦(東京大学医学部附属病院 消化器内科)
  • 椎名 秀一朗(東京大学医学部附属病院 消化器内科)
  • 建石 良介(東京大学医学部附属病院 消化器内科)
  • 浅岡 良成(東京大学医学部附属病院 消化器内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
肝癌の予後は5年生存率40%前後に改善されたが、根治的治療後も年率15-20%に及ぶ再発が予後の更なる改善を阻んでいる。本研究では、再発をもたらす遺伝的素因および癌結節遺伝子異常を網羅的に解析し、肝癌再発機序の解明を目指した。
研究方法
1.SNP解析
90万か所のSNPを同時解析するマイクロアレイを用いた。遺伝子解析への同意が得られたC型肝癌症例中肝癌発症年齢が若い49症例を対象として健常者コントロール184例のデータと比較した。有意差を認めたSNPについてプローブを作成し、C型肝癌80症例の検証コホートで肝癌発症年齢とSNPの関連を検定した。

2.癌結節における遺伝子異常の解析
高密度オリゴヌクレオチドアレイを用いてヒト肝癌細胞株における遺伝子異常を解析し、さらに基づきヒト肝癌70検体の遺伝子異常を調べた。さらに再発肝癌の遺伝子異常を解析しクロナリティの検討を行った。初発癌でみられたLOHが再発癌にない場合は別クローンと考えた。矛盾がない場合には偶然にそのようなLOHプロフィールを持つ確率を計算した。
結果と考察
1.SNP解析
アレル頻度解析で、P<10-4が55サイト、<10-5が9サイト、<10-6が1サイトみられた。このうち12サイトで、優劣性解析およびジェノタイプ解析でP<10-4となり、7サイトでプローブが作成できた。検証ではこのうち2サイトが若年発癌に有意に関連していた。いずれもADARB2遺伝子近傍に位置していた。この遺伝子は、細胞内のRNA編集酵素をコードしている。このSNPが再発リスクの評価に役立つかどうかの検討が必要である。

2.癌結節の遺伝子異常の解析
TAX1BP1およびCCND1は腫瘍径の大きな肝癌結節で有意にコピー数増加がみられた。またGRHL2のコピー数が増幅されている肝癌では、肝癌再発時間が有意に短縮していた。異時性肝癌結節の解析では、初発および再発がともに単発であった4症例で同一クローンの肝内転移である可能性が高いと判断された。また、初発、再発のいずれかが多発であった2症例ではLOHプロフィールが整合せず多中心性発癌と考えられた。
結論
網羅的解析により、若年肝発癌に関連するSNPを見出した。また、肝癌再発に関連する癌結節の遺伝子異常を見出した。さらに、遺伝子異常の解析により異時性肝癌のクロナリティを調べる方法論を示した。

公開日・更新日

公開日
2011-06-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2011-02-16
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200933008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究では、肝癌の発生や再発に関連するgenomicな遺伝多型を網羅的に解析し、さらに検証コホートにおいて確認することにより、ADARB2周囲の遺伝多型が若年肝癌発生に関係することを示した。また、肝癌結節における遺伝子異常(増幅やLOH)を網羅的に解析し、GRHL2遺伝子のコピー数増幅が肝癌再発と有意に関連していることを見出した。
臨床的観点からの成果
癌結節遺伝子異常の解析により、異時性肝癌のクロナリティを調べる方法論を示し、実際に、同一クローンによる再発と多クローン性の多中心性発癌が存在することを示した。両者では有効な再発防止策が異なると考えられ、今後の臨床応用が期待される。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
平成20年11月2日 第50回日本消化器病学会大会市民公開講座「消化器癌:生活習慣による予防と最新治療」
東京スポーツ新聞 平成20年7月1日-12日 シリーズがん:その病態から最新治療法まで;肝臓

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
39件
Hepatology, Gut, J Hepatol 他
その他論文(和文)
3件
消化器外科,腫瘍内科 他
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
30件
日本消化器病学会総会、Japan Digestive Disease Week、日本肝臓学会大会 他
学会発表(国際学会等)
31件
Digestive Disease Week, American Association for the Study of Liver Diseases 他
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Nakamoto S, Kanda T, Yonemitsu Y, al.
Quantification of hepatitis C amino acid substitutions 70 and 91 in core coding region by real-time amplification refractory mutation system reverse transcription-polymerase chain reaction.
Scand J Gastroenterol , 44 , 872-877  (2009)
原著論文2
Yamashiki N, Sugawara Y, Tamura S,et al.
Doube-dose-phase use of second generation heptatitis B virus vaccine in patients after living donor liver transplantation: not an effective measure in transplant recipient.
Hepatol Res , 39 , 7-13  (2009)
原著論文3
Tanaka Y, Kanai F, Tada M, et al.
Gain of GRLH2 is associated with early recurrence of hepatocellular carcinoma.
J Hepatol , 49 , 746-757  (2008)
原著論文4
Takii Y, Abiru S, Fujioka H, et al.
Expression of microsomal prostaglandin E synthase-1 in human hepatocelluar carcinoma.
Liver Int , 27 , 989-996  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-