non-codingRNAを用いた新たな慢性C型肝炎制御による治療法開発

文献情報

文献番号
200933006A
報告書区分
総括
研究課題名
non-codingRNAを用いた新たな慢性C型肝炎制御による治療法開発
課題番号
H19-肝炎・一般-006
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
村上 善基(京都大学大学院医学研究科 附属ゲノム医学センター)
研究分担者(所属機関)
  • 井ノ上逸朗(東海大学基礎医学系ゲノム医学)
  • 下遠野邦忠(千葉工業大学総合研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
9,642,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国のHCV感染者は全人口の約1.6%と推定されており、HCVは感染すると高率に慢性化し年余をへて結果肝硬変に移行し、肝細胞癌を発生する事が知られている。現在C型慢性肝炎治療はペグインターフェロンとリバビリン併用療法が主であるが、奏効率が55%程度である事、副作用が強く治療中断例が少なくない事が問題となっている。しかし現状では満足のいくHCV感染者に対する治療結果が得られていない。この原因としてウイルスの増殖メカニズムが十分に解明されていないことがある。そのために慢性肝炎、肝硬変、肝細胞癌においてそれぞれ疾患の進展を規定する宿主、ウイルス側因子を明らかにし、それぞれの病態における新たな治療方法の確立が必要である。
研究方法
(1)ヒトマイクロRNAライブラリーを作成しHCVレプリコンを用いて抗ウイルス活性を測定した。(2)ペグインターフェロン+リバビリン併用療法別のマイクロRNA発現プロファイルを作成した。(3)線維化の程度別のマイクロRNA発現プロファイルを行った。(4)マイクロアレイ解析により肝細胞癌と非癌部(慢性肝炎、肝硬変)特異的なマイクロRNA発現プロファイルを得た。また組織学的悪性度別にマイクロRNA発現プロファイルを作成した。
(5)末梢血に循環しているマイクロRNAの発現をマイクロアレイ解析にて行なった。
結果と考察
(1)新たに4種のマイクロRNAが抗ウイルス効果がある事が分かった。(2)治療効果をシミュレーションは70%以上の確率で行なう事が出来た。(3)ヒトとマウスに共通して線維化進展に関係するマイクロRNAを同定した。(4)肝発癌に関係したマイクロRNA7種につき標的遺伝子を絞り込んだ。(5)肝細胞癌の存在とmiR-92/miR-638の発現比は有意に相関していた。
結論
各種の肝疾患においてマイクロRNA発現プロファイルを得る事により、疾患発現メカニズムの解明の一端となる事がわかった。この情報を利用して患者ごとの肝疾患の程度に応じたテーラーメード治療を行なう可能性と、遺伝子治療の開発に期待がもてる。

公開日・更新日

公開日
2011-06-06
更新日
-

文献情報

文献番号
200933006B
報告書区分
総合
研究課題名
non-codingRNAを用いた新たな慢性C型肝炎制御による治療法開発
課題番号
H19-肝炎・一般-006
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
村上 善基(京都大学大学院医学研究科 附属ゲノム医学センター)
研究分担者(所属機関)
  • 井ノ上逸朗(東海大学基礎医学系ゲノム医学)
  • 下遠野邦忠(千葉工業大学総合研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在C型慢性肝炎治療はペグインターフェロンとリバビリン併用療法が主であるが、日本人に多いgenotype 1bで高ウイルス量患者では奏効率が50%程度である事、副作用による治療中断例は10%程度と少なくない。本邦における慢性肝疾患の年間死亡者数は約3.4万人に上り感染対策は急務である。このためHCVの感染防止、慢性C型肝炎の制御は保険、医療の向上に直結し、医療費の削減をもたらす。宿主、ウイルス側因子を明らかにし、それぞれの病態における新たな治療方法の確立が必要である。
研究方法
(1)塩基配列上HCVゲノムをターゲットとするにするマイクロRNA2種を用いてHCVレプリコンの複製を抑制することを示した。(2)レプリコン細胞に抗ウイルス剤を投与しレプリコンが検出できなくなった細胞(cured細胞)を作成した。この際に共通してレプリコンが検出できなくなった時に発現の変化したマイクロRNAを1種同定した。(3)ペグインターフェロン+リバビリン併用療法前に採取した肝生検組織99例よりからマイクロRNA発現プロファイルを治療効果別に作成した。(4)(3)と同じ検体を用い線維化の程度別のマイクロRNA発現プロファイルを行った。(5)さらに肝細胞癌の治療前後に採取した血清を用いて、末梢血に循環しているマイクロRNAの発現をマイクロアレイ解析にて行なった。
結果と考察
(1)in vivo実験で3種のマイクロRNAを3回投与した最大HCVRNAは1/100に低下した。(2)cured細胞に関係したマイクロRNAの発現はHCVレプリコンの発現と相関した。(3)Monte Carlo Cross Validation (MCCV)を用いてペグインターフェロン+リバビリン併用療法をシミュレーションした。効果予測は70%以上の確率で行なう事が出来た。(4)線維化程度別にマイクロRNA発現プロファイルを用いた線維化の程度の分別は80%以上の確率で行なう事が出来た。(5)肝細胞癌の存在とmiR-92/miR-638発現比は有為な相関があり、新たな腫瘍マーカーとしての利用が期待された。
結論
各種の肝疾患におけるマイクロRNA発現プロファイルは、疾患発現メカニズムの解明の一端となる事がわかった。この情報を利用してテーラーメード治療を行なう可能性と、遺伝子治療の開発に期待ができる。

公開日・更新日

公開日
2011-06-06
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200933006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
RNAiは様々な生命現象に関与している。その中の一つのマイクロRNAの発現プロファイルを慢性肝疾患の程度別(慢性肝炎、肝硬変、肝細胞癌)に作成した。その結果発癌、線維化、癌の悪性度などの慢性肝疾患の進展に深く関与している事を示した。特に慢性肝疾患の主な原因の一つであるC型肝炎ウイルスの複製を実験細胞でマイクロRNAは制御している事を明らかにし、実験動物モデルでウイルスの複製を抑制する事を示した。
臨床的観点からの成果
慢性肝疾患の程度別にマイクロRNAの発現プロファイルを作成する事によって、慢性C型肝炎のペグインターフェロン+リバビリン併用療法をシミュレーションし、効果予測(著効、再発、無効)をそれぞれ70%以上の確率で行なう事が出来た。慢性C型肝炎の線維化の程度(F0, F1, F2, F3)をそれぞれ80%以上の確率で正しく診断する事が出来た。末梢血中のマイクロRNAを用いて、肝細胞癌の新たな腫瘍マーカーを作成し、今後肝組織ではなく末梢血を用いて簡便にバイオマーカーを作成する可能性を示した。
ガイドライン等の開発
なし。
その他行政的観点からの成果
なし。
その他のインパクト
なし。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
29件
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計2件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Murakami Y, Ali HH, Tajima A, et al.
Regulation of the hepatitis C virus genome replication by miR-199a*
Journal of Hepatology , 50 , 453-460  (2009)
原著論文2
Shigoka M, Tsuchida A, Matsudo T, et al.
Deregulation of miR-92a expression is implicated in hepatocellular carcinoma development.
Pathology International  (2010)
原著論文3
Uno Y, Suzuki Y, Wakaguri H, et al.
nalysis of expressed sequence tags from liver in cynomolgus monkey (Macaca fasciccularis): A systematic identification of drug-metabolizing enzyme genes.
FEBS letter , 582 , 351-358  (2008)
原著論文4
Sekigawa T, Tajima A, Hasegawa T,et al.
Gene-expression profiles in human nasal polyp tissues and identification of genetic susceptibility in aspirin intolerant asthma.
Clin Exp Allergy , 39 , 972-981  (2009)
原著論文5
Osada N, Hashimoto K, Kameoka Y, et al.
Large-scale analysis of Macaca fasciccularis transcripts and inference of genetic divergence between M. fasciccularis and M. mulatta.
BMC Genomics , 9  (2008)
原著論文6
Aly HH, Shimotohno K, Hijikata M.
3D cultured immortalized human hepatocytes useful to develop drugs for blood-borne HCV.
Biochem Biophys Res Commun. , 379  (2009)
原著論文7
Ujino S, Yamaguchi S, Shimotohno K, et al.
Heat-shock Protein 90 Is Essential for Stabilization of the Hepatitis C Virus Nonstructural Protein NS3.
J biol chem. , 284  (2009)
原著論文8
Goto K, Watashi K, Inoue D,et al.
Identification of cellular and viral factors related to anti-hepatitis C virus activity of cyclophilin inhibitor.
Cancer Sci. , 100  (2009)
原著論文9
Ikejiri M, Ohshima T, Fukushima A,et al.
Synthesis and evaluation of 5'-modified 2'-deoxyadenosine analogues as anti-hepatitis C virus agents.
Bioorg Med Chem Lett. , 18  (2008)
原著論文10
Tomoyasu Y, Yamaguchi T, Tajima A, et al.
Further evidence for an association between mandibular height and the growth hoemone receptor genes in a Japanese population.
Am J Orthod Dentofacial Orthop , 136  (2009)
原著論文11
Yoshihara K, Tajima A, Yahata T,et al.
Gene expression profile for predicting survival in advanced-stage serous ovarian cancer across two independent databases.
PLoS ONE , 5  (2010)
原著論文12
Yoshihara K, Tajima A, Komata D,et al.
Gene expression profiling of advanced-stage serous ovarian cancers distinguishes novel subclasses and implicates ZEB2 in tumor progression and prognosis.
Cancer Sci , 100  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-