肝炎ウイルスの培養系を用いた新規肝炎治療法の開発

文献情報

文献番号
200933004A
報告書区分
総括
研究課題名
肝炎ウイルスの培養系を用いた新規肝炎治療法の開発
課題番号
H19-肝炎・一般-004
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
脇田 隆字(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
研究分担者(所属機関)
  • 土方 誠(京都大学 ウイルス研究所)
  • 森石 恆司(大阪大学 微生物病研究所)
  • 武部 豊(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
  • 池田 正徳(岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科)
  • 原田 和雄(東京学芸大学)
  • 田中 靖人(名古屋市立大学大学院 医学研究科)
  • 本多 政夫(金沢大学大学院 医学系研究科)
  • 坂本 直哉(東京医科歯科大学 医歯学総合研究科)
  • 加藤 孝宣(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 竹原 徹郎(大阪大学大学院 医学系研究科)
  • 上田 啓次(浜松医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
62,563,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
申請者はC型肝炎ウイルス(HCV)のウイルス培養系を確立した。また、B型肝炎ウイルス(HBV)の場合、複製増殖実験は可能だが、培養細胞による感染実験系は確立されていない。両肝炎ウイルスに対する新たな治療法の開発が望まれている。そこで、本研究ではHBVやHCVのウイルス培養系や増殖系を用いて新規肝炎治療法の開発を目的とした。
研究方法
(1) 肝炎ウイルスの新規感染モデルの開発
(2) HCV増殖機構の解析と新規治療法の開発
(3) HCV生活環に関与する宿主側因子の探索と新規治療法の開発
(4) HBV増殖機構の解析と新規治療法の開発
(5) 肝炎ウイルス培養系および増殖系を用いた抗ウイルス薬のスクリーニング
結果と考察
・HCV感染患者からウイルス遺伝子をクローニングし、適合変異を導入したウイルス遺伝子によるウイルス産生が可能となった。
・中空糸培養系を用いて不死化肝細胞立体培養系を完成させた。患者血液由来HCVが著しく高い効率で感染増殖した。
・不死化ヒト肝細胞を3次元培養し、HBV感染実験を行った。IFNとETV併用による相乗効果を確認した。抗体を用いた中和実験で、野生株とエスケープ変異株を感染防御した。
・SPPによるHCVコアの膜貫通領域の切断を抑制するとウイルス産生が低下する。
・C型慢性肝炎肝組織において、HCV蛋白翻訳因子はHCV-RNA量と相関した。
・HCVゲノムRNA二次構造を標的とした複製阻害ペプチド/RNAの同定、およびその新規抗HCV薬への応用を試みた。
・8,000種の化合物をスクリーニングし、HCV増殖を抑制する41化合物を同定した。SAR解析により、5個のepoxide誘導体を同定した。また、甘草由来のisoliquiritigenin、glycycoumarinにHCV増殖を抑制した。
・HBV pseudotype virusの開発に成功した。
・HCV阻害剤探索のためのスクリーニング系を確立した。複数の新規低分子HCVエントリー阻害剤を同定した。
・栄養成分のうちリノール酸、ビタミンD2、β-カロテンが抗HCV活性を有した。
結論
本研究ではHBVやHCVのウイルス培養系や増殖系を用いて新規肝炎治療法の開発を試みた。HBVの感染系を含めて新たな実験系の開発も行うことで、治療法開発のための新たな標的の探索をおこなった。

公開日・更新日

公開日
2011-06-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2011-02-16
更新日
-

文献情報

文献番号
200933004B
報告書区分
総合
研究課題名
肝炎ウイルスの培養系を用いた新規肝炎治療法の開発
課題番号
H19-肝炎・一般-004
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
脇田 隆字(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
研究分担者(所属機関)
  • 土方 誠(京都大学 ウイルス研究所)
  • 田中 靖人(名古屋市立大学大学院 医学研究科)
  • 森石 恆司(大阪大学 微生物病研究所)
  • 本多 政夫(金沢大学大学院 医学系研究科)
  • 原田 和雄(東京学芸大学)
  • 坂本 直哉(東京医科歯科大学 医歯学総合研究科)
  • 武部 豊(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
  • 池田 正徳(岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科)
  • 竹原 徹郎(大阪大学大学院 医学系研究科)
  • 加藤 孝宣(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 上田 啓次(浜松医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HCVのウイルス培養系が確立された。また、HBVの場合、複製増殖実験は可能だが、培養細胞による感染実験系は確立されていない。両肝炎ウイルスに対する新たな治療法の開発が望まれている。そこで、本研究ではウイルス培養系や増殖系を用いて新規肝炎治療法の開発を目的とした。
研究方法
(1) 肝炎ウイルスの新規感染モデルの開発
(2) HCV増殖機構の解析と新規治療法の開発
(3) HCV生活環に関与する宿主側因子の探索と新規治療法の開発
(4) HBV増殖機構の解析と新規治療法の開発
(5) 肝炎ウイルス培養系および増殖系を用いた抗ウイルス薬のスクリーニング
結果と考察
・HCV感染患者からウイルス遺伝子をクローニングし、適合変異を導入したウイルス遺伝子によるウイルス産生が可能となった。
・中空糸培養系を用いて不死化肝細胞立体培養系を完成させた。患者血液由来HCVが著しく高い効率で感染増殖した。
・不死化ヒト肝細胞を3次元培養し、HBV感染実験を行った。IFNとETV併用による相乗効果を確認した。抗体を用いた中和実験で、野生株とエスケープ変異株を感染防御した。
・SPPによるHCVコアの膜貫通領域の切断を抑制するとウイルス産生が低下する。
・C型慢性肝炎肝組織において、HCV蛋白翻訳因子はHCV-RNA量と相関した。
・HCVゲノムRNA二次構造を標的とした複製阻害ペプチド/RNAの同定、およびその新規抗HCV薬への応用を試みた。
・8,000種の化合物をスクリーニングし、HCV増殖を抑制する41化合物を同定した。SAR解析により、5個のepoxide誘導体を同定した。また、甘草由来のisoliquiritigenin、glycycoumarinはHCV増殖を抑制した。
・HBV pseudotype virusの開発に成功した。
・HCV阻害剤探索のためのスクリーニング系を確立した。複数の新規低分子HCVエントリー阻害剤を同定した。
・栄養成分のうちリノール酸、ビタミンD2、β-カロテンが抗HCV活性を有した。
結論
本研究では新たな実験系を開発し、治療法開発のための新たな標的の探索をおこなった。ウイルスの生活環が詳細に解明され、ウイルスの複製増殖に関わる宿主因子が同定され、新たな治療標的としての可能性が示された。抗ウイルス薬のスクリーニングにより多くの候補化合物が同定された。同定した治療標的に対する薬物スクリーニングの実施、新規抗ウイルス薬候補の前臨床試験および臨床開発への導入を進める必要がある。特に、化合物の展開研究は製薬企業との共同研究を積極的に行い開発を進める。

公開日・更新日

公開日
2011-06-02
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200933004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究では肝炎ウイルス培養系や増殖系を用いて新規肝炎治療法の開発を目的とした。HBVの感染系など新たな実験系を開発し、新たな治療標的を探索した。ウイルスの生活環を詳細に解明し、ウイルスの複製増殖に関わる宿主因子が同定され、新たな治療標的候補を示した。抗ウイルス薬スクリーニングにより、多くの候補化合物を同定した。同定した治療標的に対する薬物スクリーニングの実施、新規抗ウイルス薬候補の前臨床試験および臨床開発への導入を進める必要がある。特に、化合物の展開研究を製薬企業との共同研究で進める。
臨床的観点からの成果
肝炎ウイルスキャリアの多くが肝硬変から肝臓癌へ移行し、肝臓癌を発症する。抗HBV薬に対する耐性ウイルス、インターフェロンとリバビリン併用による抗HCV療法の有効率が低いことなどが問題である。従って、肝炎ウイルスに対する新たな治療法の開発は臨床的には急務である。
ガイドライン等の開発
とくになし
その他行政的観点からの成果
肝炎ウイルスに対する新たな治療法の開発は患者の予後を改善し、肝硬変および肝臓癌という高度な医療が必要な疾患の患者数を減らし、結果的に医療費の低減に寄与し、社会の福祉に寄与する。また、ウイルス肝炎患者を広く検診で拾い上げ、適切な治療を行うことが社会的な要請である。この要請に応えるためにはより効果の高い治療法を低コストで実施できるよう開発していく必要がある。
その他のインパクト
とくになし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
208件
その他論文(和文)
29件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
180件
学会発表(国際学会等)
159件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計16件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Murayama A, Date T, Morikawa K et al
The NS3 helicase and NS5B-to-3'X regions are important for efficient hepatitis C virus strain JFH-1 replication in Huh7 cells
J Virol , 81 (15) , 8030-8040  (2007)
原著論文2
Hussein H. Aly, Koichi Watashi, Makoto Hijikata, et al
Serum-derived hepatitis C virus infectivity in interferon regulatory factor-7-suppressed human primary hepatocytes
J.Hepatol , 46 , 26-36  (2007)
原著論文3
Mohamed A. El-Farrash, Hussein H. Aly, Koichi Watashi, et al
In vitro infection of immortalized primary hepatocytes by HCV genotype 4a and inhibition of virus replication by cyclosporine.
Microbiol. Immunol. , 51 (1) , 127-133  (2007)
原著論文4
Moriishi K, Mochizuki R, Moriya, et al
Critical role of PA28γ in hepatitis C virus-associated steatogenesis and hepatocarcinogenesis.
Proc. Natl Acad. Sci.USA , 104 , 1661-1661  (2007)
原著論文5
Miyamoto H., Moriishi K, Moriya K, et al
Involvement of the PA28 gamma-dependent pathway in insulin resistance induced by hepatitis C virus core protein.
J. Virol. , 81 , 1727-1735  (2007)
原著論文6
Amemiya F, Maekawa S, Itakura Y, et al
Targeting lipid metabolism in the treatment of hepatitis C.
J Infect Dis , 197 (3) , 361-370  (2008)
原著論文7
Peng LF, Kim SS, Matchacheep S, et al
Identification of novel epoxide inhibitors of HCV replication, a high-throughput screen.
Antimicrob Agent Chemother , 51 (10) , 3756-3759  (2007)
原著論文8
Kim SS, Peng LF, Lin W, et al
A cell-based, high-throughput screen for small molecule regulators of HCV replication
Gastroenterology , 132 , 311-320  (2007)
原著論文9
Ikeda M, Kato N.
Life style-related diseases of the digestive system: cell culture system for the screening of anti-HCV reagents: suppression of HCV replication by statins and synergistic action with interferon
J Pharmacol Sci. , 105 , 145-150  (2007)
原著論文10
Yano M, Ikeda M, Abe K, et al
Comprehensive Analysis of the Effects of Ordinary Nutrients on Hepatitis C Virus RNA Replication in Cell Culture.
Antimicrob. Agents Chemother. , 51 , 2016-2027  (2007)
原著論文11
Abe K, Ikeda M, Ariumi Y, et al
Serum-free cell culture system supplemented with lipid-rich albumin for hepatitis C virus (strain O of genotype 1b) replication.
Virus Res. , 125 , 162-168  (2007)
原著論文12
Nahmias Y, Goldwasser J, Casali M, et al
Apolipoprotein B-dependent hepatitis C virus secretion is inhibited by the grapefruit flavonoid naringenin.
Hepatology. , 47 (5) , 1437-1445  (2008)
原著論文13
HH Aly, K Shimotohno, M Hijikata.
3D cultured immortalized human hepatocytes useful to develop drugs for blood-borne HCV
BBRC , 379 , 330-334  (2009)
原著論文14
Sugiyama M, Tanaka Y, Kurbanov F, et al
Direct Cytopathic Effects of Particular Hepatitis B Virus Genotypes in uPA/SCID Mouse with Human Hepatocytes.
Gastroenterology. , 136 (2) , 652-662  (2009)
原著論文15
Tanaka Y, Sanchez LV, Sugiyama M, et al
Characteristics of hepatitis B virus genotype G coinfected with genotype H in Chimeric Mice Carrying Human Hepatocytes.
Virology. , 376 (2) , 408-415  (2008)
原著論文16
Mori, Y., K. Moriishi, Y. Matsuura.
Hepatitis C virus core protein: its coordinate roles with PA28gamma in metabolic abnormality and carcinogenicity in the liver.
J. Biochem. Cell Biol. , 40 , 1437-1442  (2008)
原著論文17
Y Itsui, N Sakamoto, S Kakinuma,
Antiviral effects of the interferon-induced protein GBP-1 and its interaction with the hepatitis C virus NS5B protein.
Hepatology , 50 , 1727-1737  (2009)
原著論文18
Tatematsu K, Tanaka Y, Kurbanov F,
A genetic variant of hepatitis B virus divergent from known human and ape genotypes isolated from a Japanese patient and provisionally assigned to new genotype J.
J Virol. , 83 (20) , 10538-10547  (2009)
原著論文19
Hussein H. Aly, Yue Qi, Kimie Atsuzawa,
Strain-dependent viral dynamics and virus cell interactions observed in a novel in vitro system supporting the life cycle of blood borne HCV.
Hepatology , 50 (3) , 689-696  (2009)
原著論文20
K. Mori, K. Abe, H. Dansako,
New efficient replication system with hepatitis C virus genome derived from a patient with acute hepatitis C.
Biochem Biophys Res Commun. , 371 , 104-109  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-