ウイルス肝炎感染防止体制の確立に関する総合研究

文献情報

文献番号
200933003A
報告書区分
総括
研究課題名
ウイルス肝炎感染防止体制の確立に関する総合研究
課題番号
H19-肝炎・一般-003
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
浜口 功(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 高橋孝喜(東京大学・医学部・輸血部)
  • 半田誠(慶應義塾大学・輸血・細胞療法部)
  • 田所憲治(日本赤十字中央血液研究所)
  • 高松純樹(愛知県赤十字血液センター)
  • 大戸斉(福島医科大学・輸血・移植免疫部)
  • 紀野修一(旭川医科大学・臨床検査・輸血部)
  • 山口一成(国立感染症研究所・血液・安全性研究部)
  • 古田里佳(大阪府赤十字血液研究センター・研究部)
  • 水谷哲也(国立感染症研究所・ウイルス1部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
39,984,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
血液製剤(輸血含む)を介する肝炎ウイルス感染症について、日本赤十字中央血液研究所、全国大学病院輸血部、細胞治療部、及び日本輸血・細胞治療学会等の学会との緊密な研究体制を築き、総合的な肝炎ウイルス感染防止体制を確立する。
研究方法
肝炎ウイルスと院内感染及び潜伏肝炎ウイルス再活性化、輸血・細胞療法のウイルス安全性のための病原体検出システムの構築、サーベイランスを基盤とした安全な血液を確保するための総合戦略を確立の3つの課題について、日赤、全国輸血部及び感染症研究所の研究者が共同研究を行い、相互に情報の共有を行い、輸血血液の肝炎ウイルスの安全性に関する総合的研究を展開した。
結果と考察
1)肝炎ウイルスと院内感染及び潜伏肝炎ウイルス再活性化の研究
 これまで血液製剤が原因であると考えられていた輸血後の肝炎が、遡及調査の結果、必ずしも製剤のためではないことが明らかになってきている。むしろ院内感染あるいは潜伏肝炎ウイルス再活性化が多いという報告が出されている。「輸血業務に関する総合的アンケート調査」「輸血後感染症陽性患者に関する個別調査」を通して全国調査を実施した。院内感染、潜伏肝炎ウイルス再活性化の実態を明らかにし、有効な対策について検討した。
2)輸血・細胞療法の肝炎ウイルス安全性の研究
 細胞療法実施施設におけるウイルス安全性の必要性は益々高まっている。これまでの病原体検出システムとは異なり、HCV、HBV、HIVについて、すべての遺伝子型を検出できるように核酸検出のための配列を確定した。平成21年度にはWNV及びPalvo virus B19 の検出システムを確立した
3)安全な血液を確保するための総合戦略
 「安全で適正な輸血医療」を実現するために、輸血合同班会議を組織し、輸血副作用に関するサーベイランスのデータの解析を行い、必要な方策についてウイルス感染を中心に、総合的に検討した。

結論
血液を介した肝炎対策は実態調査も結果、未解決の問題点が明らかとなった。今後の検査および検体保存のあり方について、実効性のある方策が必要である。また新しい検出システムの開発や輸血副作用に関するサーベイランスも基盤構築の基礎が完了した。今後サーベイランス活動を拡大するとともに、安全な血液確保のための総合戦略をさらに推進する。

公開日・更新日

公開日
2011-06-06
更新日
-

文献情報

文献番号
200933003B
報告書区分
総合
研究課題名
ウイルス肝炎感染防止体制の確立に関する総合研究
課題番号
H19-肝炎・一般-003
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
浜口 功(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 高橋孝喜(東京大学・医学部・輸血部)
  • 半田誠(慶應義塾大学・輸血・細胞療法部)
  • 田所憲治(日本赤十字中央血液研究所)
  • 高松純樹(愛知県赤十字血液センター)
  • 大戸斉(福島医科大学・輸血・移植免疫部)
  • 紀野修一(旭川医科大学・臨床検査・輸血部)
  • 山口一成(国立感染症研究所・血液・安全性研究部)
  • 古田里佳(大阪府赤十字血液研究センター・研究部)
  • 水谷哲也(国立感染症研究所・ウイルス1部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
血液製剤(輸血含む)を介する肝炎ウイルス(HBV、HCV、HEV)感染症は、日本赤十字血液センター、血液製剤メーカーの対応にも関わらず、いまだ解決していない。本研究課題では、院内肝炎感染または医療行為に伴う肝炎ウイルス再活性化の実態解析、簡便性と経済性を重視した新規の肝炎ウイルス検出法の開発、および全国規模の輸血副作用サーベイランスシステム構築を実現し、総合的な肝炎ウイルス感染防止体制の確立を行う。
研究方法
肝炎ウイルスと院内感染及び潜伏肝炎ウイルス再活性化、輸血・細胞療法のウイルス安全性のための病原体検出システムの構築、サーベイランスを基盤とした安全な血液を確保するための総合戦略を確立の3つの課題ついて、日赤、全国輸血部及び感染症研究所の研究者が共同研究を行い、相互に情報の共有を行い、輸血血液の肝炎ウイルスの安全性に関する総合的研究を展開した。
結果と考察
日赤中央血液研究所、国立感染症研究所、および全国大学病院輸血部、細胞治療部と連帯し緊密な研究体制を進めることで1)~3)の事項について、総合的な肝炎ウイルス感染防止体制を確立した。1)肝炎ウイルスと院内感染および潜伏肝炎ウイルス再活性化においては、院内感染、潜伏肝炎ウイルス再活性化の実態を明らかにし、有効な対策についても検討した。これらの結果は「輸血前検体保管を含めた輸血前後の感染症検査を効果的・効率的に実施するための提言」として報告した。2)輸血・細胞療法のウイルス安全性において、RNA増幅およびマイクロアレイなどの新しい技術を駆使し、HCV、HBV、HIV、WNV、PvB19の安全性を担保できる検出システムの構築し、特許を出願した。3)安全な血液を確保するための総合戦略の確立においては、「安全で適正な輸血医療」を実現するための必要な方策について、輸血副作用に関するサーベイシステム構築を行い基盤の確立を行った。
結論
血液を介した肝炎対策は実態調査が推進の結果、検査体制に関する問題点が明らかとなった。今後の検査および検体保存のあり方について、実効性のある方策が必要である。また新しい検出システムの開発も5つの病原体に対応出来る有用性の高いシステムとなった。輸血副作用サーベイランスは基礎の部分が完成し、今後全国への拡大が期待出来る。このように、本研究を通し、安全な血液確保のための総合戦略の推進することができた。

公開日・更新日

公開日
2011-06-06
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200933003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
肝炎ウイルスをはじめとした、血液を介して感染する病原体検出システム開発に成功し、特許出願を行った。病原体ゲノムを核酸増幅法により増幅するとともに、マイクロアレイ上で病原体特異的な核酸配列を確認する方法である。これまでの検出システムと同等以上に感度を保持し、多種類の病原体を一度に検出することが可能となった。現在製品化に向けた検討を行っている。
臨床的観点からの成果
全国の医療機関より、肝炎感染検査の実態をアンケート調査により実態を把握した。現在輸血を行う患者に対して、輸血前の検査および輸血前の検体保存を行うことが血液製剤等に係る遡及調査ガイドラインで規定されている。また輸血を受けた患者に対しては、輸血後の検査が決められているが、輸血後検査の実施率が低いことが判明した。研究結果から明らかとなった、輸血後検査体制の強化が望まれる。
ガイドライン等の開発
実態調査を基に、7項目についての提言を「輸血前後の検体保管を含めた、輸血前後の感染症検査を効果的・効率的に実施するための提言」にまとめた。本提言をもとに、「血液製剤等に係る遡及調査ガイドライン」の改訂作業中である。
その他行政的観点からの成果
医療施設から退院するなどして、輸血を受けた後の検査が十分に行えていない実態が明らかとなった。輸血による肝炎ウイルス感染の検査に関して、輸血後検査体制の拡充が課題である。
その他のインパクト
これまでのところなし。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
13件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Mizutani T, Endoh D, Okamoto M, et al
Rapid Genome Sequencing of RNA Viruses
Emerging Infectious Diseases , 13 , 322-324  (2007)
原著論文2
Kihara Y, Sato T, Eshita Y, et al
Rapid determination of viral RNA sequences in field-collected mosquitos
J. Virol. Methods , 146 , 327-374  (2007)
原著論文3
Matsukura H, Shibata S, Tani Y, et al
Persistent infection by human parbovirus B19 in qualified blood donors
Transfusion , 48 , 1036-1037  (2008)
原著論文4
Maeda K, Hondo E, Terakawa J, et al
Isolation of a novel adenovirus from a fruit bat
Emerging Infectious Diseases , 14 , 347-349  (2008)
原著論文5
SaiJo M, Ami Y, Suzaki Y, et al
Diagnosis and assessment of monkeypox virus infection by quantitative PCR assay
Jpn. J. Infect. Dis. , 61 , 140-142  (2008)
原著論文6
Watanabe S, Mizutani T, Sakai K, et al
Ligation-mediated amplification for effective rapid determination of viral RNA sequences
J. Clin. Virol , 43 , 56-59  (2008)
原著論文7
Furuta A, Kondo Y, Saito T, et al
Transfusion of red blood cells from an occult hepatitis B virus carrier without apparent signs of transfusion-transmitted hepatitis B infection
Transfusion Medicine , 18 , 379-381  (2008)
原著論文8
Yasui K , Hirayama F, Matsuyama N, et al
New cell line express NHA-1c, -4a, 4b, 5a, or -5b for identification of HNA antibodies
Tsansfusion , 48 , 1037-1039  (2008)
原著論文9
Hayashi T, Yasui K, Matsuyama N, et al
Establishment of a novel method for detecting Naka antibodies by using a panel cell line
Transfusion , 49 , 390-392  (2008)
原著論文10
Nakamura S, Yang CS, Sakon N, et al
Direct metagenomic detection of viral pathogens in nasal and fecal specimens using an unbiased high-throughput sequencing approach
ProS ONE , 4 , 1-8  (2009)
原著論文11
Yamano T, Eshita Y, Kihara Y, et al
Novel virus discovery from field-collected mosquito larvae using an improved system for rapid determination of viral RNA sequences (RDV ver 4.0)
Arch Virol , 154 , 153-158  (2009)
原著論文12
Sakai K, Ueno Y, Ueda S, et al
Novel retrovirus isolation from an Ostrich (Struthio camelus) in Japan
Vet Microbiol , 134 , 227-232  (2009)
原著論文13
Watanabe S, Ueda N, Iha K, et al
Determinaion of a new bat gammaherpes virus in the Philippines
Virus Genes , 39 , 90-93  (2009)
原著論文14
紀野修一、友田豊、遠藤玲美、他
輸血前血清を凍結保管していることでB型肝炎ウイルス再活性化の経過を調査しえた1例
日本輸血・細胞治療学会誌 , 53 , 553-557  (2007)
原著論文15
紀野修一
当院における輸血前・輸血後感染症検査実施のための取り組みと日本の現状
医学のあゆみ , 225 , 610-611  (2008)
原著論文16
友田豊、紀野修一、森清香、他
輸血事故防止のための院内体制整備
臨床検査 , 52 , 169-175  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
2017-01-20