間質性膀胱炎の患者登録と診療ガイドラインに関する研究

文献情報

文献番号
202310008A
報告書区分
総括
研究課題名
間質性膀胱炎の患者登録と診療ガイドラインに関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
21FC1012
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
本間 之夫(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 巴 ひかる(東京女子医科大学東医療センター 泌尿器科)
  • 柿崎 秀宏(旭川医科大学医学部泌尿器科学講座)
  • 松尾 朋博(長崎大学病院 泌尿器科・腎移植外科)
  • 小川 輝之(信州大学 医学部泌尿器科学教室)
  • 舛森 直哉(札幌医科大学医学部)
  • 三井 貴彦(山梨大学 医学部)
  • 新美 文彩(東京大学医学部附属病院)
  • 野宮 明(東京大学 医学部附属病院)
  • 秋山 佳之(東京大学医学部附属病院 泌尿器科・男性科)
  • 前田 大地(金沢大学医薬保健研究域医学系分子病理学)
  • 大塚 篤史(浜松医科大学 泌尿器科)
  • 千葉 博基(北海道大学 腎泌尿器外科学講座)
  • 鳥本 一匡(奈良県立医科大学 泌尿器科)
  • 古田 昭(東京慈恵会医科大学 泌尿器科)
  • 松川 宜久(名古屋大学医学部附属病院 泌尿器科)
  • 金城 真実(杏林大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
5,770,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
間質性膀胱炎・膀胱痛症候群とは、膀胱痛、膀胱不快感、頻尿などの症状を呈する原因不明の疾患群である。このうち、膀胱内の特有の粘膜病変(ハンナ病変)を有するものが間質性膀胱炎(ハンナ型)で、指定難病の認定を受けている。
本研究では、オールジャパン体制で患者登録を行い、間質性膀胱炎・膀胱痛症候群の国内データベースを作成する。それにより、本疾患の患者数や患者困窮度を把握し、重症度基準の妥当性を検証する。併せて、膀胱鏡検査や病理検査の標準化、ガイドラインの更新、専門医から一般社会までの啓発を通して、適切な診療の普及を目指すことを目的とする。
研究方法
患者レジストリへの患者登録を推進し、そのビッグデータを解析することで本邦における患者像の正確な把握が可能となる。また、本疾患は泌尿器科専門医であっても診断に苦慮することが多い疾患であることを打開する目的で、これまでに得られた画像データをもとにAIによる内視鏡診断支援システムを構築する。また同様に病理診断に関してもスコアリングシステムを構築し、診療の質の均霑化を目指す。また患者啓発・教育を目的としてホームページを開設・更新し、一般社会における本疾患の理解を深める。
結果と考察
1.レジストリ登録症例数の増加
 登録患者数は、前の研究期間(令和4年11月30日時点:754例)より順調に増加した(令和5年11月30日時点:909名)。この貴重な患者登録データを集計・解析し、学会報告を行い、論文化してInternational Journal of Urology誌に投稿した(査読中)。

2.人工知能によるハンナ病変内視鏡診断支援システムの開発
ハンナ病変に対する診断支援システムの作成を目指し、人工知能による診断深層学習モデルを用いて、ハンナ病変を高い精度で診断できるシステムを開発した。この結果は、European Urology Open Accessに発表された。多施設でのvalidation studyやシステムの一般公開に向けて検討中である。

3.間質性膀胱炎病理組織診断スコアリングシステムの構築
 間質性膀胱炎(ハンナ型)に特徴的な病理所見を基に、多数の間質性膀胱炎(ハンナ型)と膀胱痛症候群の膀胱粘膜生検の病理組織を検討し、病理組織診断スコアリングシステムを構築した。このシステムが診断支援のツールとして臨床応用できるか検討するために、多施設でのvalidation studyに向けて調整中である。
結論
レジストリ登録は順調に進み、本邦における1/4の症例が登録された。本データをもとに、内視鏡診断におけるAI支援システム、および病理組織スコアリングシステムが構築されValidationを行っている。

公開日・更新日

公開日
2025-05-23
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202310008B
報告書区分
総合
研究課題名
間質性膀胱炎の患者登録と診療ガイドラインに関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
21FC1012
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
本間 之夫(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 横山 修(福井大学学術研究院医学系部門泌尿器科学分野)
  • 山西 友典(獨協医科大学 医学部 )
  • 巴 ひかる(東京女子医科大学東医療センター 泌尿器科)
  • 柿崎 秀宏(旭川医科大学医学部泌尿器科学講座)
  • 酒井 英樹(長崎大学 医歯薬学総合研究科)
  • 石塚 修(信州大学医学部)
  • 舛森 直哉(札幌医科大学医学部)
  • 三井 貴彦(山梨大学 医学部)
  • 古田 昭(東京慈恵会医科大学 泌尿器科)
  • 大塚 篤史(浜松医科大学 泌尿器科)
  • 橘田 岳也(北海道大学 大学院医学研究院)
  • 松川 宜久(名古屋大学医学部附属病院 泌尿器科)
  • 野宮 明(東京大学 医学部附属病院)
  • 新美 文彩(東京大学医学部附属病院)
  • 秋山 佳之(東京大学医学部附属病院 泌尿器科・男性科)
  • 前田 大地(金沢大学医薬保健研究域医学系分子病理学)
  • 鳥本 一匡(奈良県立医科大学 泌尿器科)
  • 松尾 朋博(長崎大学病院 泌尿器科・腎移植外科)
  • 千葉 博基(北海道大学 腎泌尿器外科学講座)
  • 小川 輝之(信州大学 医学部泌尿器科学教室)
  • 金城 真実(杏林大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
間質性膀胱炎・膀胱痛症候群は、膀胱痛、膀胱不快感、頻尿などの症状を呈する原因不明の症状症候群を指すが、その中でも特に症状が強く、膀胱内に特有の発赤粘膜であるハンナ病変を認めるものが間質性膀胱炎(ハンナ型)であり指定難病となっている。本研究では、オールジャパン体制で全国患者登録を進め、間質性膀胱炎・膀胱痛症候群のレジストリを作成し現行の指定難病である間質性膀胱炎の患者数ならびに患者困窮度の実態を把握するとともに、人工知能や病理組織診断を応用して診断の標準化を図り難病指定範囲や重症度基準の妥当性について再検証することを目的とする。
研究方法
患者レジストリへの患者登録を推進し、そのビッグデータを解析することで本邦における患者像の正確な把握が可能となる。集積した画像データをもとにAIによる内視鏡診断支援システムと病理診断のスコアリングシステムを構築する。また患者教育にホームページを開設・更新する。
結果と考察
1. レジストリ登録症例数の増加
 登録患者数は、前の研究期間(令和4年11月30日時点:754例)より順調に増加した(令和5年11月30日時点:909名)。このコホートは症例数が世界的に見ても最大級であり、かつ、全症例が膀胱鏡検査で正確な病型分類がなされている貴重なものである。集計・解析の結果、膀胱痛症候群と比べてハンナ型で有意に疼痛が強く、1回排尿量の低下や頻尿などの下部尿路症状がより重症であり、ハンナ病変の数が疼痛のリスク因子であることを見出した。結果を日本泌尿器科学会総会などに報告。論文化し投稿した。
2. 人工知能によるハンナ病変内視鏡診断支援システムの開発
 ハンナ病変は境界が比較的明瞭な発赤病変であるが、他の粘膜病変との鑑別は容易ではない。画像アトラスの配布等だけでは不十分で、より確実で実地臨床でも使用できる診断方法が求められている。
そこで、多施設から多数のハンナ病変画像を収集し、人工知能によるハンナ病変内視鏡診断支援システムを目指し、画像解析アルゴリズムのプロトタイプを開発した。その結果、極めて高精度(平均AUC 0.921、 感度・特異度ともに80%以上)でハンナ病変を峻別する深層学習モデルの確立に成功した。この成果は、欧州泌尿器科学会誌であるEuropean Urology Open Accessに論文として公開された。
このハンナ病変内視鏡診断支援システムの妥当性を確認すべく、多施設でのvalidation studyに向けて研究施設との調整を行っている。また、システムの一般公開に向けても検討中である。

3. 間質性膀胱炎病理組織診断スコアリングシステムの開発
間質性膀胱炎(ハンナ型)においては、顕著なリンパ球浸潤、間質の浮腫・線維化、B細胞系浸潤、尿路上皮剥離などが観察される。一方、膀胱痛症候群ではこのような所見は乏しい。従って、病理組織学的診断はこの両疾患の鑑別に極めて重要である。既に我々の研究班では、リンパ球・形質細胞浸潤数や上皮剥離の程度などについて定量的な評価を行っており、それを基に間質性膀胱炎組織診断基準(Maeda D et al. PLoS One. 2015)も提示しているが、まだ一般臨床への普及には至っていない。そこで、日常診療でも使いやすい新たにスコアリングシステムを構築すべく、間質性膀胱炎(ハンナ型)100例、膀胱痛症候群50例の組織診断の結果をベースに、各評価項目のカットオフ値を設定した。顕微鏡下にスコアをつける方法であり、日常診療でも比較的容易に実施できるものと思われる。
現在は構築したスコアリングシステムの実装に向けて、多施設でのvalidation studyを行っている。将来的には内視鏡診断支援システムと統合した包括的診断システムの開発を目指す。

4.研究班ホームページの維持・更新
先行する研究期間から、国民および一般臨床医へ広く啓発を行うことを目的とし、研究班のホームページ(https://icjapan-nationwidesurvey.org/)を開設し、適宜更新を行っている。ホームページでは疾患の概要だけではなく、班会議での有識者の見解、新規の治療法などについての情報を随時更新し、幅広い情報提供を行っている。引き続き専門医だけでなく患者を含む広く社会に対して広報活動を行う。
結論
本研究期間での主要研究課題項目である患者レジストリ構築、人工知能によるハンナ病変内視鏡画像診断システムの開発、間質性膀胱炎病理組織診断スコアリングシステムの開発のいずれも計画から大きく逸脱することなく施行し順調に成果を得ることができた。

公開日・更新日

公開日
2025-05-23
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202310008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
レジストリ登録症例数は909名と順調に増加した。このコホートは症例数が世界的に見ても最大級であり、かつ、全症例が膀胱鏡検査で正確な病型分類がなされている貴重なものであり、日本泌尿器科学会総会で報告し、反響がありBest Poster Awardを受賞した。
臨床的観点からの成果
多施設から多数のハンナ病変画像を収集し、人工知能によるハンナ病変内視鏡診断支援システムを目指し、画像解析アルゴリズムのプロトタイプを開発した。そこの成果は、欧州泌尿器科学会誌に投稿し、国内外から大きな反響を得た。
ガイドライン等の開発
2019年にガイドラインの改定を行った。次の改定に向けて今後もエビデンスの蓄積を行う。
その他行政的観点からの成果
該当なし
その他のインパクト
国民および一般臨床医へ広く啓発を行うことを目的とし、研究班のホームページを開設し、適宜更新を行っている。ホームページでは疾患の概要だけではなく、班会議での有識者の見解、新規の治療法などについての情報を随時更新し、幅広い情報提供を行った。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
5件
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
2件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2025-05-23
更新日
-

収支報告書

文献番号
202310008Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,500,000円
(2)補助金確定額
7,452,000円
差引額 [(1)-(2)]
48,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 293,723円
人件費・謝金 2,505,883円
旅費 684,868円
その他 2,238,428円
間接経費 1,730,000円
合計 7,452,902円

備考

備考
自己資金902円

公開日・更新日

公開日
2024-09-20
更新日
-