文献情報
文献番号
200932048A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV-1ゲノム産物の翻訳後修飾とその機能に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H21-エイズ・若手-020
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
高宗 暢暁(国立大学法人 熊本大学 大学院生命科学研究部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
3,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
薬剤耐性ウイルス出現を出来るだけ回避しうる新しい作用機序に基づくHIV-1制御法開発は急務である。本研究では、翻訳後修飾という観点でHIVゲノム産物に着目し、HIV-1複製に必須の翻訳後修飾を探索し、その翻訳後修飾に関わる宿主因子を標的とした、薬剤耐性出現を回避しうる新しい治療戦略を開拓することを目的とする。本研究の対象とするHIV-1遺伝子として、ウイルス複製に必須の遺伝子及び病原性と密接に関連するgag及び nef遺伝子産物に重点を置いた。また複製に重要な翻訳後修飾であるGag及びNefのN-ミリストイル化を担う宿主因子N-ミリストイルトランスフェラーゼ(NMT)に着目した。
研究方法
ウイルス性タンパク質の翻訳後修飾の解析方法の主な流れとして、HIV-1由来タンパク質発現細胞及び感染性HIV-1粒子からウイルス性タンパク質を分離し各種方法で翻訳後修飾解析等を行う。同定した翻訳後修飾のHIV-1複製における意義を明らかにするために、翻訳後修飾部位に各種変異を導入したHIV-1発現ベクターを構築し、野生株と変異株間の表現系の比較を行う。次に注目するウイルス遺伝子産物の各種機能・注目する特徴の評価を適宜おこなう。各種翻訳後修飾に関わる宿主性酵素の同定をsiRNA、阻害剤、ドミナントネガティブ変異体等を利用し行う。
結果と考察
Nefに関する知見として、安定性が著しく低いNefの存在を明らかにし、翻訳後修飾であるユビキチン化を介したプロテアソームによる分解系とNefの不安定性との関連性が推定された。興味深いことに、このNefの不安定性の特徴がHIV-1の複製能力と関連していることが示唆された。HIV-1複製に重要なGag及びNefのN-ミリストイル化は宿主性のNMTによって触媒されるが、NMTのリボゾームへの局在がGag及びNefのN-ミリストイル化と関連する可能性が示唆された。Gagタンパク質の中で、ウイルスコアを形成するキャプシドタンパク質は、そのSer16がリン酸化を受け、そのリン酸化はウイルス複製と密接に関連することが示唆された。
結論
不安定なNefの存在はHIV-1の効率的な複製に重要である可能性が示唆された。Nefの不安定性と関連する翻訳後修飾の同定が期待される。HIV-1複製に必須の翻訳後修飾であるミリストイル化を担うNMTの機能を阻害するにあたり、HIV-1特異性向上の観点からHIV-1複製と関連すると考えられるリボゾーム局在型NMTを限定的に標的とすることが重要であると考えられた。ウイルスコアを形成するCAのSer16のリン酸化とそのウイルス複製における重要性が示された。
公開日・更新日
公開日
2014-05-26
更新日
-