自己免疫性出血症診療の「均てん化」のための実態調査と「総合的」診療指針の作成

文献情報

文献番号
202310004A
報告書区分
総括
研究課題名
自己免疫性出血症診療の「均てん化」のための実態調査と「総合的」診療指針の作成
研究課題名(英字)
-
課題番号
21FC1008
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
橋口 照人(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 山口 宗一(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 小川 孔幸(群馬大学大学院 医学系研究科 内科学講座 血液内科学分野)
  • 惣宇利 正善(山形大学 医学部)
  • 和田 英夫(三重大学大学院 医学系研究科)
  • 朝倉 英策(金沢大学附属病院)
  • 家子 正裕(北海道医療大学 歯学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
11,539,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本事業は、本症の症例を確定診断して実態を解明し、診断基準、重症度分類、診療ガイドライン等を作成、確立、改定することが主な目的であり、その診療の均てん化が究極の目標である。3年間にわたり本症の検査、診断、治療のデータを集積・分析しながら、上述した診療指針を普及させつつ、AMEDと連携して構築した「難病プラットフォーム」を活用して、1年目は症例レジストリ運用を円滑化し、2、3年目は拡充すると共に検体バイオレポジトリ運用を開始して情報の完全性を担保し、記録を長期保存することによって、将来にわたって本症の実態解明と診療水準向上を可能にしたい。
研究方法
令和5年度(3年計画の3年目)
【各疾患に共通】
1) 広報活動
本症ならびに本研究事業を積極的に周知する。
2) 症例実態調査
・症例相談を事務局、研究分担者、研究協力者が通年受付ける。
・対象疾患の症例報告を事務局、研究分担者が定期的に文献検索する。
3) 臨床研究・調査
・新規および蓄積症例のレジストリ・バイオレポジトリの本格的稼働による各疾患の病態解明を進捗させる。
・本疾患の極めて多彩な症状と検査所見、病態との関連を解析する。
・インヒビター・自己抗体検出法を改良する。
・類似疾患の鑑別方法の検討を継続する。
・止血療法と抗体根絶療法の追跡調査により治療効果判定法を検証する。

【疾患別】
1) 自己免疫性第XIII (13)因子欠乏症 (AiF13D)
相談症例を確定診断して情報を収集、病態について解析する。

2)自己免疫性 第VIII (8)因子欠乏症(後天性血友病A) (AiF8D)
・抗第VIII因子抗体測定を普遍化して、治療効果・寛解判定方法に反映させる。

3) 自己免疫性 フォン・ヴィレブランド因子欠乏症 (AiVWFD)
・抗VWF抗体の検出方法を試作して実症例にて検討する。
・相談症例のマルチマー解析を実施して病態解析を進める。

4) 自己免疫性第V (5)因子欠乏症 (AiF5D)
・抗第V因子抗体測定を普遍化して、治療効果・寛解判定方法に反映させる。

5) 自己免疫性第X(10)因子欠乏症 (AiF10D)
・相談症例を確定診断して情報を収集、病態について解析する。

6) その他のAiCFD
・ 第II(2) 因子自己抗体に加えaPS/PTなどの抗リン脂質抗体の出血への関与を検討する。
結果と考察
 令和4年4月の山形大学から鹿児島大学への研究代表機関移管後に受けた新規の相談件数は48機関、52症例となった。鹿児島大学臨床研究倫理審査委員会の一括審査にて承認を得た分担研究機関は全国30施設となった。積極的に学会発表、論文発表を行い、疾患の周知、啓発に努めた。難病プラットホームへのレジストリ、研究検体のレポジトリの体制は整えたが進捗については課題として残った。

【疾患別の成果】
1) AiF13D
・AiF13Dの診断基準が改訂された。
・8例のAiF13D疑い症例を精査し、4例の抗FXIII抗体・インヒビター陽性症例を確認するとともに詳細な分子病態の解析を行った。
・免疫抑制療法は致死的な感染症のリスク因子にもなることからフレイル状態にある高齢者に対しては免疫抑制療法を選択せず保存療法で経過観察をすることが有用な選択肢であることを報告した。
・大動脈瘤に伴う慢性DICによる二次性F13D との鑑別点を検討して報告した。

2) AiF8D
・ループスアンチコアグラント陽性を併せ持つ軽症血友病Aの症例もあり得ることを発見した。
3) AiVWFD
・VWFマルチマー解析を行うとともに抗VWF自己抗体検出法の試用が可能となった。
4) AiF5D
・AiF5Dの診断基準が改訂された。
・ループスアンチコアグラント存在時の抗FV抗体の擬陽性の可能性について報告した。
・出血の原因がAiF5Dの単独の病態ではなく、線溶亢進型DICの合併があり得ることを報告した。

5) AiF10D
・中和活性を持たない抗FⅩ自己抗体を検出しAiF10Dと確定診断し報告した。
・第X因子インヒビターとの鑑別が問題になったAL-アミロイドーシスの症例を報告した。

6) その他のAiCFD
・AiFIIDのほとんどは第II(2)因子(prothrombin)に対するクリアランス抗体による低プロトロンビン血症であることを報告した。

【新規測定法の研究・応用】
・第XIII/13因子の活性測定方法を検証し、より高感度かつ的確に第XIII/13因子インヒビターを検出できるように改良を行った。
・凝固波形解析による第VIII因子製剤とエミシズマブ投与症例の凝固能の比較を行いエミシズマブの影響を受けずに第VIII因子活性の測定が可能であることを報告した。
結論
 原因不明の出血症状が現れた際、本症を疑い、欠乏が推定される凝固因子に対する自己抗体の迅速な確認が最重要である。

公開日・更新日

公開日
2025-05-23
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-05-23
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202310004B
報告書区分
総合
研究課題名
自己免疫性出血症診療の「均てん化」のための実態調査と「総合的」診療指針の作成
研究課題名(英字)
-
課題番号
21FC1008
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
橋口 照人(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 一瀬 白帝(山形大学 医学部)
  • 山口 宗一(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 小川 孔幸(群馬大学大学院 医学系研究科 内科学講座 血液内科学分野)
  • 惣宇利 正善(山形大学 医学部)
  • 和田 英夫(三重大学大学院 医学系研究科)
  • 朝倉 英策(金沢大学附属病院)
  • 家子 正裕(北海道医療大学 歯学部)
  • 酒井 道生(宗像水光会総合病院 小児科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本事業は、本症の症例を確定診断して実態を解明し、診断基準、重症度分類、診療ガイドライン等を作成、確立、改定することが主な目的であり、その診療の均てん化が究極の目標である。3年間にわたり本症の検査、診断、治療のデータを集積・分析しながら、上述した診療指針を普及させつつ、AMEDと連携して構築した「難病プラットフォーム」を活用して、1年目は症例レジストリ運用を円滑化し、2、3年目は拡充すると共に検体バイオレポジトリ運用を開始して情報の完全性を担保し、記録を長期保存することによって、将来にわたって本症の実態解明と診療水準向上を可能にしたい。
研究方法
【基本デザイン】
 3年間本症症例のデータを集積・分析し、そのエビデンスに基づいた全国共通の診断基準・重症度分類、総合的な診療指針の確立や改定及び普及等を行い、広報、講演、ホームページでの公開等を通じて国民へ研究成果を還元する。
 全国調査結果をまとめて疾患実態の基礎データとする。また、症例相談ならびに対象者の臨床データ、鑑別診断、研究検査等を蓄積して、指針作成の参考にする。 先天性や非自己免疫性(消費亢進、産生低下)の凝固因子低下症の鑑別法についても診療ガイドに明記する。

【臨床研究倫理審査】
令和3年度(1年目)は代表機関である山形大学医学部の倫理審査委員会の承認の下に各主治医がそれぞれの所属機関の倫理審査委員会で承認を受けて進めていたが、令和4・5 年度(2・3年目)は、2021 年6 月30 日に施行された「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」に準拠して、代表機関である鹿児島大学での一括審査の体制が整った。
結果と考察
 令和3 年度(3年計画の1年目)は自己免疫性第X(10)因子欠乏症 (AiF10D) が指定難病288-5 として採用され2021年11月1日から新規に施行された。再提案した自己免疫性凝固第XIII(13)因子欠乏症 (AiF13D)と自己免疫性凝固第V(5)因子欠乏症 (AiF5D)の診断基準改訂を指定難病検討委員会に提出した。難病プラットフォーム(難プラ)レジストリを運用し、41名の主治医にアカウントを授与し、合計25名の症例を登録した。バイオレポジトリを拡充する為、各研究分担者の施設への検体保存用超低温冷凍庫の設置を開始した。また、研究体制を刷新して、実験的精密検査を集中型から分散型に変更し、次年度からの事務局移転準備を円滑に進めた。
 令和4年度(3年計画の2年目)は研究代表機関が山形大学から鹿児島大学に移管したが全国からの症例相談を途絶えることなく受付け、分散型研究体制にてAiFXIII(13)D)、VIII(8)因子欠乏症(後天性血友病A)、AiF5Dの確定診断により解析を依頼された症例の治療方針の決定に貢献した。第XIII(13)因子、第VIII(8)因子の新規の測定法を開発するとともに積極的に学会発表、論文発表を行い、疾患の周知、啓発に努めた。
 令和5 年度(3年計画の3 年目)も全国からの症例相談を途絶えることなく受付け、解析を依頼された症例の治療方針の決定に大きく貢献した。令和4年4月の山形大学から鹿児島大学への研究代表機関移管後に全国より症例相談を受けた新規の相談件数は48機関、52症例となった。鹿児島大学臨床研究倫理審査委員会の一括審査にて承認を得た分担研究機関は全国30施設となり新たに2施設が申請中である。AiF13DおよびAiF5Dの診断基準が改訂された。積極的に学会発表、論文発表を行い、疾患の周知、啓発に努めた。令和5年度の目標であった難病プラットホームへのレジストリ、研究検体のレポジトリの体制は整えたが進捗については課題として残った。

【今後の展望】
全国からの症例相談は相次いでおり、本症が疑われた際の早期診断、初期ならびに中長期の治療方針、方法について難病診療連携拠点病院、難病相談センターとの連携をとって進めていく。難プラレジストリの運用を今後も継続することによって、1)診療指針の基礎となるエビデンス取得システムの構築、2)疾患の長期予後の解明、3)主治医の負担減と症例登録の促進、4)症例データの信頼性向上、5)調査活動の成果還元の促進、などが実現すると期待される。
結論
 全国からの症例相談を途絶えることなく受付け、確定診断のための解析を行い治療方針の決定に大きく貢献した。また、第XIII (13)因子活性、第VIII(8)因子活性の新規の測定法を開発した。研究班の活動により本症の周知・啓発が進んでいることから、原因不明の出血症状を認めた際の本症の正確な診断は益々重要性を増している。この3年間の活動からも確定診断のための抗凝固因子抗体の測定は必須であると考える。

公開日・更新日

公開日
2025-05-23
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-05-23
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202310004C

収支報告書

文献番号
202310004Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
15,000,000円
(2)補助金確定額
15,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 6,946,047円
人件費・謝金 2,398,773円
旅費 390,440円
その他 1,803,740円
間接経費 3,461,000円
合計 15,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2024-09-17
更新日
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