小児急性脳症の早期診断・最適治療・ガイドライン策定に向けた体制整備

文献情報

文献番号
202310001A
報告書区分
総括
研究課題名
小児急性脳症の早期診断・最適治療・ガイドライン策定に向けた体制整備
研究課題名(英字)
-
課題番号
21FC1005
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
高梨 潤一(東京女子医科大学 医学部(八千代医療センター))
研究分担者(所属機関)
  • 前垣 義弘(鳥取大学 医学部)
  • 水口 雅(東京大学  大学院医学系研究科)
  • 村山 圭(順天堂大学 難治性疾患診断・治療学)
  • 阿部 裕一(国立成育医療研究センター 神経内科)
  • 佐久間 啓(公益財団法人東京都医学総合研究所 脳・神経科学研究分野)
  • 奥村 彰久(愛知医科大学 医学部)
  • 永瀬 裕朗(神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科学分野)
  • 酒井 康成(九州大学大学院 医学研究院 成長発達医学分野(小児科学))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者  村山圭 千葉県こども病院(令和5年4月1日~令和5年6月30日)→ 順天堂大学(令和5年7月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
小児急性脳症は「小児急性脳症研究班(難治性疾患政策研究事業、代表:東京大学・水口雅教授)」により2010年、2017年に全国疫学調査が実施され、罹病率は年間およそ数百人と推定されている。このデータは小児急性脳症診療ガイドライン2016、同2023の基盤をなす疫学情報となっている。2019年からのCOVID-19により、小児急性脳症の疫学は変化をきたしている可能性がある。第3回の全国疫学調査を実施し、近年の急性脳症の疫学を明らかにし、ガイドライン改定の基盤情報を得ることを目的とする。
研究方法
日本小児科学会の承認を得て小児科研修施設(429施設)の情報を入手し、一次調査(アンケート)を郵送する。一次調査では過去3年間(2020年4月から2023年10月)の急性脳症の有無、各症候群別(AESD, ANE, MERS, HSES, AFCE, AERRPS/FIRES, 分類不能)の人数を収集する。二次調査協力の可否を合わせて調査する。本調査に当たっては東京女子医科大学倫理委員会(#2023-0080)、日本小児神経学会研究支援(#23-03)を得て実施した。なお、二次調査では症例ごとの発症年月、年齢、性別、基礎疾患、症候群、病原ウイルス、治療内容、予後、AESDスコアなどを調査中である。
結果と考察
小児科研修施設(429施設)にアンケートを郵送した結果、回答施設は241施設で、回答率は56.1%であった。急性脳症患者数は1197名、症候群別ではANE 30名(2.5%)、AESD 424名(35.4%)、MERS 217名(18.1%)、HSES 51名(4.3%)、ACFE 22名(1.8%)、AERRPS 53名(4.4%)、分類不能400名(33.4%)であった.
アンケート回収率から小児急性脳症の発症数は年間600人程度と推定され、過去2回と同程度であった。脳症症候群別の検討では、過去2回の疫学調査で(第1回:2010年, 第2回:2017年度実施) AESD(2010年 29%, 2017年 34%)、MERS(2010年 16%, 2017年 18%)の順で頻度が高かった。今回の結果も同様にAESD(35%)、MERS (18%)の順であった。一方, HSESは4.3%と過去2回の報告に比べて多かった(第1回 1.9%, 第2回 1.7%)。これは、2019年からのCOVID-19により、小児急性脳症の疫学の変化を示している可能性がある。今後の二次調査では、症例ごとの発症年月、年齢、性別、基礎疾患、症候群、病原ウイルス、治療内容、予後、AESDスコアなどを調査し、過去の調査結果と比較して最近の動向を明らかにする。
結論
2020年から2023年の小児急性脳症疫学調査の結果、年間発症数、AESD, MERSの頻度は過去2回の調査と変化はなかった。HSESの頻度が高かったことはCOVID-19関連脳症との関連が想定され、二次調査で明らかとしたい。本調査結果をもって「小児急性脳症診療ガイドライン」改定に向けたエビデンスとする。

公開日・更新日

公開日
2025-05-23
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2025-05-23
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202310001B
報告書区分
総合
研究課題名
小児急性脳症の早期診断・最適治療・ガイドライン策定に向けた体制整備
研究課題名(英字)
-
課題番号
21FC1005
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
高梨 潤一(東京女子医科大学 医学部(八千代医療センター))
研究分担者(所属機関)
  • 前垣 義弘(鳥取大学 医学部)
  • 水口 雅(東京大学  大学院医学系研究科)
  • 村山 圭(順天堂大学 難治性疾患診断・治療学)
  • 阿部 裕一(国立成育医療研究センター 神経内科)
  • 佐久間 啓(公益財団法人東京都医学総合研究所 脳・神経科学研究分野)
  • 奥村 彰久(愛知医科大学 医学部)
  • 永瀬 裕朗(神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科学分野)
  • 石井 敦士(国際医療福祉大学)
  • 酒井 康成(九州大学大学院 医学研究院 成長発達医学分野(小児科学))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究者交替、所属機関変更
研究分担者  村山圭 千葉県こども病院(令和5年4月1日~令和5年6月30日)→ 順天堂大学(令和5年7月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
3年間の研究全体として以下を主な目的とした。「小児急性脳症診療ガイドライン2023」を発刊し、標準的な診断・治療・管理方法を広く医療従事者に提供する。急性脳症に関する全国疫学調査を実施し、次回GL改定の基盤データとなす。急性脳症レジストリ整備により、各脳症症候群の病態・診断・治療研究を推進する。COVID-19関連小児急性脳症に関する調査を実施することで、迅速な実態把握をする。
研究方法
a. 小児急性脳症診療ガイドライン改訂版(2023)の発行:小児急性脳症診療ガイドライン改定ワーキンググループ(以下,改定WG)は2020年9月から改定作業を開始した。研究班からは、髙梨(改定WG委員長)、前垣、水口、村山、阿部、佐久間、奥村、永瀬の各研究分担者がWG委員として参画した。Minds 2020に準拠したCQを設定することを決定し、重要臨床課題を「最も高頻度で神経予後不良なけいれん重積型(二相性)急性脳症(AESD)の治療方針」とした。改定WGのうち2名でシステマティックレビューを実施した。
b. 第3回小児急性脳症全国疫学調査:日本小児科学会の承認を得て小児科研修施設(429施設)の情報を入手し、一次調査(アンケート)を郵送した。一次調査では過去3年間(2020年4月から2023年10月)の急性脳症の有無、各症候群別(AESD, ANE, MERS, HSES, AFCE, AERRPS/FIRES, 分類不能)の人数を収集し、二次調査協力の可否を合わせて調査した。本調査に当たっては東京女子医科大学倫理委員会(#2023-0080)、日本小児神経学会研究支援(#23-03)を得て実施した。
c. 個別の脳症症候群の病像・病態解明:2022年10月までのCOVID-19関連神経症状を、小児神経学会を中心にアンケート調査した。AESD, AERRPSを含む脳症症候群、ウイルス性脳炎の疫学・臨床像、画像所見について調査を進めた。
d. 共同研究システムの整備:神戸大学小児科を主幹施設とする脳症レジストリー(FACEレジストリー)に有熱性けいれん重積(急性脳症を含む)症例登録を10施設が参加し実施した。
結果と考察
a. 小児急性脳症診療ガイドライン改訂版の発行
「小児急性脳症診療ガイドライン2023」を令和5年1月に発刊し、日本小児神経学会の承認を得た。CQは「体温管理療法(目標体温36℃)を実施可能な施設において,急性脳症を疑う患児に対する本療法の実施はAESDへの進展,後遺症,重篤な有害事象を考慮した場合有用か?」の1件とした。令和5年6月に日本小児神経学会ホームページに公開した。
b. 第3回小児急性脳症全国疫学調査:小児科研修施設(429施設)にアンケートを郵送した結果、回答施設は241施設で、回答率は56.1%であった。急性脳症患者数は1197名、症候群別ではANE 30名(2.5%)、AESD 424名(35.4%)、MERS 217名(18.1%)、HSES 51名(4.3%)、ACFE 22名(1.8%)、AERRPS 53名(4.4%)、分類不能400名(33.4%)であった。これらは次回GL改訂の基盤情報となる。
c. 個別の脳症症候群の病像・病態解明:COVID-19関連症例調査を日本小児神経学会の共同研究支援を得て2回に分けて実施し、2022年10月31日までに103名の脳症患児が報告された。18名がサイトカインストーム型(HSES8名、AFCE6名、ANE4名)であり、うち11名が死亡したことをJ Neurol Sciに発表、プレスリリースし広く情報発信した。
AESD早期診断スコアの精度比較、発症早期の非けいれん性発作がAESD発症に関連すること、CDF-15高値が予後不良因子であること、熱性けいれん重積に対する体温管理療法を含むプロトコル導入により転帰不良例(AESDを含む脳症発症)の減少を報告した。AESDの早期画像診断に益するArterial spin labelling(ASL)を含む最新情報を論文報告した。
d. 共同研究システムの整備: FACEレジストリーに年間約150例(急性脳症の最終診断・約35例)が登録されている。令和4年度の検討では、有熱性けいれん性発作後の意識障害持続時間と転帰の関係、転帰不良と関連する発症早期の臨床所見および検査所見の因子を探索した。令和5年度の検討ではデータ固定された急性脳症102例の臨床像検討し、過去の全国調査と比較して、異同を明らかにした。
結論
小児急性脳症診療の向上を目的として、急性脳症ガイドライン策定、急性脳症全般に関する研究、AESD、AERRPS、その他の急性脳症に関する研究を進め、有用な知見を得た。

公開日・更新日

公開日
2025-05-23
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-05-23
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202310001C

収支報告書

文献番号
202310001Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
11,700,000円
(2)補助金確定額
11,280,000円
差引額 [(1)-(2)]
420,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,819,639円
人件費・謝金 2,543,173円
旅費 406,158円
その他 2,811,620円
間接経費 2,700,000円
合計 11,280,590円

備考

備考
自己資金590円

公開日・更新日

公開日
2024-09-20
更新日
-