HIV感染モデルマウスの樹立およびHIV特異的細胞傷害性T細胞によるエイズ発症遅延機序の解析

文献情報

文献番号
200932043A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV感染モデルマウスの樹立およびHIV特異的細胞傷害性T細胞によるエイズ発症遅延機序の解析
研究課題名(英字)
-
課題番号
H20-エイズ・若手-014
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 義則(国立大学法人 熊本大学 エイズ学研究センター)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
2,550,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HIV感染に対する免疫応答の解析が困難である理由のひとつとして、小動物を用いたHIV感染実験系が確立されていない点が挙げられる。そこで我々は、ヒト化マウスを用いたHIV感染実験系の構築のため、1)ヒト化マウスのヒトT細胞の解析、2)ヒト化マウスを用いたHIV感染条件等の決定、末梢血中のHIV-1量の経時的な解析とT細胞の動態解析を行った。
研究方法
臍帯血単核球よりヒト幹細胞を分離し、NOKマウスの新生仔の肝臓へ移植後、10週目よりマウスの尾静脈から末梢血を経時的に採取し、ヒト免疫細胞の生着を調べた。またマウスの脾臓と血液を採取し、ヒトCD4 T細胞とヒトCD8T細胞の分化・成熟、および機能について、CD抗原、リンパ球の分化マーカー、サイトカイン等に特異的な抗体をもちいてフローサイトメトリーで解析した。さらにヒト化NOKマウスにHIV-1(JRFL株, NL432株)を腹腔から感染させ、定量的リアルタイムPCR法を用いてHIV-1の経時的なウイルス量の変動を解析した。
結果と考察
1)ヒト化NOKマウスのヒトCD8T細胞では、Naive、Central memory、Early effector memoryの集団を含んだが、Late effector memory、Effectorの集団はほとんど含まれなかった。またそれらの細胞はパーフォリンの発現が低いことが明らかとなった。アロ抗原に対するヒトCD8T細胞の反応は、エフェクター表現形への分化、in vitroでのIFN-gamma産生および細胞増殖を誘導することができなかった。2)HIV-1を感染させた際の血中のHIV-RNAは、感染14日目からJR-FL株およびNL432株ともに検出できた。CD4T/CD8T細胞の割合は、非感染郡に比べ有意な減少が見られた。HIV感染後のCD8T細胞の表現形は、エフェクター細胞が誘導された個体と変化はない個体が確認できた。以上の結果から、このヒト化マウスはHIV感染の経時的経過を観察できるモデルにはなるものの、ウイルス特異的免疫応答の解析はできないことが明らかとなった。
結論
HIV感染に対する免疫応答を解析できるモデルを確立するためには、ヒト免疫系と同様な抗原特異的免疫応答を誘導できる免疫系をヒト化マウス内に構築する必要があり、我々はNOKマウスをさらに改良したマウスを作成中である。このマウスモデルは、抗原特異的免疫応答を誘導できるヒト化マウスモデルとなることが期待でき、HIV感染を含むウイルス感染症の病因や予防、治療の研究に大きく貢献する動物モデルとなることが予期される。

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2011-02-16
更新日
-