文献情報
文献番号
202309002A
報告書区分
総括
研究課題名
性差にもとづく更年期障害の解明と両立支援開発の研究
課題番号
22FB1001
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
安井 敏之(徳島大学 大学院医歯薬学研究部生殖・更年期医療学)
研究分担者(所属機関)
- 堀江 重郎(順天堂大学大学院 医学研究科 泌尿器外科学)
- 岩佐 武(徳島大学 大学院医歯薬学研究部)
- 藤野 善久(産業医科大学 医学部)
- 井手 久満(順天堂大学大学院医学研究科 泌尿器科)
- 甲賀 かをり(千葉大学 大学院医学研究院・産婦人科学)
- 熊野 宏昭(早稲田大学 人間科学学術院)
- 立石 清一郎(産業医科大学 産業生態科学研究所)
- 村松 圭司(産業医科大学 医学部 公衆衛生学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 女性の健康の包括的支援政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
7,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
更年期症状は働く男女にとって就労に影響し、仕事の継続が困難になるケースも存在し、QOLを損なう可能性がある。したがって、職場において更年期症状についての啓蒙活動を行うとともに、労働環境の改善に向けた検討が必要であるが、日本において更年期症状と就労との関係について調査された研究は少なく、認識も低い。そこで、本研究では、性ホルモンの変化に伴う男女の更年期症状に関して、国内外のエビデンスを収集・整理し、日本における症状と就労との関係、有症状者が病院やクリニックを受診する経緯について調査する。これらの関係や経緯は男女によって異なる可能性があり、性差に着目した両立支援を目指す。
研究方法
①女性更年期障害と労働機能障害
1)横断調査:40-59歳の更年期障害を有する有職女性を対象としたネットアンケート調査を行った。症状や対処行動、クリニック等を受診するまでのジャーニーや満足度、仕事への影響や求める支援策について日本産科婦人科学会女性ヘルスケア委員会と共同で調査した。
2)縦断調査:医療施設を受診した女性に関して、Menopause Rating Scaleとともに更年期障害によるプレゼンティイズムをWork Functioning Impairment Scale(Wfun)を用いて評価し、両者の関連について治療による変化を前向き研究として行った。
②男性更年期障害と労働機能障害
男性更年期外来のジャーニー調査のためのシステム開発を行い、そのシステムを用いて、男性更年期症状を主訴に来院された患者にタブレット端末を用いて自己回答式問診を実施し、外来調査並びにジャーニーを検討した。
③ 就労者疫学調査
1)レセプトによる受診調査:保有している健保データから女性更年期障害および治療実態、男性更年期障害および治療実態を調査し、男女それぞれについて更年期症状を訴えて受診した患者の割合を算出した。
2)ネットアンケート調査:働く女性の更年期障害の種類とプレゼンティイズムとの関連性に関する横断研究について、40-59歳の女性40000人を対象に調査を行った。
3)事業所調査:職業関連因子と中等度以上の更年期症状との関連に関する横断調査について、女性社員685例を対象に解析を行なった。
4)NDBデータベースを用いた調査:NDBデータベースのための申請を行った。
④ 両立支援について普及資料や支援資料の作成:これまでの検討で明らかになってきた更年期障害と労働機能障害との関係から、両立支援における課題を明らかにし、性差に着目した普及活動や支援・介入を行うための資料作成に着手した。
1)横断調査:40-59歳の更年期障害を有する有職女性を対象としたネットアンケート調査を行った。症状や対処行動、クリニック等を受診するまでのジャーニーや満足度、仕事への影響や求める支援策について日本産科婦人科学会女性ヘルスケア委員会と共同で調査した。
2)縦断調査:医療施設を受診した女性に関して、Menopause Rating Scaleとともに更年期障害によるプレゼンティイズムをWork Functioning Impairment Scale(Wfun)を用いて評価し、両者の関連について治療による変化を前向き研究として行った。
②男性更年期障害と労働機能障害
男性更年期外来のジャーニー調査のためのシステム開発を行い、そのシステムを用いて、男性更年期症状を主訴に来院された患者にタブレット端末を用いて自己回答式問診を実施し、外来調査並びにジャーニーを検討した。
③ 就労者疫学調査
1)レセプトによる受診調査:保有している健保データから女性更年期障害および治療実態、男性更年期障害および治療実態を調査し、男女それぞれについて更年期症状を訴えて受診した患者の割合を算出した。
2)ネットアンケート調査:働く女性の更年期障害の種類とプレゼンティイズムとの関連性に関する横断研究について、40-59歳の女性40000人を対象に調査を行った。
3)事業所調査:職業関連因子と中等度以上の更年期症状との関連に関する横断調査について、女性社員685例を対象に解析を行なった。
4)NDBデータベースを用いた調査:NDBデータベースのための申請を行った。
④ 両立支援について普及資料や支援資料の作成:これまでの検討で明らかになってきた更年期障害と労働機能障害との関係から、両立支援における課題を明らかにし、性差に着目した普及活動や支援・介入を行うための資料作成に着手した。
結果と考察
①女性更年期障害と労働機能障害
現時点ではほとんどの女性が職場から支援や情報提供を受けておらず、時間休や休暇制度といった支援制度を求める割合が多く見られた。また、医療施設受診までのジャーニーについて、医療施設の受診科として産婦人科の受診割合が高いことが明らかとなった。管理職と非管理職に分けた検討や有職者と無職者との比較などの検討も進めている。
②男性更年期障害と労働機能障害
一般集団に比較して労働機能障害を有する割合が高く、WfunとAMSスコアとの間に正の相関関係が見られ、男性ホルモン補充療法によって約70%の症例で改善を認めた。タブレット端末を利用した自己回答式問診はジャーニーを簡便に把握できるツールであり、今後、大規模調査への展開、全国規模でのデータを収集し、日本における就労男性の更年期障害の実態を明らかにすることができる。また、総テストステロン値はうつ症状を有意に反映させるバイオマーカーであり、男性更年期障害はプレゼンティイズムと強く関連していた。
③ 就労者疫学調査
レセプトによる受診調査では、女性更年期障害の受診者割合に比較して、男性更年期障害の受診者割合は極めて低い。ネットアンケート調査においては、女性においては精神症状を中心とした更年期障害とプレゼンティイズムとの間の有意な関連を認められ、事業所調査の解析結果からも、会社からの支援、夜勤、通勤時間といった因子が女性更年期障害と関係することが明らかになった。NDBデータベースを用いた調査も進めており、就労者疫学調査については順調に検討が進んでいる。
④ 両立支援について普及資料や支援資料の作成
性差に着目した普及活動や支援・介入を行うための資料作成を開始した。
現時点ではほとんどの女性が職場から支援や情報提供を受けておらず、時間休や休暇制度といった支援制度を求める割合が多く見られた。また、医療施設受診までのジャーニーについて、医療施設の受診科として産婦人科の受診割合が高いことが明らかとなった。管理職と非管理職に分けた検討や有職者と無職者との比較などの検討も進めている。
②男性更年期障害と労働機能障害
一般集団に比較して労働機能障害を有する割合が高く、WfunとAMSスコアとの間に正の相関関係が見られ、男性ホルモン補充療法によって約70%の症例で改善を認めた。タブレット端末を利用した自己回答式問診はジャーニーを簡便に把握できるツールであり、今後、大規模調査への展開、全国規模でのデータを収集し、日本における就労男性の更年期障害の実態を明らかにすることができる。また、総テストステロン値はうつ症状を有意に反映させるバイオマーカーであり、男性更年期障害はプレゼンティイズムと強く関連していた。
③ 就労者疫学調査
レセプトによる受診調査では、女性更年期障害の受診者割合に比較して、男性更年期障害の受診者割合は極めて低い。ネットアンケート調査においては、女性においては精神症状を中心とした更年期障害とプレゼンティイズムとの間の有意な関連を認められ、事業所調査の解析結果からも、会社からの支援、夜勤、通勤時間といった因子が女性更年期障害と関係することが明らかになった。NDBデータベースを用いた調査も進めており、就労者疫学調査については順調に検討が進んでいる。
④ 両立支援について普及資料や支援資料の作成
性差に着目した普及活動や支援・介入を行うための資料作成を開始した。
結論
本年度はさまざまな視点から具体的な研究結果をだすことができ、継続してこれらの成果を社会に公表する。また、性差をもとにした両立支援のあり方を検討し、普及資料や支援資料の作成を行う。これらによって職場で更年期障害が認識され、適切な対応がとられれば、職場にとっても働く人にとってもより良い環境となり、生産性も向上し、プレゼンティイズムやアブセンティイズムが減ることが期待できる。
公開日・更新日
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更新日
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