文献情報
文献番号
202308056A
報告書区分
総括
研究課題名
日本版栄養プロファイリングモデルの開発
研究課題名(英字)
-
課題番号
23FA2001
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
瀧本 秀美(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所)
研究分担者(所属機関)
- 石見 佳子(東京農業大学 農生命科学研究所)
- 由田 克士(大阪公立大学大学院 生活科学研究科 食・健康科学講座)
- 竹林 純(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所 食品保健機能研究部)
- 東泉 裕子(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所 食品保健機能研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究班では栄養表示義務に含まれないが栄養課題の解決のために重要な栄養成分(飽和脂肪酸等)も含め、市販加工食品や料理に適用可能な日本版の栄養プロファイリングモデル(以下「NP」という。)を開発するとともに、既存データを用いて料理版NPの基礎的データをまとめる。
研究方法
1.日本版NPモデル試案(カテゴリーモデル)の改良では、各食品カテゴリーの製造過程や関連法令を調査し、実行可能性を考慮したさらなる検討を行った。2.日本版加工食品用栄養プロファイルモデル第1.0版の作成に関する研究において、令和元年~3年度厚生労働科学研究「栄養素及び食品の適切な摂取のための行動変容につながる日本版栄養プロファイル策定に向けた基礎的研究」にて作成された日本版栄養プロファイル(NP)試案(カテゴリーモデル)をスコアリングモデルに発展的に統合し、日本版加工食品用NPモデル第1.0版を作成した。3.日本版栄養プロファイリング・料理版試案の開発に関する研究では、食事バランスガイド早見表に記載されている105種類の料理を対象とし、料理分類、スコアリング及びレーティングアルゴリズム等を検討した。
4.国民健康・栄養調査等の食事調査結果を活用した料理版NPの作成では、令和3年にH県内の2,559人を対象に実施された県民健康・栄養調査の2日間の食事調査(国民健康・栄養調査方式)かつ、食事調査の翌日の早朝第一尿を用いてNa/K比を算出し得た150人を解析対象とした。
4.国民健康・栄養調査等の食事調査結果を活用した料理版NPの作成では、令和3年にH県内の2,559人を対象に実施された県民健康・栄養調査の2日間の食事調査(国民健康・栄養調査方式)かつ、食事調査の翌日の早朝第一尿を用いてNa/K比を算出し得た150人を解析対象とした。
結果と考察
1. 脂質・飽和脂肪酸:乳製品については、乳等省令に準拠した値を採用してもチーズ・粉乳、クリームは閾値を満たす食品数が少なかった。食品関連事業者を対象とした日本版栄養プロファイルモデル試案の改良案に関するアンケート調査は、3年前に比べて食品の包装前面表示に対する関心は増している一方で、実際に実施するまでには至っていないことが明らかになった。2.HSRのアルゴリズムを修正し、NPM-PFJ(1.0) 及びHSRで日本食品標準成分表に収載されている668の加工食品について評価したところ、中央値はNPM-PFJ(1.0)が4点、HSRが2点であった。分布に基づき10パーセンタイルごとの数スコアを求め、NPM-PFJ(1.0)のレーティングアルゴリズムとした。NPM-PFJ(1.0)のスコアリングアルゴリズムの限界として、本食品標準成分表におけるデータに不足があるため、スコアの計算が不正確な可能性があることが考えられた。3.料理分類の基本となる主食、副菜、主菜は、食事バランスガイドの分類条件を踏襲するとともに、日本の料理特性を考慮し、新たに複合料理1及び2の区分を設定した。本研究で開発したNPM-DJ(1.0)を用いることで、食事の状況を踏まえた食品/料理の評価が可能となった。4.男女別に健康日本21(第二次)における3項目の順守度(野菜、果物、食塩)の違いによって群分けを行った。Na/K比は低群と高群の順に男性4.7±1.9、3.5±2.0、女性4.3±1.8、3.4±1.5であり男女ともに低群より高群で有意に低値を示した。男性ではいも類、野菜類、果実類、魚介類、乳類の摂取量が、女性では果実類のみ低群より高群で有意に高かった。食塩摂取量は男女とも差はなかった。今後、さらに別の検討が必要であるが、日本語版栄養プロファイリングモデルが実用段階に入った際、その妥当性を評価するための指標の一つとなり得ると推察された。
結論
「栄養素及び食品の適切な摂取のための行動変容につながる日本版栄養プロファイル策定に向けた基礎的研究」にて作成された日本版NP試案について、各食品カテゴリーの製造過程や関連法令を調査した結果、市場調査から実行可能性の高いものにする必要があることが明らかとなった。各食品群について総合スコアの分布を解析し、レーティングアルゴリズムを作成した。今後、NPM-PFJ(1.0)のさらなる改良を行うためには、日本で流通している加工食品の栄養組成に関する充実したデータが必要である。また、料理の評価においては、日本の食文化や食生活実態を反映した料理を開発したNPM-DJ(1.0)で評価し、料理数を増やすことで実行可能な栄養プロファイルに近づくと考える。健康日本21(第二次)における栄養・食生活の目標である野菜、果物、食塩摂取量を満たされるような場合(食品・料理ベース)においては、日本語版栄養プロファイリングモデルを構築する際には、高得点(高い評価)となる仕組みを入れ込むことが求められる。日本版加工食品用NPモデル第1.0版、日本版料理用NPモデル第1.0版のいずれについても、今後実データの収集・解析によりさらなる充実が必要と考えられた。
公開日・更新日
公開日
2025-01-09
更新日
-