次期健康づくり運動プラン作成と推進に向けた研究

文献情報

文献番号
202308054A
報告書区分
総括
研究課題名
次期健康づくり運動プラン作成と推進に向けた研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22FA2001
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
辻 一郎(東北大学 大学院医学系研究科 公衆衛生学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 相田 潤(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 健康推進歯学分野)
  • 井上 茂(東京医科大学公衆衛生学分野)
  • 岡村 智教(慶應義塾大学 医学部 衛生学公衆衛生学教室)
  • 片野田 耕太(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策研究所データサイエンス研究部)
  • 川戸 美由紀(国立保健医療科学院 疫学・統計研究部)
  • 栗山 健一(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 睡眠・覚醒障害研究部)
  • 近藤 克則(千葉大学 予防医学センター)
  • 近藤 尚己(京都大学 大学院医学研究科 社会疫学分野)
  • 田淵 貴大(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター がん対策センター疫学統計部)
  • 津下 一代(丹羽 一代)(女子栄養大学 栄養学部)
  • 西 大輔(東京大学大学院医学系研究科 精神保健学分野)
  • 村上 義孝(東邦大学 医学部医学科社会医学講座医療統計学分野)
  • 村山 伸子(新潟県立大学 人間生活学部)
  • 横山 徹爾(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
18,000,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動 研究分担者:川戸美由紀 藤田医科大学医学部(令和5年4月1日〜7月31日) → 国立保健医療科学院(令和5年8月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
令和6年度に開始予定の健康日本21(第三次)の策定・実施・評価に関して学術的観点からサポートすることが、本研究の目的である。具体的には以下の5点を行う。第1に、健康寿命の推移・都道府県格差の評価、健康寿命の関連要因の解明。第2に、国民の健康課題の要因・健康増進施策などに関する科学的エビデンスの収集・精査。第3に、健康日本21(第三次)の目標項目と目標値の提言、個別施策から目標(分野別アウトカム)の達成に至るまでのロジックモデルの作成。第4に、目標達成に向けて自治体・健康づくり関連団体が取組むべき健康増進施策(アクションプラン)の提言。第5に、健康日本21(第三次)の推進・評価体制の提言。なお、本年度は3年計画の2年目にあたり、上記の第1項と第4項について研究を行った。
研究方法
健康寿命の延伸と健康格差の縮小に関する研究=国民生活基礎調査などの公的統計やコホート研究データを用いて、健康寿命の算定法や健康日本21(第三次)の目標の妥当性、健康寿命の関連要因などを検討した。
アクションプランの提言に関する研究=生活習慣病の予防、こころと高齢者の健康、社会環境の整備、生活習慣の改善の各領域について、昨年度作成したロジックモデルを更新・改善した。ロジックモデルは、プリシード・プロシードモデル、行動科学理論等の既存のモデル等を用いて、施策→アウトプット指標→中間アウトカム指標→アウトカム指標の流れを整理したものである。第2に、健康日本21(第三次)で掲げられた目標の達成に向けて、国、自治体、医療保険者、企業、保育所・学校等の各主体が取組むべきアクションプランを提言した。
健康の社会的決定要因に関する研究=各分担研究者が保有するコホート研究データを活用して、共食への参加・居住地域の社会規範・所有する資産の額などが心身の健康や受療行動に及ぼす影響を検討した。
すべての研究は「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」を遵守し、所属施設の倫理委員会の承認を受けている。
結果と考察
健康寿命の延伸と健康格差の縮小に関する研究=健康寿命の都道府県格差の推移を評価するための様々な指標を比較し、健康日本21(第三次)の目標「上位4分の1の都道府県の平均の増加分を上回る下位4分の1の都道府県の平均の増加」という指標の妥当性が検証された。健康寿命の自治体間格差を分析するための資料・ツール類を作成した。健康寿命の関連要因では、独居者で健康寿命が短いこと、世帯構造の変化は健康寿命にも影響を及ぼすことが明らかになった。教育歴の高い群と低い群との間で健康寿命には女性1.6年・男性1.7年の格差があったが、その格差は社会参加により縮小することが示唆された。
アクションプランの提言に関する研究=主要な生活習慣病(循環器疾患、がん、糖尿病)の予防、こころと高齢者の健康(心理的苦痛、高齢者の社会活動)、社会環境の整備(つながり、社会活動、共食)、生活習慣(歯・口腔、身体活動・運動、睡眠・休養、栄養・食生活)の改善について、アクションプランを作成した。アクションプランでは、実施主体(国、都道府県、市町村、職域、保険者、学校、関係団体など)別に行うべき施策を「介入のはしご」に沿って整理した。介入のはしごは、2010年に英国公衆衛生白書で初めて示されたもので、さまざまな健康増進施策・介入のレベルを整理したものとして世界中で活用されている。それは、規制による選択の禁止(レベル1)、選択の制限(レベル2)、逆インセンティブによる選択の誘導(レベル3)、インセンティブによる選択の誘導(レベル4)、健康的な選択肢のデフォルト化による選択の誘導(レベル5)、環境整備による選択の誘導(レベル6)、情報提供(レベル7)、現状のモニタリング(レベル8)となっている。アクションプランは、健康日本21(第三次)の目標51項目のうち30項目について作成した。
健康の社会的決定要因に関する研究=共食の機会が多いほどその後の幸福感が高まること、居住地域のジェンダー規範が保守的だと感じる者では男女ともにメンタルヘルス悪化のリスクが高いこと、学歴・所得の格差より資産・年金の格差の方が高齢者の歯科受診の格差と強く関連したことなどを解明し、健康日本21(第三次)が目指す健康格差の縮小・こころの健康の維持向上に係るエビデンスを示した。
結論
本研究課題は当初の計画通り順調に進捗し、2年目の目標が概ね達成された。本研究事業に基づく英文原著論文が国際学術誌に26編掲載されるなど、学術面の価値も高かった。さらに、健康日本21(第二次)の最終評価結果や同(第三次)の計画内容を紹介する総説論文(日本語)が11編発表されるなど、健康日本21の普及啓発にも大きく貢献した。

公開日・更新日

公開日
2025-01-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2025-01-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202308054Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
23,240,000円
(2)補助金確定額
23,240,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,681,374円
人件費・謝金 8,943,662円
旅費 1,341,746円
その他 3,033,218円
間接経費 5,240,000円
合計 23,240,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2024-10-15
更新日
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