AED の適切な利用環境の構築に向けた研究

文献情報

文献番号
202308050A
報告書区分
総括
研究課題名
AED の適切な利用環境の構築に向けた研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23FA1023
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
坂本 哲也(帝京大学 医学部救急医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 丸川 征四郎(吹田徳洲会病院)
  • 畑中 哲生(健和会大手町病院)
  • 石見 拓(国立大学法人京都大学 大学院医学研究科)
  • 横田 裕行(日本体育大学 大学院保健医療学研究科)
  • 田邉 晴山(財団法人救急振興財団救急救命東京研修所 )
  • 森村 尚登(帝京大学)
  • 黒田 泰弘(香川大学 医学部)
  • 太田 邦雄(金沢大学医薬保健研究域医学系)
  • 西山 知佳(京都大学大学院医学研究科 人間健康科学系専攻 臨床看護学講座 クリティカルケア看護学分野)
  • 玉城 聡(帝京短期大学 専攻科 臨床工学専攻)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
4,308,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成16年の市民によるAED使用の認可以降、市中で利用可能なAED(PAD)の設置が広がりBLSの普及もみられた。しかし救急蘇生統計によると、市民により心停止が目撃された際のBLSやAED実施使用の割合は高いとは言えず、設置環境ふまえたAEDの設置場所や管理情報等の救助者への迅速かつ適切な提供、内部記録情報を用いた救助者の使用状況の把握と検証、それによる機器および教育内容の改善などの課題がある。
そこで本研究では、AED販売・設置台数把握に関する調査、AED設置場所や管理情報の収集と提供に関する検討、内部記録情報の解析による市民のAED使用の実情把握に関する検討、市民におけるBLS実施の阻害因子をふまえた教育手法の改善に関する検討、心停止発生通知システムの実地調査における検討、および小児・乳児における院外心停止の調査について、MC体制や蘇生後の治療への連携もふまえて検討を行う。
研究方法
AEDの普及状況に係わる調査では、製造販売業者の協力のもと当年度のAED販売台数(PAD・医療機関・消防機関別)、把握されている廃棄台数の取りまとめを継続し、耐用年数をふまえた設置台数の推計を行った。
内部記録情報の解析による市民のAED使用の実情把握に関する検討では、製造販売業者より提供された内部情報の解析によりAED使用状況について客観的な把握を試みた。
心停止発生通知システムの実地調査における検討では、モデル地域で継続されている実運用を通じて検討を進めた。教育手法の検討では、救命処置のオンライン学習教材において、救命行動を妨げる心理的障壁をふまえた教材の追加による教育効果を比較する研究の準備を進めている。小児・乳児における院外心停止の調査については症例の集積と解析を継続した。あわせてAEDの動作原理や構成等をふまえた管理・保守点検の体制に関する情報を収集した。
結果と考察
AEDの普及状況に係わる調査では、2023年12月現在わが国の累計販売台数はおよそ163万台で、うちPADが84%を占めた。2023年のPAD用途の新規販売は10万台余であった。設置台数の把握には販売台数から廃棄台数、耐用期間を勘案しての推定が必要となる。AEDは薬事法上の高度管理医療機器及び特定保守管理医療機器であり、わが国全体でより正確に設置台数を把握できる体制構築が望まれるが、AEDの位置情報を収集掲載するAEDマップの取り組みでも、現在の登録台数の過半数が耐用年数を超えたAEDの登録であるなど課題が見出された。
内部記録情報の解析による市民のAED使用の実情把握に関する検討では、救助者の介入に起因する心電図解析開始から終了までの時間延長が対象事例の18.4%で認められ、また電気ショックが可能(充電完了)と同時の電気ショック実施は1.7%で他は遅延がみられ、電気ショック実施までの時間は中央値7秒であった。
先行研究より継続している事前登録救助者に対する心停止発生通知システムの検討では、モデル地域を新たに追加して運用を継続しており、救命事例はないもののAEDを持参、現場に到着した事例は得られている。ボランティア登録者の増加とアクティブな参加を得るための施策が求められる。
小児・乳児における心停止に関する研究では、小中学生、高校生の心停止例登録を継続しており、登録症例24例のうち学校での発生12例は全例にバイスタンダーCPR、AEDがあり神経学的予後良好であったことに加え、非管理下での発生12例についてもAEDの使用率は高くなっていた。
AEDを含む医療機器に関する技術、管理体制に関する情報収集では、とくに保守点検について、高度医療機器、精密機器として日常的な点検や消耗品管理についてさらなる啓発の継続が重要と考えられた。
結論
以上の研究結果より、市中におけるAEDの設置台数と稼動状況の正確な把握、AED使用事例の検証における内部情報から市民救助者のAED使用状況把握をしたうえでの機器および教育プログラムの改善への提言と市民によるBLS実施の阻害因子をふまえた教育手法の改善、事前登録救助者に対する心停止発生通知システムの活用によるAED活用の行動促進と迅速化、小児・乳児における学校管理下、非管理下での心停止発生と対応に関する症例集積からの検討、AEDの保守管理に関する現状の把握からAEDの有効活用を推進し、医療計画における救急医療体制のアウトカム指標である心原性院外心停止の転帰をより一層改善させることができるものと考える。

公開日・更新日

公開日
2024-08-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202308050Z