文献情報
文献番号
202308046A
報告書区分
総括
研究課題名
多彩な自然災害発災時における循環器病発症・再発予防に資する注意喚起ツールの開発
研究課題名(英字)
-
課題番号
23FA1019
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
辻田 賢一(熊本大学 大学院生命科学研究部)
研究分担者(所属機関)
- 笠岡 俊志(熊本大学病院 災害医療教育研究センター)
- 前村 浩二(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科循環病態制御内科学)
- 安田 聡(東北大学 大学院医学系研究科 循環器内科学分野)
- 苅尾 七臣(自治医科大学循環器内科)
- 橋本 洋一郎(熊本市立熊本市民病院 神経内科)
- 中島 誠(熊本大学医学部附属病院脳血管先端医療寄附講座)
- 板橋 亮(岩手医科大学 脳神経内科・老年科)
- 山村 修(福井大学医学部 地域医療推進講座)
- 植田 信策(石巻赤十字病院)
- 藤末 昂一郎(熊本大学 病院)
- 甲斐 豊(阿蘇医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
3,850,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
1995年阪神•淡路大震災以降、災害に関連して脳心血管疾患が発症、増悪することが医療従事者、行政に広く認識されるようになった。更に脳心血管系臓器はストレスの影響を受けやすく、しかも疾患の性質上緊急対応が必要になる事が多い。そこで、阪神淡路大震災、東日本大震災に基づいて、現行の災害時循環器疾患の予防・管理に関するガイドライン(以下、災害時GL)が制定されたが、これは地震対応のGLで、近年の気候変動に伴う風水害、暑熱、寒冷の災害には対応していない。そこで本研究の目的は、各災害に対応しうる災害時ガイドラインの改訂と、注意喚起が必要な情報の整理及び注意喚起に用いるツールの作成を行う事とした。さらにこれら新規資材の活用を含む行政とも連携した医療提供体制の構築と啓発活動を提案する事とした。
研究方法
①過去発災した我が国の激甚災害を抽出し、より最近の多彩な災害が災害時循環器病発症に与える影響を調査する。②災害時循環器病発症予防対策の経時的変遷、進歩をレビューした。③阪神淡路大震災以降の我が国おける災害発生時の脳卒中・循環器病の発症状況を調査するため、アンケート調査を全国規模で施行した。
結果と考察
①脳卒中・循環器疾患に与える直近の地震災害の影響
2023年の結果として、熊本地震の循環器病に与える影響を改めて調査した(Kojima S, Michikawa T, Tsujita K. Am Heart J Plus. 2023;26:100246)。結果、地震による激震災害は急性心筋梗塞の発症を増加させ、特に発災直後、超急性期に多く、災害時循環器病対策のフェーズによる対策の切り替えが重要である事が明らかになった。
②災害対策の変遷・進歩
1) 超急性期、急性期、慢性期ごとの異なる災害対応の課題、2) 平時からの事業継続計画BCP制定の重要性を共有した。
③アンケート調査結果
全国災害拠点病院計770施設に送付し、アンケート回答はうち304施設から得られ、回収率40%であった。今回、実際に災害時脳卒中・循環器病発症者に対する対応情報の回答が得られたそれぞれの対象の災害は、1)東日本大震災(2011年3月)6施設、2)平成30年7月豪雨(2018年6月)5施設、3)平成30年北海道胆振東部地震(2018年9月)2施設、4)能登半島地震(2024年元日)2施設、5)熊本地震(2016年4月)8施設、6)令和2年7月豪雨(2020年7月)3施設、7)その他水害:令和元年8月豪雨、九州北部豪雨、大牟田市豪雨3施設であった。そこで、これらの対象災害を、災害の種類、発生時期などから、以下の4分類として、解析を行った。1.東日本大震災(380名)、2.熊本地震(612名)、3.平成30年7月豪雨(75名)令和2年7月豪雨(104名)その他の水害(5名)計184名、4.北海道胆振東部地震(59名)。
結果、それぞれの災害で、発症する脳卒中・循環器病の種類も大きく異なり、またその発症時期・フェーズも災害規模、種類で差異が大きいことが判明した。考察は以下の通りである。
1)災害規模大きく避難生活が長期化し、そこに深部静脈血栓症の積極スクリーニングが施行されると、静脈血栓塞栓症発症(VTE)が増加する。
2)転帰に関して、東日本大震災、熊本地震、北海道胆振東部地震と災害対策が進歩しても、必ずしも死亡率は減らず、居住環境や地震規模、医療提供体制など、体制的、環境的課題が大きい。
3)死亡時期に関しては、大半は1週間以内である。
4)避難所生活が長期化すると睡眠薬の内服が増加する。
5)既往歴としての心房細動(約10%)が想定より多く、抗凝固薬服用継続などへの避難所支援、診療所支援など要対応である。
6)熊本地震は他の災害と比べて車中泊率が突出しており、VTEは多いことはわかっていたが、脳梗塞、急性冠症候群あわせると血栓関連イベント全体として半数ほど占めている。
2023年の結果として、熊本地震の循環器病に与える影響を改めて調査した(Kojima S, Michikawa T, Tsujita K. Am Heart J Plus. 2023;26:100246)。結果、地震による激震災害は急性心筋梗塞の発症を増加させ、特に発災直後、超急性期に多く、災害時循環器病対策のフェーズによる対策の切り替えが重要である事が明らかになった。
②災害対策の変遷・進歩
1) 超急性期、急性期、慢性期ごとの異なる災害対応の課題、2) 平時からの事業継続計画BCP制定の重要性を共有した。
③アンケート調査結果
全国災害拠点病院計770施設に送付し、アンケート回答はうち304施設から得られ、回収率40%であった。今回、実際に災害時脳卒中・循環器病発症者に対する対応情報の回答が得られたそれぞれの対象の災害は、1)東日本大震災(2011年3月)6施設、2)平成30年7月豪雨(2018年6月)5施設、3)平成30年北海道胆振東部地震(2018年9月)2施設、4)能登半島地震(2024年元日)2施設、5)熊本地震(2016年4月)8施設、6)令和2年7月豪雨(2020年7月)3施設、7)その他水害:令和元年8月豪雨、九州北部豪雨、大牟田市豪雨3施設であった。そこで、これらの対象災害を、災害の種類、発生時期などから、以下の4分類として、解析を行った。1.東日本大震災(380名)、2.熊本地震(612名)、3.平成30年7月豪雨(75名)令和2年7月豪雨(104名)その他の水害(5名)計184名、4.北海道胆振東部地震(59名)。
結果、それぞれの災害で、発症する脳卒中・循環器病の種類も大きく異なり、またその発症時期・フェーズも災害規模、種類で差異が大きいことが判明した。考察は以下の通りである。
1)災害規模大きく避難生活が長期化し、そこに深部静脈血栓症の積極スクリーニングが施行されると、静脈血栓塞栓症発症(VTE)が増加する。
2)転帰に関して、東日本大震災、熊本地震、北海道胆振東部地震と災害対策が進歩しても、必ずしも死亡率は減らず、居住環境や地震規模、医療提供体制など、体制的、環境的課題が大きい。
3)死亡時期に関しては、大半は1週間以内である。
4)避難所生活が長期化すると睡眠薬の内服が増加する。
5)既往歴としての心房細動(約10%)が想定より多く、抗凝固薬服用継続などへの避難所支援、診療所支援など要対応である。
6)熊本地震は他の災害と比べて車中泊率が突出しており、VTEは多いことはわかっていたが、脳梗塞、急性冠症候群あわせると血栓関連イベント全体として半数ほど占めている。
結論
これらのデータから災害そのものの特徴を把握し、災害時循環器病発症予測を災害ごとに行う必要がある事が明らかになった。
公開日・更新日
公開日
2025-01-09
更新日
-