成人先天性心疾患に罹患した成人の社会参加に係る支援体制の充実に資する研究

文献情報

文献番号
202308044A
報告書区分
総括
研究課題名
成人先天性心疾患に罹患した成人の社会参加に係る支援体制の充実に資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23FA1017
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
小板橋 俊美(北里大学 医学部循環器内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 平田 陽一郎(北里大学 医学部 小児科学)
  • 神谷 健太郎(北里大学 医療衛生学部)
  • 江口 尚(産業医科大学 産業生態科学研究所産業精神保健学研究室)
  • 早坂 由美子(法 由美子)(北里大学病院 トータルサポートセンター)
  • 武藤 剛(北里大学 医学部衛生学)
  • 岡田 明子(北里大学 看護学部)
  • 阿古 潤哉(北里大学 医学部循環器内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
3,846,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
先天性心疾患は、100人に1人の割合で生じる疾患であり、医療の進歩に伴い、適切な治療を受けることで長期生存が可能となってきた。その結果、患者の多くが成人し、移行期医療や患者の社会参加に伴う問題が出現しており、令和2年10月に閣議決定された第1期循環器病対策推進基本計画において、小児期・若年期からの配慮が必要な循環器病への対策に取り組むことについて記載されている。先天性心疾患を有する患者が社会的に自立することを目指すに当たっての困難は多く、社会参加に伴う経済的・精神的苦痛が患者のQOLを大きく低下させており、本研究では、先天性心疾患患者が社会的に自立することを目指すに当たっての問題点の整理と患者への支援の質の改善のための方策を検討することを目標とする。
研究方法
成人先天性心疾患(ACHD)患者の社会参加に伴う問題は多岐に渡る。先天性心疾患特有の「疾患としての多様性」に加え、患者をとりまく「社会的環境要因」も複雑に絡み合い、効果的な解決策を見出すことは容易ではない。第一年次では、患者と患者をとりまく社会的環境要因の中から真の課題を特定し、実現可能な具体策につなげるためのファーストステップとして予備調査を行った。
社会参加の一つとして先天性心疾患患者の「就労」を中心に、① 成人先天性心疾患患者本人、② 医療者/医療機関、③ 企業/事業主/一般人、④社会保障制度/就労支援の4つの視点において、各分野の現状把握のためヒアリングを含めた実態調査を行った。先天性心疾患患者の就労に関する文献レビューを行うとともに、患者自身の発信から社会参加に関連する情報を収集した。また、当院はACHD診療に必要な専門科と職種がそろう大学病院であり、単施設で成人移行を含めたシームレスなACHD診療と充実した就労支援が可能である。施設内での丁寧かつ細やかな調査により、日常臨床における、より具体的な課題抽出を目指した。各職種間・専門科間での実臨床におけるお互いの不明点・問題点を洗い出した。企業関連については、障がい者専門の就職・転職エージェントに協力を得て、企業アンケートを実施頂いた。

結果と考察
これらの予備調査の結果を総括し、課題の整理および解決策のキーワードとして「小児科医の影響力」「小児期の経験」「病気の開示」「運動制限」「心臓病であることの気づき~病みの軌跡を知る」「将来設計」「try and error」「就労制限」「能力の明確化」「職場(社会)の理解」「制度利用」「メンタルサポート」が浮上した。これらを軸に今後下記の取り組みを検討していく。

1. 患者本人から得られる経験や時間軸を加味した情報は、課題の抽出のみならず具体的な解決策のヒントも与えてくれる。今までの予備調査から本格的な患者本人へのデプスインタビュー調査に切り替え、研究として進めていく。

2. 小児科医の影響(声掛けや運動制限の指示)や小児期の経験が成人期の社会参加の在り方に大きな影響を及ぼしている可能性が示唆された。今後、小児科医の意識調査や啓発活動を進めていく。

3. 過度な心負荷は心病態を悪化させ、病みの軌跡を進行させる。成人先天性心疾患患者の運動機能や活動量の調査により、適度な就労条件や働き方を模索する。

4. 成人先天性心疾患患者が職場での適切な配慮を得るために、産業医と主治医、職場(企業)と主治医の連携が重要である。スムーズな連携を実現させるための具体策を立てる。

5. 患者が理想的な就労を叶えるためには、患者の自己理解が重要である。将来を見据え、中高生から意識的に取り組むためのワークブックを作成する。

6. 効果的で利用可能な社会保障制度はあるが、医師の知識は乏しく、必要な患者に適切なタイミングで提示することが難しい。制度や就労に関する医師の認識度および施設の就労支援体制の実態調査を行い、現状を把握する。多忙な外来でも活用できるシンプルな資料作りを検討する。

7. 成人先天性心疾患患者が生きやすい世の中を目指すには、心不全やACHDに関する社会への啓発が必要である。どのような啓発内容および方法が適しているのかを模索するために、一般人の意識調査および、成人先天性心疾患患者自身への調査(周囲にどのように知って欲しいか)を行う。

結論
今年度の予備調査によって、明らかとすべき課題と取り組むべき方策がみえてきた。我が研究班には各職種・分野の専門家が集結しており、協働して多角的かつ包括的に研究を進め、成人先天性心疾患患者の社会参加に役立つ効果的な成果物を目指す。

公開日・更新日

公開日
2024-08-29
更新日
2024-09-17

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-09-17
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202308044Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,999,000円
(2)補助金確定額
4,999,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 696,926円
人件費・謝金 448,576円
旅費 63,926円
その他 2,636,572円
間接経費 1,153,000円
合計 4,999,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2025-01-14
更新日
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