脳卒中後の失語・嚥下障害・てんかん・認知症の実態調査と脳卒中生存者に対するチーム医療の確立を目指した研究

文献情報

文献番号
202308042A
報告書区分
総括
研究課題名
脳卒中後の失語・嚥下障害・てんかん・認知症の実態調査と脳卒中生存者に対するチーム医療の確立を目指した研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23FA1015
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
猪原 匡史(国立研究開発法人国立循環器病研究センター 脳神経内科)
研究分担者(所属機関)
  • 西村 邦宏(独立行政法人国立循環器病研究センター・研究開発基盤センター 予防医学・疫学情報部 EBM・リスク情報室)
  • 横田 千晶(国立循環器病センター 内科脳血管部門)
  • 宮井 一郎(社会医療法人大道会森之宮病院)
  • 大槻 美佳(北海道大学 大学院保健科学研究院)
  • 古賀 政利(国立循環器病研究センター 脳血管内科)
  • 齊藤 聡(国立循環器病研究センター 脳神経内科)
  • 中奥 由里子(国立循環器病研究センター 予防医学・疫学情報部)
  • 田中 智貴(国立循環器病研究センター 脳神経内科)
  • 福間 一樹(国立循環器病研究センター 脳神経内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
3,847,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
外見からの判別が困難な脳卒中後遺症の我が国における現状把握を目的として、後方視的にデータを収集し、検討を実施することで、脳中後遺症である失語、嚥下障害、てんかん、認知症に関する後遺症の実態や問題点について把握し、政策提言に繋げる。
研究方法
《脳卒中後後遺症に対する後方視的データ解析》
国立循環器病研究センターで2011年より蓄積されている脳卒中データベースを用い、急性期脳卒中の失語、嚥下機能評価、てんかんデータ、認知機能評価のデータを用いて、罹患率、脳卒中重症度、病巣、病型との関連、他の合併症との関連、リスク因子の評価を行う。
《多施設アンケート解析:嚥下障害》
 2022年に急性期病院319施設、回復期病院168施設に対して行った嚥下障害・低栄養・サルコペニアに関するアンケート調査結果を解析し、評価・介入の方法と実施率、設備、回復期転院時の情報連携の実態と課題を抽出する。アンケート結果から得られた各施設の構造指標(後遺症に対する評価率・介入率・設備)、レセプトデータに基づくアウトカム(死亡、肺炎合併、脳卒中再発、心血管疾患合併、再入院、入院期間)との関係を調査する。
結果と考察
 令和5年5月17日に第一回班会議を行い、本研究テーマである脳卒中後の失語・嚥下障害・てんかん・認知症における現状、課題、問題点について議論を行い、各研究者の役割分担、確認を行った。
失語に関しては、国立循環器病研究センターにて施行された200例を超える脳卒中後のSLTAのデータを集積した。
 嚥下障害に関しては、令和5年9月に早期経管栄養プロトコルを作成し、他施設に説明会をWebにて開催し、10月から導入を達成した。今後早期栄養プロトコル導入による臨床的効果を判定する予定である。また、脳卒中後のサルコペニアと嚥下障害の関連について欧州臨床栄養代謝学会の機関誌であるClinical Neutritionに採択され、8月に出版された。嚥下障害のアンケート調査については各施設に依頼し、10月から開始した。
 てんかんに関しては、脳梗塞急性期MRI画像にて皮質の出血性変化が発作と強く関連することを見出し、令和6年3月の脳卒中学会総会にて講演予定である。現在、論文の執筆を開始している。また、脳卒中後てんかんにおける脳波所見と予後の関連について令和5年8月Epilepsiaに報告した。さらに、米国のYale大学が主催するIPSERC(International Post Stroke Epilepsy Research Consortium)に参加し、共にメタ解析を行い、JAMA Neurologyに脳卒中後の発作と予後の関連を報告した。また、10月7日には今後の協力研究についてWeb会議を行った。
 認知症に関しては、脳卒中急性期、退院後3か月のMMSEのデータを500例以上収集した。また、研究代表者らが執筆した血管性認知症の総説がNature Reviews Neurologyに採択された。
これらの進捗に関しては令和6年1月17日第二回班会議で報告し、研究分担者との結果の考察、今後の方針、計画について協議した。
 大規模な脳卒中データ、信頼性の担保された各種評価データを用いて、脳卒中後遺症の実態調査、リスク評価モデルを作成することで、今後増加することが確実な脳卒中生存者に対する対策を講じることが可能であり、「健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法」に基づき、令和2年10月に閣議決定された循環器病対策推進基本計画に則った施策の推進に繋がる。さらに、これらエビデンスは今後、脳卒中後遺症治療の均てん化や健診・保健指導の向上にも結びつく。これまで蓄積された脳卒中の予防医学、急性期治療に加え、“脳卒中後”の医療という形で、令和6年度開始予定の国民健康づくり運動プランの策定・推進に向けて貢献できると考えられる。
結論
脳卒中後後遺症の実態調査による本成果を基盤とした介入、観察研究の設計や新たな研究テーマの醸成、さらにリスクモデルを用いた脳卒中合併症の自動判定システムの作成や、リハビリテーション・介護の現場での新たな工夫や介入に直結する可能性を内包し、その社会的意義ならびに知的資源としての意義は絶大であり、国民の健康長寿実現に大きく寄与する。

公開日・更新日

公開日
2024-08-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-08-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202308042Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,000,000円
(2)補助金確定額
4,876,000円
差引額 [(1)-(2)]
124,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,886,524円
人件費・謝金 471,290円
旅費 272,880円
その他 93,094円
間接経費 1,153,000円
合計 4,876,788円

備考

備考
返還が生じたため、ご指示に従い補助金確定額については、端数を切り捨てた金額を記載しました。

公開日・更新日

公開日
2024-12-13
更新日
-