循環器病のデジタルヘルスの推進に関する研究

文献情報

文献番号
202308041A
報告書区分
総括
研究課題名
循環器病のデジタルヘルスの推進に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23FA1014
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
飯原 弘二(国立研究開発法人国立循環器病研究センター 病院)
研究分担者(所属機関)
  • 西村 邦宏(国立研究開発法人国立循環器病研究センター 予防医学・疫学情報部)
  • 尾形 宗士郎(国立研究開発法人国立循環器病研究センター 予防医学・疫学情報部)
  • 野口 輝夫(国立研究開発法人国立循環器病研究センター 病院・心臓血管内科)
  • 泉 知里(国立循環器病研究センター 心不全・移植部門)
  • 北井 豪(国立循環器病研究センター 心不全・移植部門 心不全部)
  • 東 尚弘(国立大学法人 東京大学 大学院医学系研究科公衆衛生学分野)
  • 井手 友美(九州大学 医学研究院)
  • 堀江 信貴(広島大学 脳神経外科)
  • 松丸 祐司(虎の門病院 脳神経血管内治療科)
  • 北川 一夫(東京女子医科大学 脳神経内科)
  • 有村 公一(九州大学病院 脳神経外科)
  • 安斉 俊久(北海道大学大学院医学研究院 循環病態内科学教室)
  • 中島 直樹(国立大学法人九州大学 大学院医学研究院 医療情報学講座)
  • 太田 剛史(神戸市立医療センター中央市民病院 脳神経外科)
  • 中川 敦寛(東北大学 大学病院 産学連携室)
  • 木内 博之(山梨大学)
  • 高木 康志(徳島大学 脳神経外科)
  • 木村 和美(日本医科大学神経内科学分野)
  • 福田 仁(高知大学 教育研究部医療学系臨床医学部門)
  • 井口 保之(東京慈恵会医科大学 内科学講座 神経内科 )
  • 松田 均(国立研究開発法人国立循環器病研究センター 血管外科部)
  • 湊谷 謙司(京都大学 心臓血管外科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
3,847,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
脳卒中では、医療用コミュニケーションアプリの導入により、急性期再開通療法における時間短縮が達成された。心臓病の分野では、慢性期疾患管理へのDHの利活用が始まっている。しかし疾患特性が異なる循環器病のDHが、医療の効率性や価値の向上をもたらすかは、明らかでない。
本研究では、循環器病デジタルヘルス(DH)の実装の現状、実装の機会と成功、実装実現への障害に関する質問表による施設調査を行い、我が国の実態に応じた循環器病DH推進指標を策定することを目標とする。
研究方法
初年度(令和5年度)は、関連学会(日本脳卒中学会、日本循環器学会等)基幹・教育施設に対し、循環器病分野のDHの現状と課題に関する横断的な施設調査を実施した。
結果と考察
日本脳卒中学会研修施設を対象として脳卒中分野におけるDHの導入状況に関する施設調査を行い、123施設より回答を得た。調査回答施設の大半が一時脳卒中(PSC)認定施設(120施設、97.6%)であり、約半数(62施設)がPSC Core施設認定施設であり、41.5%が500床以上の大病院であった。
デジタルシステムによる病診連携は25%の施設で導入されており、JOIN(Allm社, 10施設)やSynapse Zero(FujiFilm社, 4施設)を病院主導で導入されており、脳卒中分野で活用されていた。自治体の予算でサーバーを構築し運営する施設も見られた。一方でシステムを未導入の理由としては、サービスを提供する人的資源の不足やサポート体制の未整備を挙げる施設が多かった。22%の施設では救急隊と病院の連携においてデジタルデバイスが活用されており、自治体主導で運用されていた。脳卒中病院前スケールや脳卒中主幹動脈閉塞スコアなどの共有状況は一部の地区のみでの活用(5.7%)にとどまっていた。脳卒中画像診療支援システムは16.3%の施設で導入されており、急性期脳梗塞における虚血巣の診断を支援するRAPID(Ischema View社, 8施設)、Vitrea(Canon社, 8施設)が導入されていた。遠隔モニタリング(12.2%)を導入している施設は見られたが、ほとんどが循環器領域での活用であり、てんかんの遠隔モニタリングは1施設のみであった。一方で、遠隔医療(7.3%)、入退院支援(4.9%)、診療支援システム(4.1%)、循環器病の危険因子における疾患管理システム(0.8%)、遠隔リハビリテーション(0%)、服薬管理アプリの導入(0%)などのDHシステムを導入している病院はほとんど見られなかった。
本研究の施設調査では、97.6%がPSC認定施設からの回答であり、地域の脳卒中治療を担う中核施設のDHシステムの導入実態を反映する結果であった。急性期脳梗塞治療の症例選択に関わる脳血流評価システムが多く導入されており、救急隊との連携や病診連携などの受け入れに関わる項目についで導入率の高い項目となっていた。またAiによる画像診断や遠隔画像診断を導入している施設は12.2%と同様に高く、大規模総合病院の特性が反映されていると考えられる。一方で、遠隔診療やモニタリング、循環器病の危険因子の疾患管理アプリ、服薬管理システムなど亜急性期から慢性期・維持期をターゲットにしたDHシステムの導入はほとんど行われておらず、人的及び金銭的リソースの不足以外に、医療提供者側のDHケアに対する関心の低さ、及び利用者側のデジタルリテラシーの低さも同様に障害となっていた。
ESC e-Cardiologyワーキンググループは循環器疾患に越えるDH導入の課題を克服するため、導入における障害を1)各関係者の導入に向けた抵抗(患者のモチベーションとリテラシーの欠如・医療従事者側の信念の欠如)、2)法的・倫理的・技術的な障壁(個人情報保護やセキュリティへの懸念・システムの拡張性の低さ)、3)そのほかの障壁(医療経済評価の欠如・保険償還の欠如)に大別している(European Journal of Preventive Cardiology 2019;26:1166–1177)。また1)患者及び医療従事者それぞれに向けた教育プログラムの確立、2)DH認証プログラムの確立、3)システムへの臨床的分析と社会経済的分析の両方を組み合わせた研究による経済的エビデンス評価の推奨・保健業界や政策立案者への情報提供がそれぞれの障壁を解決法であるとしている。
結論
急性期領域でのシステム導入状況と比較し、慢性期や維持期をターゲットとしたシステムの導入状況は乏しかった。DHやICT技術の導入による人的負担の軽減の実感が低く、システム維持による人的・金銭的負担やDHシステムへの関心の低さが導入の障壁となっていた。次年度には循環器領域と脳卒中分野とを比較し、DH導入に向けた指針の策定を予定している。

公開日・更新日

公開日
2024-08-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202308041Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,000,000円
(2)補助金確定額
3,599,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,401,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 862,950円
人件費・謝金 0円
旅費 331,542円
その他 1,252,381円
間接経費 1,153,000円
合計 3,599,873円

備考

備考
自己資金:873円

公開日・更新日

公開日
2024-12-13
更新日
-