食育における歯科口腔保健の推進のための研究

文献情報

文献番号
202308027A
報告書区分
総括
研究課題名
食育における歯科口腔保健の推進のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22FA1024
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
田野 ルミ(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 安藤 雄一(国立保健医療科学院)
  • 岩崎 正則(北海道大学 歯学部)
  • 梶浦 靖二(島根県益田保健所)
  • 佐藤 眞一(千葉県衛生研究所)
  • 中西 明美(女子栄養大学 栄養学部)
  • 福田 英輝(国立保健医療科学院)
  • 山本 貴文(北海道大学病院 予防歯科)
  • 吉森 和宏(千葉県衛生研究所 健康疫学研究室)
  • 松尾 浩一郎(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 医歯理工保健学専攻 地域・福祉口腔機能管理学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
6,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国では、食育推進基本計画において「ゆっくりよく噛んで食べる国民の増加」が目標の一つとして掲げられており、地域において歯科関係者を含む多職種が食育に取組むことが重要であるとされている。しかしながら、食育における歯科口腔保健を推進するにあたって参考となる手法などは、自治体や歯科関係者に広く普及しているとはいえない。本研究は、自治体での食育における歯科口腔保健の取組みに必要なエビデンスや具体的な方法、考え方を示すことを目的とする。
研究方法
食行動の各種指標間の関連についてのWeb調査、食育に歯科口腔保健を取り入れた自治体の活動の収集、口腔の健康状態と食との関連や歯科口腔領域における食育に関連する要因についての既存データを利用した分析、口腔機能と栄養・食生活に関するエビデンスの収集を行った。また、本研究から得られた知見を踏まえて、食育推進における歯科口腔保健の取組に係る具体的な手法および方策を検討し、食育における歯科口腔保健の実施に自治体などが活用可能な普及啓発のための媒体を作成して提示した。
結果と考察
(1)咀嚼に関連した食行動指標に関するWeb調査結果
「咀嚼関連行動指標」相互の関連をみたところ、「ゆっくりよくかんで食べているか否か」は、「食べる速さ」とは強い関連を有していたが「咀嚼」との関連は弱かった。
(2)自治体における「食育における歯科口腔保健の推進」に関する実態調査:聞き取り調査
3自治体での3事業の取組み状況について、回答を得た。事業は、主に啓発・保健指導・健康教育のなかで、集団と個別を併用した、講話や実習、口腔機能の測定などで構成されていた。特に、歯科と栄養の両専門職において、相互の専門性が融合した一体的な健康教育を行うことなどが要点となっていた。
(3)口腔の健康状態と食との関連・歯科口腔領域における食育に関連する要因:政府統計および各種調査の分析
①適格基準に合致した2,407名を解析対象とした。歯科疾患実態調査結果から機能歯数を、国民健康・栄養調査結果からDietary Inflammatory Index(DII)を求めた。重回帰分析結果から75歳以上の年齢階級において、機能歯数が多いほど、DIIスコアが低いという負の関連を認めた(回帰係数=-0.051、95%信頼区間=-0.090 to -0.012)。
②-1. 2,164名の参加者を分析した。このうち、456名(21.1%)が外食行動を週1回以上経験し、1,142名(52.8%)が20本以上の歯を持っていた。
②-2. 10,121名が調査に回答した。追跡期間中の死亡者数は488名(4.8%)であった。現在歯数の分布では、参加者の20.7%は19本以下、24.8%は9本以下であった。口腔機能低下の有病率で最も高かったのは咀嚼機能の低下で35%であり、嚥下困難と口腔乾燥はともに約20%を占めていた。
(4)バランスのよい食生活を可能とする口腔機能の実態把握:口腔機能に係るエビデンスの収集
口腔機能と栄養・食生活に関する論文をレビューした結果、小児期1件、成人期5件、高齢期18件を抽出した。
(5)「食育における「歯科口腔保健との協働」 実践に向けた手引き」の作成
「手引き」では、既存食育事業に歯科口腔保健の要素を上乗せすることを基本方針として、歯科口腔保健を「モノ」と「ヒト」という2つの要素に分けて食育事業における活用方法を示した。
(6)事例集の作成
22の事業を、対象層のライフステージ、内容、形態、関与している職種などについて、自治体ごとに示した。
(7)「食育における歯科口腔保健の推進」についての意見交換会の開催
対面形式とオンライン形式の意見交換会を開催し、各地域における「食育における歯科口腔保健の推進」などについて意見を交換した。
(8)「「歯科口腔保健の推進」を図っていくための提案」の作成
「提案」の概要は、食育推進基本計画の目標の変更、食育白書における歯科口腔保健に関する記述の変更などである。

本研究の成果を発信するために研究班の Web サイト「「食育における歯科口腔保健の推進」を考えている皆様へ(略称:歯科食育サイト)」を作成した。https://www.niph.go.jp/soshiki/koku/oralhealth/ohps/index.html


結論
本研究から、食行動の各種指標間の関連、口腔の健康状態と食との関連、歯科口腔領域における食育に関連する要因、食育における歯科口腔保健の取組み事例、口腔機能と栄養・食生活に関するエビデンスが示された。
令和4年度の調査研究の結果および今年度に得られた知見を踏まえて、食育推進における歯科口腔保健の取組みに係る具体的な手法および考え方についてライフステージに応じた方策を検討し、食育における歯科口腔保健の実施に活用可能な普及啓発のための媒体を作成した。

公開日・更新日

公開日
2024-08-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-08-19
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202308027B
報告書区分
総合
研究課題名
食育における歯科口腔保健の推進のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22FA1024
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
田野 ルミ(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 安藤 雄一(国立保健医療科学院)
  • 岩崎 正則(北海道大学 歯学部)
  • 梶浦 靖二(島根県益田保健所)
  • 佐藤 眞一(千葉県衛生研究所)
  • 中西 明美(女子栄養大学 栄養学部)
  • 福田 英輝(国立保健医療科学院)
  • 山本 貴文(北海道大学病院 予防歯科)
  • 吉森 和宏(千葉県衛生研究所 健康疫学研究室)
  • 松尾 浩一郎(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 医歯理工保健学専攻 地域・福祉口腔機能管理学分野)
  • 小宮山 恵美(東京都健康長寿医療センター研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食育は、食育基本法により国民運動としての展開が求められており、歯科口腔保健は食育の推進において一定の役割を果たすことが期待されている。第 3~4 次の食育推進基本計画では「ゆっくりよく噛んで食べる国民を増やす」ことが目標に掲げられ、第 4 次食育推進基本計画の決定の際には、厚生労働省医政局歯科保健課長より各衛生主管部(局)長宛て「「第 4 次食育推進基本計画」に基づく歯科口腔保健を通じた食育の推進について」にて通知された。また、毎年刊行される食育白書には「歯科口腔保健における食育推進」という一節がある。これらのことから、食育における歯科口腔保健の位置づけは、ある程度できているといえる。しかしながら、その中身をみると食育と歯科口腔保健が上手く噛み合っている状況とは言い難く、食育において歯科口腔保健を推進するにあたって参考事例や関連するエビデンスなどが自治体や歯科関係者に広く普及しているとは言えない。
本研究は、食育における歯科口腔保健を推進するための自治体の取組みの状況などを把握し、食育に係る関係者との連携・協働といった事例の収集および推進にあたっての課題を整理するとともに、各自治体がライフステージに応じた食育における歯科口腔保健の取組みに活用できるエビデンスや具体的な方法、考え方を提示することを目的とする。
研究方法
令和4年度は、主として自治体の食育における歯科口腔保健の取組みに関する質的および量的データならびに事例の収集、政府統計および各種調査など既存データの分析、エビデンスの収集を行った。
令和5年度は、令和4年度の研究課題を継続しつつ、咀嚼に関連した食行動指標に関するWeb調査を実施した。
令和4~5年度の本研究から得られた知見を踏まえて、令和5年度に、食育における歯科口腔保健の取組みに係わる具体的な手法および方策をワークショップ形式の意見交換会などの場で検討した。また、食育における歯科口腔保健の実施に自治体などが活用可能な普及啓発のための媒体を作成し、研究班のWeb サイトを作った。
結果と考察
全国の自治体を対象とした「食育における歯科口腔保健の推進」に関するアンケート調査の結果、全般的に食育に対する取り組みは自治体規模が小さなところでは進んでおらず、小規模自治体では食育に手が回らない状況が推察された。インタビュー調査から食育に係る関係者との連携・協働といった事例や、「食育における歯科口腔保健の推進」を実践していくうえで必要なエビデンスが示された。政府統計などの既存データの分析からは、口腔の健康状態と食との関連や歯科口腔領域における食育に関連する要因について明らかになった。
これらの結果をもとに、ワークショップ形式の意見交換会や学会での討論セッションなどでの検討を通して、食育における歯科口腔保健の取組みに活用できる具体的な方法、考え方の提示に向けた成果物を作成した。
研究成果を提示するためにつくった、研究班のWeb サイト「「食育における歯科口腔保健の推進」を考えている皆様へ(略称:歯科食育サイトhttps://www.niph.go.jp/soshiki/koku/oralhealth/ohps/index.htmlに、作成した啓発媒体などを掲載した。コンテンツは、「提案」「手引き」「全国実態調査」「事例集」「エビデンス集」「データ集」「1分動画」「厚労科研報告書2022」「厚労科研報告書2023」「リンク集」から成る。
本研究班の最終目標は「食育における歯科口腔保健の推進」に資する成果物を作成することであり、「手引き」はその中心的役割を担い、事例集では具体的な実践例を示す。「食育における歯科口腔保健の推進」を図っていく主体は自治体であり、その主体的な取組みが不可欠であるが、より円滑に推進されるための環境整備も必要である。また、事業検討の場などにおいて、歯科関係者が参画できる体制づくりとともに、食育において歯科口腔保健が入る意義をより明確にすることが求められると考える。
結論
本研究の調査研究から、全国の自治体における「食育における歯科口腔保健」に関する実態や食育に歯科口腔保健の要素がはいった事例のほか、食育と歯科口腔保健との関連に関する知見、口腔機能にかかわるエビデンスなどが示された。これらを踏まえて、食育推進における歯科口腔保健の取組みに係る方策の討議を通して、食育における歯科口腔保健の実施に自治体などが活用可能な普及啓発のための媒体を作成し、本研究班のWebサイトで提示した。
今後、「食育における歯科口腔保健の推進」の実践に使用できる事例や方法および考え方が、歯科関係者のみならず、歯科以外の専門職や食育担当者などに啓発物を広く共有することで、生涯にわたる口腔機能の獲得・維持・向上につながるとともに、「食育」を通じた歯科口腔保健の推進の拡大が期待される。

公開日・更新日

公開日
2024-08-19
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202308027C

収支報告書

文献番号
202308027Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,500,000円
(2)補助金確定額
5,110,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,390,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,214,163円
人件費・謝金 473,462円
旅費 1,318,286円
その他 2,104,889円
間接経費 0円
合計 5,110,800円

備考

備考
端数800円は自己資金

公開日・更新日

公開日
2024-12-23
更新日
-