安全な生殖補助医療を行うための精液よりのHIVウイルス分離法の確立

文献情報

文献番号
200932019A
報告書区分
総括
研究課題名
安全な生殖補助医療を行うための精液よりのHIVウイルス分離法の確立
課題番号
H21-エイズ・一般-003
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
田中 憲一(新潟大学 教育研究院医歯学系)
研究分担者(所属機関)
  • 花房秀次(荻窪病院)
  • 加藤真吾(慶応義塾大 学医学部)
  • 兼子 智(東京歯科大学市川病院)
  • 八幡哲郎(新潟大学 教育研究院医歯学系)
  • 高桑 好一(新潟大学医歯学総合病院)
  • 宇都宮龍馬(旭化成クラレメディカル株式会社)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
16,875,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年HIV感染は漸増しており、HIV陽性男性陰性女性夫婦で子供を持ちたいと願う夫婦が増加している。これらの夫婦により安全な生殖補助技術を提供することを目的とし、基礎的,臨床的研究を継続している。
研究方法
1)ヒト精子凍結保存の最適化のため等倍濃度の保護剤を予め添加したコロイドシリカゲル担体を用いて洗浄濃縮を行う方法の開発を行った。2)HIV感染者の精液中におけるウイルスRNAとプロウイルスDNAの検出の研究として分画した、各分画から核酸を精製し、HIV-1のgag遺伝子p24領域を標的とするnested PCRを実施した。3)中空糸膜を利用した効率的な精液中HIV除去方法の開発のため、中空糸膜使用小型カラムを作成した。4)HIV陽性男性陰性女性夫婦に対する生殖補助医療の応用拡大のための研究として対象症例を増やすとともにホームページの作成により情報の公開を推進した。
結果と考察
1)HIVを除去した精子浮遊液の凍結保存に際し、予め保護剤を添加したコロイドシリカゲル担体を用いて洗浄濃縮を行ことにより、直ちに容器に収納して凍結を行うことができた。2)HIV感染者の精液の各分画中のHIV-1 RNAとDNAの検出を試みたが、被験者6人のうち血中ウイルス量の高い3人から精漿中にHIV-1 RNAが検出され、その中の1人では単核球成分からプロウイルスDNAが検出された。3)中空糸膜ウイルス除去カラムB60での洗浄を6回行った以降では、HIV陽性精子浮遊液中にウイルスは検知されなかった。4) HIV陽性男性陰性女性夫婦に対する体外受精・胚移植の成績については平成12年以降125名に胚移植を実施し、93名が妊娠し69名の児が出生している。また、本研究班のホームページを作成し本治療の実施概要、治療成果などを公表した。過去、妻が二次感染することなく妊娠に至り,生児を出産した症例を多数経験している。このことは,女性の二次感染者の減少と共に、HIV感染者のQOLを向上させるだけでなく社会参加による心理的負担の解消と治療費の抑制,社会の労働力増加など多大な利益に繋がるものと判断している。

結論
安全な生殖補助医療を行うため精液からのHIV分離法を確立し、HIV陽性患者夫婦の生殖補助医療を実施することは、社会的、医療経済的に多大な効果をもたらすものであり、今後も推進していく必要があるものと判断される

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
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