HIV感染予防個別施策層における予防情報アクセスに関する研究

文献情報

文献番号
200932016A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV感染予防個別施策層における予防情報アクセスに関する研究
課題番号
H20-エイズ・一般-009
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
服部 健司(群馬大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 岡村 牧男(ネットワーク医療と人権)
  • 長谷川 博史(日本HIV陽性者ネットワーク・ジャンププラス)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
4,250,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 何が個別施策層の人々をHIV感染予防情報から遠ざけているのか。先行研究とはちがった角度からその諸要因を解明し、アクセス改善手法を開発することが研究目的である。必要な情報は隅々まで届けられているか。人々は近くにある情報にどのようにアクセスしているか。情報はどのように受け止められているか。それらを実証的に検討するとともに、倫理学的観点から正当化可能な介入のあり方に関する社会哲学的な論証研究も併せて行う。
研究方法
1.地方在住のHIV陽性者へのインタビューに拠るライフストーリー調査によって、情報提供による行動変容促進、ゲイ・コミュニティを基盤にした対策、スティグマによる抑圧の解放を柱とした行動科学的仮説モデルに批判的再検討を加えた。
2.予防啓発活動方法・内容やその周囲の社会的状況について、都市部と地方とでの違い、地方の特異性を明らかにするため、全国の保健所・福祉事務所・保健センターおよび予防啓発・支援団体を対象にして、質問紙調査を行った。
3.ゲイタウンや当事者による予防啓発・支援団体との親和性が薄い者を一定以上含むと考えられるHIV専門外来に通院している男性の陽性者を対象にして、予防情報に関する主観的経験や評価、身構え方などを問う量的調査の実施にむけて、質問紙票を作成した。
4.公衆衛生倫理学的観点からの予防的保健介入上の倫理問題についての論証研究を行った。
結果と考察
1.ゲイ・コミュニティに帰属していない地方在住のMSMは、大都市圏のゲイ・アイデンティティをもった人々とは異なるライフスタイルや価値観をもっているようである。彼らに対して予防啓発を行う際には、ゲイタウンやコミュニティを媒介としない方法を開発する必要がある。
2.地方では個別施策層への対策はほとんど青少年に向けられている。大都市圏で開発制作され普及している数々の啓発資材は、地方においてはその認知度、利用度ともに低い。また対象者を限定した特異的資材の需要は地方では低い。
3.性行動というきわめて個別的な生の価値の圏域に倫理をもちだすためには、公共性や多様性、危害性などの政治哲学上の鍵概念を批判的に再検討する必要がある。
結論
 MSM当事者たちを中心とする予防啓発支援団体が対象者の細分化を徹底化する方向で予防啓発資材を開発してきたのと対照的に、むしろ細分化される要素を再び融合的統合的に盛り込んだ予防情報資材を試作し、その有用性を検証する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
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