文献情報
文献番号
202308015A
報告書区分
総括
研究課題名
慢性閉塞性肺疾患患者における加熱式たばこの経年的な肺機能への影響に関する前向き観察研究
課題番号
22FA1011
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
横山 彰仁(高知大学 教育研究部医療学系臨床医学部門)
研究分担者(所属機関)
- 杉浦 久敏(東北大学 大学院医学系研究科)
- 平井 豊博(国立大学法人京都大学 大学院医学研究科)
- 室 繁郎(奈良県立医科大学 呼吸器内科)
- 井上 博雅(鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科)
- 川山 智隆(久留米大学 医学部 内科学講座 呼吸器・神経・膠原病内科部門)
- 柴田 陽光(福島医科大学)
- 田坂 定智(弘前大学 医学部)
- 髙松 和史(高知大学 教育研究部医療学系臨床医学部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
6,930,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease: COPD)はたばこ煙を主とする有害物質を長期暴露することで生じ、正常に復すことのない気流閉塞で定義される疾患である。COPDの原因として、本邦ではたばこ煙の影響が大きいのはよく知られているが、最近市場に登場した加熱式たばこは、紙巻たばこに比べて有害成分が少ないと謳われてはいるが、発がん性物質をはじめ、多種の有害成分が含まれており、長期的な身体への影響については明らかになっていない。そこで今回、COPD患者を対象とし、加熱式タバコの肺機能低下速度や急性増悪の頻度などへの影響について、また紙巻きたばこの継続喫煙者や禁煙者との差異について前向きに観察研究を行うこととした。
研究方法
研究デザインは多施設共同前向き観察研究であり、対象はCOPDのため研究参加施設あるいはその関連施設に通院中で同意の得られた患者とした。目標症例数は600例とした(内訳 禁煙群:300例、紙巻きたばこ群:150例、加熱式たばこ群:150例)。
主要評価項目は、COPD患者における肺機能(肺活量、努力肺活量、1秒量、1秒率)の推移である。
副次評価項目は、①増悪の割合と程度、②COPDの自覚症状(咳嗽、喀痰、呼吸困難、胸部不快感・違和感・新規の併存症)、③臨床スコア:COPDアセスメントテスト(CAT)、mMRC、④胸部CT:気腫化スコア(Goddardスコア)とした。
登録された患者は半年毎に外来を受診し、上記の項目についてフォローする。
近年はCOPDの早期診断が重視され、また診断基準の変更も考慮されており、本研究の対象を拡大し以下のように定めた。
① COPD(気管支拡張薬吸入後の1秒率が70%未満もしくはLower Limit of normal未満)で通院中の患者(気管支喘息合併も含む)
② PRISM(1秒率 70%以上、%FEV1<80%)の患者
③ 気管支拡張薬吸入後の1秒率が70-75%であっても、喫煙歴があり下記の条件を満たせばCOPDとして登録可
・慢性気管支炎症状もしくはCAT10点以上
・胸部CTによる気腫性変化(Goddard1点以上)
主要評価項目は、COPD患者における肺機能(肺活量、努力肺活量、1秒量、1秒率)の推移である。
副次評価項目は、①増悪の割合と程度、②COPDの自覚症状(咳嗽、喀痰、呼吸困難、胸部不快感・違和感・新規の併存症)、③臨床スコア:COPDアセスメントテスト(CAT)、mMRC、④胸部CT:気腫化スコア(Goddardスコア)とした。
登録された患者は半年毎に外来を受診し、上記の項目についてフォローする。
近年はCOPDの早期診断が重視され、また診断基準の変更も考慮されており、本研究の対象を拡大し以下のように定めた。
① COPD(気管支拡張薬吸入後の1秒率が70%未満もしくはLower Limit of normal未満)で通院中の患者(気管支喘息合併も含む)
② PRISM(1秒率 70%以上、%FEV1<80%)の患者
③ 気管支拡張薬吸入後の1秒率が70-75%であっても、喫煙歴があり下記の条件を満たせばCOPDとして登録可
・慢性気管支炎症状もしくはCAT10点以上
・胸部CTによる気腫性変化(Goddard1点以上)
結果と考察
2024年3月末の時点で、禁煙群57人、加熱式たばこ群36人、紙巻きたばこ群44人が登録された。患者背景としては、禁煙群は紙巻たばこ群より約5歳、加熱式たばこ群より約12歳高齢で、加熱式たばこ群は他の2群より女性の割合が多かった(約2割)。主要評価項目である1秒量の低下の推移に関しては、6か月目の時点で禁煙群、加熱式たばこ群、紙巻たばこ群でそれぞれ、 -4.7±111ml、-7.6±83ml、-42±162mlであった。
転帰としては、禁煙群でCOPD増悪が1名、紙巻たばこ群で死亡(大腸がん)1例を認めた。
これまで集まっているデータを用いて、COPD患者に対する加熱式たばこの影響について検討したところ、紙巻たばこ群と加熱式たばこ群では禁煙群より6か月後における1秒量の低下量が大きい傾向があった。本邦の北海道COPDコホート2)における1年あたりの1秒量の減少は-32±24ml(平均±SD)であり、Rapid decliner群では-63±2mlであった。また、1秒量の低下は胸部CTでの気腫の程度と相関していたと報告している。中間報告の現時点では-6.0±123ml/6か月と既報よりは低下量が少ないものの、標準偏差がなどからはばらつきの大きいデータであるため、さらなる症例登録・集積が必要である。また、北海道COPDコホートでは現喫煙者、過去喫煙者(当研究では禁煙群)、間欠喫煙者が混ざった解析となっており、喫煙群別で解析をしているわけではない点や5年間のフォローアップされている点は本研究と異なっており、単純に比較はできない。
転帰としては、禁煙群でCOPD増悪が1名、紙巻たばこ群で死亡(大腸がん)1例を認めた。
これまで集まっているデータを用いて、COPD患者に対する加熱式たばこの影響について検討したところ、紙巻たばこ群と加熱式たばこ群では禁煙群より6か月後における1秒量の低下量が大きい傾向があった。本邦の北海道COPDコホート2)における1年あたりの1秒量の減少は-32±24ml(平均±SD)であり、Rapid decliner群では-63±2mlであった。また、1秒量の低下は胸部CTでの気腫の程度と相関していたと報告している。中間報告の現時点では-6.0±123ml/6か月と既報よりは低下量が少ないものの、標準偏差がなどからはばらつきの大きいデータであるため、さらなる症例登録・集積が必要である。また、北海道COPDコホートでは現喫煙者、過去喫煙者(当研究では禁煙群)、間欠喫煙者が混ざった解析となっており、喫煙群別で解析をしているわけではない点や5年間のフォローアップされている点は本研究と異なっており、単純に比較はできない。
結論
COPD患者においては加熱式たばこで経年的な一秒率が低下する可能性が示唆された。しかし、まだフォローアップ期間が短く、症例数も少ないため、データ自体のばらつきが多い結果であった。さらなる症例の集積とフォローアップが必要である。また、症例の集積と同時に、本研究において別に行うとしていた一部後ろ向きの肺機能データを用いて、加熱式たばこの影響を検討する必要がある。
公開日・更新日
公開日
2024-08-29
更新日
-