文献情報
文献番号
202308006A
報告書区分
総括
研究課題名
健康無関心層のセグメント化と効果的介入手法の検討:ライフステージに着目して
課題番号
22FA1001
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
福田 吉治(帝京大学 大学院公衆衛生学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 石川 ひろの(帝京大学 医学部)
- 近藤 尚己(京都大学 大学院医学研究科 社会疫学分野)
- 本庄 かおり(大阪大学 グローバルコラボレーションセンター)
- 林 芙美(学校法人香川栄養学園女子栄養大学 栄養学部)
- 田淵 貴大(国立大学法人東北大学 大学院医学系研究科)
- 村山 洋史(東京大学高齢社会総合研究機構)
- 渋谷 克彦(帝京大学 大学院公衆衛生学研究科)
- 金森 悟(帝京大学 大学院 公衆衛生学研究科)
- 甲斐 裕子(公益財団法人 明治安田厚生事業団 体力医学研究所)
- 鈴木 有佳(慶應義塾大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
3,420,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
健康寿命の延伸、疾病予防、健康増進を目的に、特に健康無関心層に対して効果的な介入を実施するため、健康無関心層の特性把握と同定方法、および健康無関心に関連する要因を明らかにすること、新しい生活様式の中で効果的な取組を実装するために、集団をセグメンテーションする方法を明らかすること、および各種取組の健康無関心層と健康格差への影響を明らかにし、効果的な取組方法を提言することを目的とする。
研究方法
上記を目的に、研究1:健康無関心層の定義と同定方法に関する研究、研究2:社員の属性データに基づく個別化健康増進プログラム提供の効果に関するランダム化比較試験:職域保健プログラム「健診戦」、研究3:国民生活基礎調査データを用いた健康無関心層の特性把握、研究4:経済的不安があっても食行動や食に関する主観的QOLが良好である者の特徴、研究5:健康無関心層における問題飲酒、研究6:先延ばし傾向と健康関心度との関連、研究7:行動変容ステージ別の健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023の達成状況―若年女性の前熟考期に着目して―、研究8:健康への関心とCOVID-19の感染および重症化の関連―JASTIS2020-2022データを利用した縦断研究―を実施した。
結果と考察
研究1では、5つの視点から健康無関心層の同定や定義を提示するとともに、健康関心度尺度を基にした定義を提案した。研究2では、腹囲の減少は、対照群がターゲット推奨群に比べ大きく、配信された動画記事の総閲覧数は、ターゲット推奨群とランダム推奨群に比べ対照群で最も多かった。研究3では、非婚者、最終学歴が専門・短大卒業以下、特に中学卒業以下の者、週に40時間以上働く者で健康無関心者の割合が高く、現役世代では、週50時間以上働く者ならびに18歳未満の子どもと同居する者、青年期ならびに高齢期の女性では、世帯員への手助け・見守りを行う者において健康無関心者の割合が高かった。研究4では、健全な食生活の心がけがあること,家族と同居していることは,経済状況を問わず,良好な食行動・SDQOLと関連していること、および,朝食を食べる,主食・主菜・副菜を揃えることに対するポジティブな考えは食行動と正の関連があり,ネガティブな考えには負の関連があることが示された。研究5では、健康無関心層における、健康への関心度が高いグループを基準とした、個人属性(年齢、性別、婚姻状態、教育歴、世帯年収)、職業特性(職種/雇用形態)を調整後の問題飲酒のオッズ比は1.72であった。研究6では、解析の結果、性別、年齢、就労の有無、婚姻状況、独居の有無、暮らし向き、教育年数、現在治療中の疾患の数、主観的健康感を調整しても、先延ばし傾向が高い者ほど健康関心度が低かった。研究7では、若年女性の前熟考期は、他のステージと比較して、身体活動量が少なく身体活動ガイド2023の達成度も低いにも関わらず、痩せており、健診データが比較的良好であった。研究8では、全対象者における健康への関心度とCOVID-19の感染および重症化の関連に関する有意差はみられなかった。サブグループごとの健康への関心とCOVID-19の感染について有意差がみられたのは、65歳以上のグループであった。
結論
健康無関心層の定義および健康関心度を定量化することにより、集団において健康無関心層を同定し、アプローチすることがより簡便に可能となる。また、各種調査の分析により、健康関心度尺度等と健康行動との関連が示された。これらの結果をもとに、ナッジを応用した健康づくりガイドブックの公開、研修会等により研究成果の普及啓発とともに、健康無関心層への効果的なアプローチ方法として、ナッジと行動経済学を応用した取組を推進することに貢献できた。
公開日・更新日
公開日
2024-08-29
更新日
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