薬剤耐性HIVの動向把握のための調査体制確立及びその対策に関する研究

文献情報

文献番号
200932006A
報告書区分
総括
研究課題名
薬剤耐性HIVの動向把握のための調査体制確立及びその対策に関する研究
課題番号
H19-エイズ・一般-007
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
杉浦 亙(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター 臨床研究センター 感染・免疫部)
研究分担者(所属機関)
  • 桑原 健(独立行政法人国立病院機構南京都病院 薬剤科)
  • 小池隆夫(北海道大学大学院医学研究科病態内科学講座)
  • 貞升健志(東京都健康安全研究センター 微生物部)
  • 南 留美(独立行政法人国立病院機構九州医療センター 免疫感染症科)
  • 西澤雅子(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
  • 近藤真規子(神奈川県衛生研究所 微生物部)
  • 巽 正志(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
  • 石ヶ坪良明(横浜市立大学大学院医学研究科病態免疫制御内科学講座)
  • 加藤真吾(慶応義塾大学医学部微生物学・免疫学教室)
  • 藤井 毅(東京大学医科学研究所 先端医療研究センター感染症分野)
  • 白阪琢磨(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター 臨床研究センター)
  • 松下修三(熊本大学エイズ学研究センター)
  • 潟永博之(国立国際医療センター エイズ治療・研究開発センター)
  • 福武勝幸(東京医科大学医学部 臨床検査医学科)
  • 森 治代(大阪府公衆衛生研究所 ウィルス課)
  • 健山正男(琉球大学大学院医学研究科感染病態制御学講座)
  • 田邊嘉也(新潟大学医歯学総合病院 第二内科)
  • 仲宗根 正(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
  • 伊藤俊広(独立行政法人国立病院機構仙台医療センター 血液内科)
  • 太田康男(帝京大学医学部 内科学講座)
  • 木村昭郎(広島大学原爆放射線医科学研究所ゲノム疾患治療研究部門)
  • 上田幹夫(石川県立中央病院 血液内科)
  • 内田和江(埼玉県衛生研究所 ウィルス)
  • 佐藤武幸(千葉大学医学部附属病院 感染症管理治療部)
  • 堀 成美(聖路加看護大学 基礎系看護学・看護教育学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
82,691,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国における薬剤耐性HIVの発生動向の把握とその増加を抑制するために必要な対応を明確にする。
研究方法
以下5項目の研究を実施する。
(1)薬剤耐性調査研究:新規HIV/AIDS診断症例における薬剤耐性調査およびアンケートによる治療症例における薬剤耐性の現状を調査する。
(2)薬剤耐性HIV発生機序の解析研究:薬剤耐性HIVの伝播背景を症例情報の統計学的解析から明らかにする。微少集族における薬剤耐性検出技術開発とその臨床的意義ついて考察する。
(3)薬剤耐性検査の質的管理:薬剤耐性遺伝子検査の研究班推奨基準測定法と研究班実用校正サンプルを決定する。
(4)薬剤血中濃度測定研究:ホームページを介して検査受付と情報発信。新規薬剤の血中濃度測定法の開発と検査体制の確立を行う。至適治療実践のための血中濃度測定に関する臨床研究を実施する。
(5) 予防施策への還元:調査で捕捉率が低い女性症例の調査について予防施策と絡めて検討を行う。
結果と考察
以下の成果を挙げた。
(1)新規感染症例390例を調査し29例(7.4%)に薬剤耐性を確認した(中間集計)。クラス別ではNRTI:27例(6.9%)、NNRTI:11例(2.8%)、PI:15例(3.8%)であった。新薬使用状況調査を実施し、203施設7692症例の回答を得た。内5474症例が治療中であり、260症例に新規薬剤が使用されていた。薬剤耐性症例は85例 (1.6%)であった。
(2)薬剤耐性の伝播はサブタイプBに有意に高い事が明らかになった。高感度法を用いて新規診断症例105例について高感度法と通常法との比較を行った。その結果、高感度法を用いる事により薬剤耐性の観察頻度は1.5倍に増加した。
(3)薬剤耐性検査の質的管理:研究班実用校正サンプル3検体を主要な薬剤耐性検査実施4機関に送付してその質と安定性を確認した。
(4)薬剤血中濃度測定研究: 累積HPアクセス:10507件、パスワード取得者:189名。平成21年度は408件の検査が行われた。新薬に関しても測定体制が整い検査の受付を行っている。
(5)女性の現状を把握するために、既にある健診システムの利用や医療機関を受診した感染ハイリスク層を対象とした調査の必要性を確認した。
結論
本邦における薬剤耐性HIVの動向を把握する調査体制の確立、薬剤耐性検査標準化、血中濃度測定検査の定着を達成した。

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

文献情報

文献番号
200932006B
報告書区分
総合
研究課題名
薬剤耐性HIVの動向把握のための調査体制確立及びその対策に関する研究
課題番号
H19-エイズ・一般-007
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
杉浦 亙(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター 臨床研究センター 感染・免疫部)
研究分担者(所属機関)
  • 桑原 健(独立行政法人国立病院機構南京都病院 薬剤科)
  • 小池隆夫(北海道大学大学院医学研究科病態内科学講座)
  • 貞升健志(東京都健康安全研究センター 微生物部)
  • 南 留美(独立行政法人国立病院機構九州医療センター 免疫感染症科)
  • 西澤雅子(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
  • 近藤真規子(神奈川県衛生研究所 微生物部)
  • 巽 正志(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
  • 石ヶ坪良明(横浜市立大学大学院医学研究科病態免疫制御内科学講座)
  • 加藤真吾(慶応義塾大学医学部微生物学・免疫学教室)
  • 藤井 毅(東京大学医科学研究所 先端医療研究センター感染症分野)
  • 白阪琢磨(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター 臨床研究センター)
  • 松下修三(熊本大学エイズ学研究センター)
  • 潟永博之(国立国際医療センター エイズ治療・研究開発センター)
  • 福武勝幸(東京医科大学医学部 臨床検査医学科)
  • 森 治代(大阪府公衆衛生研究所 ウィルス課)
  • 健山正男(琉球大学大学院医学研究科感染病態制御学講座)
  • 田邊嘉也(新潟大学医歯学総合病院 第二内科)
  • 仲宗根 正(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
  • 伊藤俊広(独立行政法人国立病院機構仙台医療センター 血液内科)
  • 太田康男(帝京大学医学部 内科学講座)
  • 木村昭郎(広島大学原爆放射線医科学研究所 ゲノム疾患治療研究部門)
  • 上田幹夫(石川県立中央病院 血液内科)
  • 内田和江(埼玉県衛生研究所 ウィルス)
  • 佐藤武幸(千葉大学医学部附属病院 感染症管理治療部)
  • 堀 成美(聖路加看護大学 基礎系看護学・看護教育学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国における薬剤耐性HIVの発生動向の把握とその増加を抑制するために必要な対応を明確にする。
研究方法
以下5項目の研究を実施する。
(1)薬剤耐性調査研究:新規HIV/AIDS診断症例における薬剤耐性調査およびアンケートによる治療症例における薬剤耐性の現状を調査する。
(2)薬剤耐性HIV発生機序の解析研究:薬剤耐性HIVの伝播背景を症例情報の統計学的解析から明らかにする。微少集族における薬剤耐性検出技術開発とその臨床的意義ついて考察する。
(3)薬剤耐性検査の質的管理:薬剤耐性遺伝子検査の研究班推奨基準測定法と研究班実用校正サンプルを決定する。
(4)薬剤血中濃度測定研究:ホームページを介して検査受付と情報発信。新規薬剤の血中濃度測定法の開発と検査体制の確立を行う。至適治療実践のための血中濃度測定に関する臨床研究を実施する。
(5) 予防施策への還元:調査で捕捉率が低い女性症例の調査について予防施策と絡めて検討を行う。
結果と考察
(1)平成19年482例、20年626例、21年390例の新規HIV/AIDS診断症例を調査した。薬剤耐性の検出頻度は平成19年9.9%、20年8.3%、21年7.4%であった。治療患者の薬剤耐性調査では、3クラス耐性症例の治療成功率が低く、死亡率も高いことを明らかにした。また、多剤耐性症例の頻度が治療を受けている症例の1.6%であることを明らかにした。
(2)薬剤耐性HIVの伝播がサブタイプB感染症例に有意に多い事を明らかにした。微小集団の薬剤耐性検出法を開発して検査を行った結果、通常の薬剤耐性検査で検出できなかった耐性症例の同定に成功した。
(3)研究班推奨基準測定法の決定と研究班実用校正サンプルの作製を完了した。
(4)平成21年度11月までに10507件のHPへのアクセスがあり、パスワード取得者は189名になった。また平成21年度は408件の検査が行われた。
(5)女性の現状を把握するために、既にある健診システムの利用や医療機関を受診した感染ハイリスク層を対象とした調査の必要性を確認した。
結論
本邦における薬剤耐性HIVの動向を把握する調査体制の確立、薬剤耐性検査標準化、血中濃度測定検査の定着を達成した。

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200932006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
新規HIV/AIDS診断症例における薬剤耐性HIV調査は、他国の調査に類を見ない高い捕捉率により本邦におけるHIV/AIDS疫学的動向の正確な把握を実現した。その結果、新規HIV/AIDS診断症例における薬剤耐性HIVの頻度が6~10%、流行するウイルスの80%以上がサブタイプB、そして新規にHIV感染が拡大しているのが日本人のMSMであること等を明らかにした。また高感度検査法の開発•導入により、微少集団に薬剤耐性HIVが潜んでおり、その頻度が高いことを見いだした。
臨床的観点からの成果
抗HIV療法を受けているHIV/AIDS患者の薬剤耐性調査は、多数の医療機関の協力により全貌に近い情報の収集に成功した。その結果HIV感染者の約70%が抗HIV療法を受けており、その1.6%が薬剤耐性の為に治療困難に陥っていることを明らかにした。また薬剤耐性症例では耐性検査実施率が高く、検査を実施した症例の治療成績がよいことが明らかになった。研究班で実施している治療薬剤血中濃度測定検査の提供は至適治療を行う上での有用な情報として臨床現場で活用されている。
ガイドライン等の開発
研究班で取り組んでいる薬剤耐性検査の質的管理研究は、国内何処でも同質の薬剤耐性検査を受けられる検査耐性を実現させることを目標としている。プロテアーゼ、逆転写酵素、インテグラーゼ各領域の遺伝子配列解析の研究班推奨基準測定法を決定した。また研究班実用校正サンプルを作製した。
その他行政的観点からの成果
疫学調査の中でHIV-2感染症例5例を同定した。このうち2症例は日本人女性でありHIV-2感染の流行する地域への海外渡航歴がないことから日本国内での感染が強く疑われた。このことから危険情報「医療機関及び保健所にたいするHIV-2 感染症例の周知について(健疾発第0203001号 平成21年2月3日)」を出した。
その他のインパクト
該当なし

発表件数

原著論文(和文)
8件
原著論文(英文等)
75件
その他論文(和文)
33件
その他論文(英文等)
5件
学会発表(国内学会)
300件
学会発表(国際学会等)
49件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計3件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
健疾発第0203001号 平成21年2月3日「医療機関及び保健所にたいするHIV-2感染症例の周知について」
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Iwatani Y, Chan DS, Liu L, et al.
HIV-1 Vif-mediated ubiquitination/ degradation of APOBEC3G involves four critical lysine residues in its C-terminal domain.
Proc Natl Acad Sci USA. , 106 (46) , 19539-19544  (2009)
原著論文2
Fujisaki S, Fujisaki S, Ibe S, et al.
Performance and Quality Assurance of Genotypic Drug- Resistance Testing for Human Immnodeficiency Virus Type 1 in Japan.
Jpn J Infect Dis. , 60 , 113-117  (2007)
原著論文3
Ode H, Matsuyama S, Hata M, et al.
Mechanism of drug resistance due to N88S in CRF01_AE HIV-1 protease, analyzed by molecular dynamics simulations.
J Med Chem. , 50 (8) , 1768-1777  (2007)
原著論文4
Chiba-Mizutani T, Miura H, Matsuda M, et al.
Use of new T-cell-based cell lines expressing two luciferase reporters for accurately evaluating susceptibility to anti-human immunodeficiency virus type 1 drugs.
J Clin Microbiol. , 45 (2) , 477-487  (2007)
原著論文5
Hamatake M, Nishizawa M, Yamamoto N, et al.
A simple competitive RT-PCR assay for quantitation of HIV-1 subtype B and non-BRNA in plasma.
J Virol Methods. , 142 , 113-117  (2007)
原著論文6
Gatanaga H, Ibe S, Matsuda M, et al.
Nationwide Survey of Drug-Resistant HIV-1 Prevalence in Patients Newly Diagnosed with HIV/AIDS in Japan.
Antiviral Research. , 75 (1) , 75-82  (2007)
原著論文7
T. Makie, S. Nagai, A. Sasakawa, et al.
Predicting Tenofovir Concentration on the Basis of Renal Factors Determined by Routine Tests
American Journal of Therapeutics. , 14 , 514-518  (2007)
原著論文8
Minami R, Yamamoto M, Takahama S, et al.
2. Human herpesvirus 8 DNA load in the leukocytes correlates with the platelet counts in HIV type 1-infected individuals. 
AIDS Res Hum Retroviruses. , 25 (1) , 1-8  (2009)
原著論文9
Tanaka, R., Hanabusa, H., Kinai, E., et al.
Intracellular efavirenz levels in peripheral blood mononuclear cells from HIV-infected individuals.
Antimicrob. Agents Chemother. , 52 (2) , 785-785  (2008)
原著論文10
Maeda T, Fujii T, Oyaizu N, et al.
Pneumocystis jiroveci pneumonia in an AIDS patient: Unusual manifestation as multiple nodules with expansive multiloculated cavities.
Eur J Radiol extra. , 61 , 49-52  (2007)
原著論文11
Fujii T, Nakamura T, Iwamoto A.
Pneumocystis pneumonia in patients with HIV infection: clinical manifestations, laboratory findings, and radiological features.
J Infect Chemother. , 13 , 1-7  (2007)
原著論文12
Shibata J, Yoshimura K, Honda A, et al.
Impact of V2 mutations for escape from a potent neutralizing anti-V3 monoclonal antibody during in vitro selection of a primary HIV-1 isolate.
J. Virol. , 81 , 3757-3768  (2007)
原著論文13
Makiko Hatada, Kazuhisa Yoshimura, Shigeyoshi Harada, et al.
HIV-1 evasion of a neutralizing anti-V3 antibody involves acquisition of a potential glycosylation site in V2.
J. Gen. Virol.  (2010)
原著論文14
Gatanaga H, Hayashida T, Tsuchiya K,et al.
Successful efavirenz dose reduction in HIV type 1-infected individuals with cytochrome P450 2B6 *6 and *26.
Clin. Infect. Dis. , 45 , 1230-1237  (2007)
原著論文15
Hayashida T, Gatanaga H, Tanuma J, et al.
Effects of low HIV-1 load and antiretroviral treatment on IgG -captured BED-enzyme immunoassay.
AIDS Res. Hum. Retroviruses. , 24 , 495-498  (2008)
原著論文16
Gatanaga H, Honda H, Oka S.
Pharmacogenetic information derived from analysis of HLA alleles.
Pharmacogenetics , 9 , 207-214  (2008)
原著論文17
Yoko Kojima, Takuya Kawahata, Haruyo Mori, et al.
Recent Diversity of HIV-1 in Individuals who visited STI-related clinics in Osaka, Japan.
Journal of Infection and Chemotherapy. , 14 , 51-55  (2008)
原著論文18
Yoko Kojima, Takuya Kawahata, Haruyo Mori.
Cases of HIV type 1 acute infection at STI-related clinics in Osaka.
AIDS Research and Human Retroviruses. , 25 , 717-719  (2009)
原著論文19
Hideta Nakamura, Masao Tateyama, Daisuke Tasato,et al.
Clinical utility of serum β-D-glucan and KL-6 levels in Pneumocystis jirovecii pneumonia.
Internal Medicine. , 48  (2009)
原著論文20
Yanagimoto S, Tatsuno K, Okugawa S,et al.
An essential single amino acid-of Toll-like receptor 4 that is pivotal for its signal Transduction and subcellular localization.
J.Biol Chem. , 284 , 3513-3520  (2009)

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
2017-07-03