個別施策層に対するHIV感染予防対策とその介入効果の評価に関する研究

文献情報

文献番号
200932005A
報告書区分
総括
研究課題名
個別施策層に対するHIV感染予防対策とその介入効果の評価に関する研究
課題番号
H19-エイズ・一般-006
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
仲尾 唯治(山梨学院大学 経営情報学部)
研究分担者(所属機関)
  • 沢田 貴志(港町診療所)
  • 樽井 正義(慶應義塾大学 文学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
2,493,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究の目的は外国人に対するHIV感染予防と医療支援の促進に関する効果的な介入方法を策定することにある。この目的はまた、HIV/AIDS診療に対するユニバーサル・アクセスの実現の一端を担うものであり、国際的に求められている課題でもある。
研究方法
 ① HIV陽性外国人に対する医療環境の整備 ② 外国人支援関連NGOのキャパシティ・ビルディング ③ 外国人コミュニティへの予防啓発の促進 ④ 出身国の医療アクセス情報の収集とその提供 ⑤ 外国人対応診療モデルの検討
結果と考察
 上記①から④の研究方法を主とする介入の効果を、⑤外国人対応診療モデルを検討する中で評価を行った。
 介入の結果、2007年以降には早期受診が実現し、初診時のCD4中央値が2003年以前の33.5や2004-2006年の68.0と比して飛躍的に向上し、357.5となり、ほぼ全員が発病前に受診するようになった。
 これらのことから、言語的な支援を行い、将来の治療アクセスについても現実的な情報が得られる医療機関を増やしていくことが、結果として早期受診を増やすことに繋がるという示唆が得られた。
 単なる多言語VCTセンターモデルではなく、HAARTへの橋渡しも展望した総合的なケアを提供できる外国人対応医療体制の整備こそが外国人のHIV対策を前進させる現実的な方策として考えられる。
結論
 外国人のHIV/AIDS対策を進めるには、外国人が受療する際の阻害要因となっている医療費や言語対応の問題、さらには入国管理局による対応の改善が図られる必要がある。それらが整っていない現状では、多くの外国人は医療へのアクセスから遠ざかり、HIV/AIDSに対する根強いスティグマの中、結果として受検なしに状態を増悪させる結果となっている。
 このような状況下であっても、当研究班が推奨する「通訳体制の整備」「緊急医療の未払い補填事業化」が実現している地域において「医療ケースワークの充実」「NGOとの連携」「出身国の医療への積極的な橋渡し」を行うことで一定の改善を確認することができた。

公開日・更新日

公開日
2010-08-16
更新日
-

文献情報

文献番号
200932005B
報告書区分
総合
研究課題名
個別施策層に対するHIV感染予防対策とその介入効果の評価に関する研究
課題番号
H19-エイズ・一般-006
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
仲尾 唯治(山梨学院大学 経営情報学部)
研究分担者(所属機関)
  • 沢田 貴志(港町診療所)
  • 樽井 正義(慶應義塾大学 文学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
在日外国人に対するHIV感染予防と医療支援の促進に関する効果的な介入方法の策定
研究方法
 ① HIV陽性外国人に関する医療従事者らへの情報・スキルの提供と現状調査の実施 ② 外国人支援関連NGOの能力向上 ③ 外国人コミュニティへの予防啓発の促進 ④ 出身国の医療アクセス情報の収集とその提供 ⑤ 外国人対応診療モデルの検討
結果と考察
 ① 3年度間11地点における個人別調査と機関別調査、ならびに収集した事例から、医療従事者や医療機関のHIV陽性外国人対応を改善していくためには、医療従事者の意欲やニーズのほか、言語対応による支援、出身国も含めたNGOや行政との連携、制度活用等が鍵となっていることが示唆された。
 ② 外国人支援関連NGOの能力向上を通して、それぞれの人種・民族への支援活動やNGO間の連携が一層強化された。さらに、それらNGOによる外国人民族団体の育成活動が徐々に実を結んで来、同郷集団に対する具体的な自助活動へと繋がりはじめた。
 ③ 前記民族団体による自助活動を支援し、それらと連携することによって、より適切な外国人コミュニティへの介入の準備が整いはじめた。
 ④ 外国人コミュニティへの啓発活動を通して、徐々にHIV/AIDSに対するスティグマの軽減が図られ、本研究方法①から④の活動と相まって、「⑤ 外国人対応診療モデルの検討」における外国人対応クリニックへの具体的な早期受検・受診へと繋げることができたと考えられる。
 ⑤ 本研究班の連携医療機関では、日本での医療が困難なHIV陽性外国人に対して出身国側の医療への橋渡しに力を入れてきた。国内のNGOと出身国のNGOとが連携し、全員に日本国内もしくは出身国でHARRTができるように支援を行ってきた。その結果、2007年以降には早期受診が実現し、初診時のCD4中央値が2006年以前と比べて飛躍的に向上し、ほぼ全員が発病前に受診するようになった。
結論
 これらのことから、言語的な支援を行い、将来の治療アクセスについても現実的な情報が得られる医療機関を増やしていくことが、結果として早期受診を増やすことに繋がるという示唆が得られた。単なる多言語VCTセンターモデルではなく、HARRTへの橋渡しも展望した総合的なケアを提供できる外国人対応医療体制の整備こそが外国人のHIV対策を前進させる現実的な方策として考えられる。

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200932005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 在日外国人はHIV/AIDSに対する根強いスティグマの中、結果として受検なしに状態を増悪させる結果となっている。外国人のHIV/AIDS対策を進めるには、外国人が受療する際の阻害要因となっている医療費や言語対応の問題、入国管理局による対応の改善が図られる必要がある。だが、当研究班が推奨する「通訳体制の整備」「緊急医療の未払い補填事業化」が実現している地域において「医療ケースワークの充実」「NGOとの連携」「出身国の医療への積極的な橋渡し」を行うことで一定の改善を確認することができた。
臨床的観点からの成果
 2004年以降の開発途上国での治療アクセスの向上を受けて、国内のNGOと出身国のNGOとの連携のもと、本研究班と連携する医療機関では、HIV陽性外国人全員に日本国内もしくは出身国でHARRTができるように支援を行ってきた。
その結果、2007年以降には早期受診が実現し、初診時のCD4中央値が2003年以前の33.5や2004-2006年の68.0と比して飛躍的に向上し、357.5となり、ほぼ全員が発病前に受診するようになった。
ガイドライン等の開発
 下記ハンドブックとしてガイドラインをまとめ上梓した。
『外国人医療相談ハンドブック-HIV陽性者療養支援のために-』(改訂版:平成22年3月)
その他行政的観点からの成果
 重点都道府県を中心に各自治体の担当者の協力の下、11地点で「外国人HIV陽性者療養支援セミナー」を開催した。これを通して、各自治体におけるHIV陽性外国人対応に関するスキルや情報の提供のほか、NGOをふくめた連携強化が出来た。
その他のインパクト
 平成21年度日本エイズ学会学術集会におけるJose Araujo Lima Filho氏と連携した下記シンポジウムの開催等を行った。
【サテライトシンポジウム9】在日外国人の生存権と治療アクセス 座長:仲尾唯治・沢田貴志 シンポジスト:川田薫・鍵谷智・アラウージョ リマ フーリョ(2009年11月28日)

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
20件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
9件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
17件
その他成果(普及・啓発活動)
13件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
2015-07-03