AZT誘発ミトコンドリア機能障害に対する分子治療方法の開発

文献情報

文献番号
200932004A
報告書区分
総括
研究課題名
AZT誘発ミトコンドリア機能障害に対する分子治療方法の開発
課題番号
H19-エイズ・一般-004
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 岳哉(東北大学 大学院医学系研究科生体機能学講座分子薬理学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 柳澤 輝行(東北大学 大学院医学系研究科生体機能学講座分子薬理学分野 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
1,190,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
アジドチミジン(AZT)の代謝物が誘発するミトコンドリア機能障害分子機構解析から、AZT代謝物が傷害する分子(群)を同定し、さらにAZT誘発ミトコンドリア機能不全症を防ぐ治療薬の開発を目指す。
研究方法
チミジル酸キナーゼ(Tmpk)遺伝子導入したラット心筋由来細胞H9c2(以後tmpk)を用いた。これらの細胞を100uM AZTと種々濃度CsA存在下で4日間培養後、ATP量を定量した。AZT代謝物の分子型(AZT1リン酸、2リン酸、3リン酸:AZTMP, AZTDP, AZTTP)による細胞死誘導効果を比較するためにtmpk細胞にさらにヌクレオシド二リン酸キナーゼ(NDK)(AZTDPをAZTTPに変換する過程を触媒する)に対するRNAi効果をもつベクターを導入し、その細胞(以後NDK/RNAi)ではAZTDPが蓄積することを確認した。遺伝子導入していない細胞(以後、親株)、tmpk、NDK/RNAiを用い、200 uM AZT存在下で培養後、残存する細胞の生存率を定量した。
結果と考察
AZT 誘発ミトコンドリア機能障害の結果、細胞ATP量は減少する。今回CsAを用いて、AZT誘発ミトコンドリア機能障害の防止効果を検討した。CsA単独による細胞ATP量低下は、観察されなかった。CsA(-)では、AZTにより細胞ATP量が対照に比して40%低下したのに対し、CsA 0.01 uMでは、それが25%のみであったことから、CsAはAZT誘発ミトコンドリア機能障害による細胞ATP量低下を抑制した。上記3種類の細胞系を用いて、200 uMAZT存在下、2日間培養後、細胞生存率を定量した結果、親株では共存するAZTにより細胞生存率が対照に比して12%、tmpkでは、41%、NDK/RNAiでは53%、それぞれ細胞の生存率が低下した。これらの結果は、AZTDPがAZTTPよりも高い細胞毒性を示すことを示唆する。従来AZT誘発ミトコンドリア機能障害の原因は、AZTMPであると考えられていたが、今回の検討結果は、それとは異なる結果を示唆する。
結論
今回の検討結果から、AZT誘発ミトコンドリア機能障害を低濃度のCsAが抑制できることを明らかとした。今後、これらの検討結果を基にしてNRTI誘発心筋ミオパチーの詳細な分子機構の検討および、その研究成果に基づく治療方法の開発を進めていく。

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2011-02-16
更新日
-

文献情報

文献番号
200932004B
報告書区分
総合
研究課題名
AZT誘発ミトコンドリア機能障害に対する分子治療方法の開発
課題番号
H19-エイズ・一般-004
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 岳哉(東北大学 大学院医学系研究科生体機能学講座分子薬理学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 柳澤 輝行(東北大学 大学院医学系研究科生態機能学講座分子薬理学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
アジドチミジン(AZT)の代謝物が誘発するミトコンドリア機能障害分子機構解析から、AZT代謝物が傷害する分子(群)を同定し、さらにAZT誘発ミトコンドリア機能不全症を防ぐ治療薬の開発を目指す。
研究方法
ラット心筋由来培養細胞(以後親株)にAZT代謝に関与するチミジル酸キナーゼ(Tmpk)遺伝子導入した(以後tmpk)を用いた。細胞をAZT(0.1 uM-1 mM)存在下で4日間培養後、ATP量を定量した。また、1 mM AZT存在下で培養2日間培養後、ミトコンドリア内膜膜電位およびアポトーシス誘導を検討した。さらにAZT誘発ミトコンドリア機能障害を防止する薬剤としてCsAの効果を検討した。
結果と考察
Tmpkは、AZT活性化代謝物(AZT2リン酸と3リン酸:AZTDP, AZTTP)を蓄積し、AZT 誘発ミトコンドリア機能障害の結果、細胞ATP量は減少した。一方親株ではAZT1リン酸(AZTMP)を蓄積したが、ATP減少は、観察されなかった。ミトコンドリア内膜膜電位およびアポトーシス誘導についての検討結果でも同様の結果であった。AZT誘発ミトコンドリア機能障害の分子機構として、ミトコンドリア内膜膜電位低下の減少に着目した。AZTは、mitochondrial permeable transition pore (mPTP)の開口をもたらし、その結果としてミトコンドリア内膜膜電位低下を誘発すると考えた。その開口を防止する可能性のあるシクロスポリンA (CsA)を用いて、その効果を検討した。CsA単独による細胞ATP量低下は、観察されなかった。CsA(-)では、AZTにより細胞ATP量が対照に比して40%低下したのに対し、CsA 0.01 uMでは、それが25%のみであったことから、CsAはmPTP開口によって起きるAZT誘発ミトコンドリア機能障害を防ぐ効果を持つことが明らかとなった。
結論
従来AZT誘発ミトコンドリア機能障害の原因は、AZTMPであると考えられていたが、これらの研究結果からAZTDPとAZTTPが、AZTMPよりも強い細胞毒性を持つことを示唆する。今回の検討結果から、AZT誘発ミトコンドリア機能障害を低濃度のCsAが抑制できることを明らかとした。今後、これらの検討結果を基にしてNRTI誘発心筋ミオパチーの詳細な分子機構の検討および、その研究成果に基づく治療方法の開発を進めていく。

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200932004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
従来AZT誘発ミトコンドリア機能障害の原因は、AZT代謝物のうち、AZT1リン酸(AZTMP)であると考えられていたが、本研究結果から、活性化代謝物であるAZT2リン酸(AZTDP)とAZT3リン酸(AZTTP)が、AZTMPよりもより強い細胞毒性を持つという知見を得た。
臨床的観点からの成果
AIDS・HIV感染患者の治療に用いられるHAARTは、長期にわたる薬物投与を必要とする。AZTは、心筋ミオパチーを誘発するため、その使用に注意を要したが、その原因は不明であった。本研究により、その原因がAZT代謝物の中でも、活性化体(AZTDP, AZTTP)であることが明らかとなった。また、AZT誘発ミトコンドリア機能障害を低濃度のシクロスポリンが有効に防止するということを見いだした。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
特になし
その他のインパクト
平成21年3月16日から18日に横浜(パシフィコ横浜)にて開催された第82回日本薬理学会年会にてシンポジウムを開催した。タイトルは、「エイズに対する新規治療薬の先端研究」であり、主任研究者を含む4名の講演者で2時間のシンポジウムを開催した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
5件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
20件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-