HAART時代の長期予後を脅かす治療抵抗性エイズリンパ腫に対する多面的治療戦略開発に関する研究

文献情報

文献番号
200932003A
報告書区分
総括
研究課題名
HAART時代の長期予後を脅かす治療抵抗性エイズリンパ腫に対する多面的治療戦略開発に関する研究
課題番号
H19-エイズ・一般-003
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
岡田 誠治(熊本大学 エイズ学研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 渡邉 俊樹(東京大学大学院 新領域創成科学研究科メディカルゲノム専攻)
  • 味澤 篤(東京都立駒込病院 感染症科)
  • 永井 宏和(国立病院機構名古屋医療センター 臨床研究センター)
  • 藤原 成悦(国立成育医療センター研究所 母児感染研究部)
  • 照井 康仁 (癌研究会癌研有明病院 血液腫瘍科)
  • 駒野 淳(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
  • 田沼 順子(国立国際医療センター戸山病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
13,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HAART導入後エイズが慢性疾患化した現在、エイズリンパ腫はエイズ患者の長期予後を規定する最重要因子のひとつとなった。エイズリンパ腫は難治性・再発性であり、未だ標準的治療法は確立していない。本研究では、エイズと悪性リンパ腫治療の最前線に立つエイズ治療専門医・血液腫瘍専門医と基礎研究者が有機的に提携し、日本人に最適化されたエイズリンパ腫の治療法確立と新規治療薬の開発を目的に多面的治療戦略を展開する。
研究方法
研究は、相互に関連のある3本の柱を軸に展開する。
柱1 日本人悪性リンパ腫治療最適化プログラムと新規サルベージ療法開発に関する研究:日本におけるエイズリンパ腫の発生状況と治療状況を把握し、日本人に最適化された標準的治療法の策定・普及を図る。標準的プロトコールを作成して、全国規模多施設共同臨床試験を行う。
柱2 エイズリンパ腫の分子病態解析:新規治療法開発を目指して、日本人エイズリンパ腫の分子生物学的解析、リンパ腫発生の分子メカニズムおよび化学療法耐性細胞出現の分子機構解明を行う。
柱3 エイズリンパ腫再現マウスモデルの開発と治療法開発への応用:「エイズリンパ腫再現マウスモデル」を樹立し、その分子病態の解析から新たな治療法の開発及び治療法の標準化に資する。
結果と考察
1)「エイズリンパ腫治療の手引き」を作成し、日本エイズ学会誌およびWEB上に公開した。研究成果普及啓発事業、日本エイズ学会のシンポジウム等において、研究成果の公開と普及に努めた。
2)全国規模臨床試験を行うためのワーキンググループを立ち上げ、エイズリンパ腫で最も多いび慢性大細胞性リンパ腫と治療抵抗性リンパ腫の全国規模多施設共同研究を開始した。
3)本邦におけるエイズ関連原発性脳リンパ腫の現状についての調査を行い、その結果を国際誌に発表した。
4)エイズリンパ腫の病態解析に基づき、有効な薬剤を数種類同定した。
5)エイズリンパ腫の保存検体を用いて、miRNA解析を行った。
6)「ヒト化マウス」にEBVを感染させることにより、潜伏感染とリンパ増殖性疾患のモデルを確立した。また、エイズリンパ腫治療モデルを樹立した。
結論
エイズリンパ腫克服に向けて「エイズリンパ腫治療の手引き」を策定し、エイズリンパ腫治療の全国規模多施設共同試験を開始した。また、エイズリンパ腫発症・治療マウスモデルの作成、分子標的療法の有用性についての知見を得るなどの研究の進展が認められた。

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

文献情報

文献番号
200932003B
報告書区分
総合
研究課題名
HAART時代の長期予後を脅かす治療抵抗性エイズリンパ腫に対する多面的治療戦略開発に関する研究
課題番号
H19-エイズ・一般-003
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
岡田 誠治(熊本大学 エイズ学研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 渡邉 俊樹(東京大学大学院新領域創成科学研究科メディカルゲノム専攻)
  • 藤原 成悦(国立成育医療センター研究所 母児感染研究部)
  • 味澤 篤(東京都立駒込病院 感染症科)
  • 照井 康仁(癌研究会癌研有明病院 血液腫瘍科)
  • 永井 宏和(国立病院機構名古屋医療センター 臨床研究センター)
  • 駒野 淳( 国立感染症研究所 エイズ研究センター)
  • 田沼 順子(国立国際医療センター戸山病院 エイズ治療開発研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HAART導入後エイズが慢性疾患化した現在、エイズリンパ腫はエイズ患者の長期予後を規定する最重要因子のひとつとなった。エイズリンパ腫は難治性・再発性であり、未だ標準的治療法は確立していない。本研究では、エイズと悪性リンパ腫治療の最前線に立つエイズ治療専門医・血液腫瘍専門医と基礎研究者が有機的に提携し、エイズリンパ腫の克服を目的として日本人に最適化されたエイズリンパ腫の治療法確立と新規治療薬の開発を軸に多面的治療戦略を展開した。
研究方法
相互に関連のある3本の柱を軸に研究を展開した。
柱1 日本人悪性リンパ腫治療最適化プログラムと新規サルベージ療法開発に関する研究:日本におけるエイズリンパ腫の発生状況と治療状況を把握し、日本人に最適化された標準的治療法の策定と普及を図る。標準的プロトコールを作成して、全国規模多施設共同臨床試験を行う。
柱2 エイズリンパ腫の分子病態解析:新規治療法開発を目指して、日本人エイズリンパ腫の分子生物学的解析、リンパ腫発生の分子メカニズムおよび化学療法耐性細胞出現の分子機構解明を行う。
柱3 エイズリンパ腫再現マウスモデルの開発と治療法開発への応用:「エイズリンパ腫マウスモデル」を樹立し、その分子病態の解析から新たな治療法の開発及び治療法の標準化に資する。
結果と考察
1)エイズリンパ腫の現状について全国調査を行い、その結果を元に「エイズリンパ腫治療の手引き」を作成し、日本エイズ学会誌およびWEB上に公開した。研究成果普及啓発事業、日本エイズ学会シンポジウム等において、研究成果の公開と普及に努めた。
2)エイズリンパ腫臨床試験を行うためのワーキンググループを立ち上げ、エイズリンパ腫で最も多いび慢性大細胞性リンパ腫と治療抵抗性リンパ腫の全国規模多施設共同研究を開始した。
3)本邦におけるエイズ関連原発性脳リンパ腫の現状についての調査を行い、その結果を国際誌に公表した。
4)エイズリンパ腫の病態解析に基づき、有効な薬剤を数種類同定した。
5)エイズリンパ腫の保存検体を用いて、miRNA解析を行った。
6)ヒト化マウス、エイズリンパ腫発症モデル、治療モデルを樹立した。
結論
エイズリンパ腫克服に向けて「エイズリンパ腫治療の手引き」を策定し、エイズリンパ腫治療の全国規模多施設共同試験を開始した。また、エイズリンパ腫発症・治療マウスモデルを樹立、分子標的療法の有用性についての知見を得た。

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200932003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
エイズリンパ腫の病態解析を行い、特にNF-kappaBを標的とした治療が有効であることを培養系とマウスモデルを用いて証明した。また、EBウィルスを用いたエイズリンパ腫の発症モデルマウスを樹立し、エイズリンパ腫発症阻止にはCD8陽性T細胞が重要な働きをすることを示した。更に、高度免疫不全マウスを用いてPrimary effusion lymphoma治療マウスモデルを樹立した。これらのマウスモデルは、今後エイズリンパ腫の病態解析と新たな治療法の開発に有用である。
臨床的観点からの成果
本邦におけるエイズリンパ腫診療と治療の実態調査を行い、その結果を英文誌に公表した(Int J Hematol, 2008: Eur J Hematol, 印刷中)。また、アンケート調査結果を元に「エイズリンパ腫治療の手引き」を策定し、日本エイズ学会誌上に公表した。更に、本邦におけるエイズリンパ腫の標準的治療の確立のために、エイズリンパ腫治療に関する全国規模多施設共同臨床治験を開始した。
ガイドライン等の開発
エイズリンパ腫は難治性・再発性であり、未だ標準的治療法は確立していない。そこで、本邦における標準的治療の確立を目指して「エイズリンパ腫治療の手引き」を作成し、日本エイズ学会誌およびWEB上に公開した。研究成果普及啓発事業、日本血液学会教育講演、日本エイズ学会シンポジウム等において、エイズリンパ腫治療の公開と普及に努めた。
その他行政的観点からの成果
該当なし
その他のインパクト
平成21年に東京及び熊本で公開シンポジウム「エイズとエイズリンパ腫治療の最前線」を開催した。

発表件数

原著論文(和文)
8件
原著論文(英文等)
113件
その他論文(和文)
64件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
169件
学会発表(国際学会等)
42件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
5件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
1. Nagai H, Odawara T, Ajisawa A, et al.
Whole brain radiation alone produces favourable outcomes for AIDS-related primary central nervous system lymphoma in the HAART era.
Eur J Haematol  (2010)
原著論文2
2. Nagai H, Iwasaki N, Odawara T, et al.
Actual status of AIDS-related lymphoma management in Japan.
Int J Hematol , 87 (5) , 442-443  (2008)
原著論文3
Hagiwara K, Li Y, Kinoshita T, et al.
Aberrant DNA methylation of the p57KIP2 gene is a sensitive biomarker for detecting minimal residual disease in diffuse large B cell lymphoma.
Leukemia Res. , 34 (1) , 50-54  (2010)
原著論文4
Terasawa T, Lau J, Bardet S, et al.
Fluorine-18-Fluorodeoxyglucose Positron Emission Tomography for Interim Response Assessment of Advanced-Stage Hodgkin’s Lymphoma and DiffuseLarge B-cell Lymphoma: A Systematic Review.
J Clin Oncol , 27 (11) , 1906-1914  (2009)
原著論文5
Towata T, Komizu Y, Suzu S, et al.
Hybrid liposomes inhibit the growth of primary effusion lymphoma in vitro and in vivo.
Leukemia Res  (2010)
原著論文6
Hattori S, Ide K, Nakata H, et al.
Potent activity of a Nucleoside Reverse Transcriptase Inhibitor, 4’-Ethynyl-2-Fluoro-2’-Deoxyadenosine, against HIV-1 infection in a model using human peripheral blood mononuclear cell-transplanted NOD/SCID Janus kinase 3 knockout mice.
Antimicrob Agents Chemother , 53 (9) , 3887-3893  (2009)
原著論文7
Okada S, Harada H, Ito T, et al.
Early development of human hematopoietic and acquired immune systems in NOD/Scid/Jak3null mice intrahepatic engrafted with cord blood-derived CD34+ cells.
Int J Hematol , 88 (5) , 476-482  (2008)
原著論文8
Harada H, Goto Y, Ohno T, et al.
Proliferative activation up-regulates the expression of HIV-1 receptors on NK cells and induces HIV-1 infection of NK cells.
Eur J Immunol , 37 (8) , 2148-2155  (2007)
原著論文9
Hiyoshi M, Suzu S, Yoshidomi Y, et al.
Interaction between Hck and HIV-1 Nef negatively regulates cell surface expression of M-CSF receptor.
Blood , 111 (1) , 52-58  (2008)
原著論文10
Yajima, M., Imadome, K.,Nakagawa, A., et al.
A new humanized mouse model of EBV infection reproducing persistent infection, lymphoproliferative disorder, and cell-mediated and humoral immune responses.
J. Infect. Dis. , 198 , 673-682  (2008)
原著論文11
Imadome K, Shimizu N, Yajima M, et al.
CD40 signaling activated by Epstein-Barr virus promotes cell survival and proliferation in gastric carcinoma-derived human epithelial cells.
Microbes Infect. , 11 , 429-433  (2009)
原著論文12
Yajima, M., Imadome, K., Nakagawa, A., et al.
T-cell-mediated control of Epstein-Barr virus infection in humanized mice.
J Infect Dis. , 200 , 1611-1615  (2009)
原著論文13
Dabaghmanesh N, Matsubara A, Miyake A, et al.
Transient inhibition of NF-kappaB by DHMEQ induces cell death of primary effusion lymphoma without HHV-8 reactivation.
Cancer Sci. , 100 , 737-746  (2009)
原著論文14
Dewan MZ, Tomita M, Katano H, et al.
An HIV protease inhibitor, ritonavir targets the nuclear factor-kappaB and inhibits the tumor growth and infiltration of EBV-positive lymphoblastoid B cells.
Int J Cancer. , 124 , 622-629  (2009)
原著論文15
Miyake A, Dewan MZ, Ishida T, et al.
Induction of apoptosis in Epstein-Barr virus-infected B-lymphocytes by the NF-κB inhibitor DHMEQ.
Microbes Infect , 10 (7) , 748-756  (2008)
原著論文16
Katano H, Ito H, Suzuki Y, et al.
Detection of Merkel cell polyomavirus in Merkel cell carcinoma and Kaposi's sarcoma.
J Med Virol , 81 , 1951-1958  (2009)
原著論文17
Takahashi-Makise N, Suzu S, Hiyoshi M, et al.
Biscoclaurine alkaloid cepharanthine inhibits the growth of primary effusion lymphoma in vitro and in vivo and induces apoptosis via suppression of the NF-kappaB pathway.
Int J Cancer. , 125 , 1464-1467  (2009)
原著論文18
Kariya Y, Hamatake M, Urano E, et al.
A dominant-negative derivative of EBNA1 represses EBNA1-mediated transforming gene expression during the acute phase of Epstein-Barr virus infection independent of rapid loss of viral genome.
Cancer Sci  (2010)
原著論文19
Towata T, Komizu Y, Suzu S, et al.
Highly selective fusion and accumulation of Hybrid Liposomes into Primary Effusion Lymphoma Cells along with induction of apoptosis.
Biochem Biophys Res Comm , 393 (3) , 445-448  (2010)

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-