希少がんおよび小児がんの臨床試験・治験等に関する医療従事者と患者の情報リテラシーの向上に資する研究

文献情報

文献番号
202307048A
報告書区分
総括
研究課題名
希少がんおよび小児がんの臨床試験・治験等に関する医療従事者と患者の情報リテラシーの向上に資する研究
課題番号
23EA1039
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
大熊 ひとみ(国立研究開発法人 国立がん研究センター 中央病院)
研究分担者(所属機関)
  • 米盛 勧(国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院)
  • 下井 辰徳(国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院)
  • 荒川 歩(国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院)
  • 小川 千登世(国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院)
  • 一村 昌彦(国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
6,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、希少がん、小児がんの臨床試験・治験等に関してより有効な情報発信方法を提案することである。
患者数が多い肺がん等(メジャーがん)と比較して希少がん・小児がんでは、診療上・治療開発上の課題が多い。国立がん研究センター中央病院では、希少がんの開発を推進基盤として産学民共同基盤であるMASTER KEYプロジェクトを2017年に立ちあげ、治療開発に着目して治験等多くの臨床試験を実施してきた。
小児がん領域では、小児患者への一定の安全性データを有する適応外薬あるいは未承認薬の安全性及び有効性の評価と、薬剤到達患者を増やす目的とした臨床研究を準備している。
 現状、治験実施施設以外の医療機関では治験の情報の周知が乏しく治験実施施設への紹介をする場合であっても、臓器障害・病状の悪化により治験へ参加できない全身状態である患者紹介事例が存在する。こういった状況に対して、より多くの方々に正しいタイムリーな情報を共有し、臨床試験に対する医療従事者のリテラシーをあげることで、適切な患者を適切なタイミングで臨床試験に参加してもらえるスキームが必要である。
本研究では、これらの医療従事者を巻き込んだ適切な情報の授受の開発によって臨床試験への患者参加促進を目指す。
研究方法
まずは医療従事者の臨床試験における情報リテラシーの実態把握・課題抽出を各種調査のもと行う。調査には、これまでのがんセンター中央病院への紹介患者の実態と臨床試験参加割合の調査、治験に関わるキーパーソンへのヒアリング、紹介元の医療従事者へのアンケート調査が含まれる。さらに海外の動向を調査する。
これらの課題を整理し、適切な情報発信方法の提案並びに実際に発信していくことを実施する。情報発信先は臨床試験・治験をさほど実施していないが紹介が多い施設の医療従事者(医師、看護師、CRC等)をはじめ、幅広い施設へのアプローチとし、具体的な介入としては臨床試験リテラシー向上に向けたセミナー、シンポジウム、研修導入、資材作成、施設訪問でのレクチャーの提供である。これらの介入を受けた前後で、アンケート調査等でのリテラシーの度合を比較する。
結果と考察
研究結果:令和5年度は、国内の課題抽出と整理ならびに医療従事者の情報リテラシーの実態把握方法の準備に主眼を置いた。まず、院内の治験に関わるキーパーソン(腫瘍内科医師、小児科医師、看護師(CRC含む))を対象に現状の課題抽出を行い、課題と原因を整理した。当院腫瘍内科を中心に、2023年度中に紹介された初診患者のカルテ情報を介して治験目的の紹介数や治験参加到達率などの調査結果を得た。また、海外の国としての政策を調査し、英国の新しいHealth and Care Act 2022について英国出身の治験管理担当者を招いてレクチャーが行われた。英国のでは医師のみでなく看護師等の医療従事者への教育に注力していることが分かった。またWHO主催のAsian-pacific regionにおける臨床研究専門家会合に出席し、グローバル目線での臨床試験の推進方法を議論した。
適切な臨床試験情報のスキームを導入するにあたって、導入前後での情報リテラシーを比較するためのアンケート調査の準備を行った。また、患者会とともに実施予定シンポジウム(NCCHとRare Cancer Japan患者団体の共催イベント)の準備を行った。
今年度中の具体的な臨床試験情報の発信方法として、紹介の多い他施設へ訪問し、臨床試験情報を直接レクチャーするとともに、他施設からの医師の研修受け入れを行い、臨床試験の実施・患者マネジメントなどに関する講義と議論・助言を行った。小児がん研究グループとの連携のもと、「臨床試験」をテーマに若手向けのWEB勉強会を行った。

考察:国内においては如何に効率的かつ効果的に臨床試験を促進させていけるかが課題であり難題である。特に希少がん・小児がんにおいては臨床開発が進まない状況があり、十分であるとともに、各施設の医療従事者の適切な患者紹介を行うためのリテラシー向上も必要であることがわかり、医師のみでなく看護師等の医療従事者を巻き込んだ介入が必要であることを実感した。
また、実際に施設へ訪問し、臨床試験情報を直接レクチャーするとともに、他施設からの医師の研修受け入れを行い、臨床試験の実施・患者マネジメントなどに関する講義と議論・助言といった行動を通して、臨床試験・治験になじみのない医師からのフィードバックと情報発信・介入の必要性が明らかになった。
結論
国内の臨床試験・治験に対する医療従事者の現状把握とともに、治験非実施施設の医療従事者へのリテラシー向上に向けた介入の提案が始まった。臨床試験に関する適切な情報発信とリテラシー向上に向けた教育が本研究で提供できれば効率的かつ効果的な臨床試験患者の参加を促進できると考える。

公開日・更新日

公開日
2024-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-06-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202307048Z