文献情報
文献番号
202307037A
報告書区分
総括
研究課題名
がん患者の自殺予防プログラムの開発とその実装に向けた教育研修に関する研究
課題番号
23EA1028
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
藤森 麻衣子(国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策研究所 サバイバーシップ研究部支持・緩和・心のケア研究室)
研究分担者(所属機関)
- 内富 庸介(国立がん研究センター がん対策研究所サバイバーシップ研究部)
- 明智 龍男(公立大学法人名古屋市立大学 大学院医学研究科 精神・認知・行動医学分野)
- 吉本 世一(独立行政法人国立がん研究センター中央病院頭頸部腫瘍科)
- 松村 由美(京都大学医学部附属病院 医療安全管理部)
- 桜井 なおみ(キャンサー・ソリューションズ株式会社)
- 稲垣 正俊(国立大学法人島根大学 医学部精神医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
9,231,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
実証的ながん患者の自殺予防対策の実現を目指し、がん患者の自殺リスク因子を含む実態の分析、医療機関におけるハイリスク集団への自殺予防プログラムの開発、医療従事者に対する教育研修プログラムの開発の3点を目的とする。
R4革新自殺藤森班において実施されている全国がん登録情報を用いた自殺の実数モニタリングを継続することに加え、本研究ではリスク因子を含む実態調査を行う。医療の質・安全学会会員を対象とした院内自殺対策に関する調査、自殺対策に関する国内外論文や取り組みの資料収集及びレビュー、医療従事者を対象とした面接調査を実施し、臨床実装可能な自殺予防介入法素案、介入法マニュアルを作成する。作成された介入法をマニュアルに基づき医療従事者が実施スキルを習得することを目的に教育研修プログラムを開発する。
R4革新自殺藤森班において実施されている全国がん登録情報を用いた自殺の実数モニタリングを継続することに加え、本研究ではリスク因子を含む実態調査を行う。医療の質・安全学会会員を対象とした院内自殺対策に関する調査、自殺対策に関する国内外論文や取り組みの資料収集及びレビュー、医療従事者を対象とした面接調査を実施し、臨床実装可能な自殺予防介入法素案、介入法マニュアルを作成する。作成された介入法をマニュアルに基づき医療従事者が実施スキルを習得することを目的に教育研修プログラムを開発する。
研究方法
研究1リスク因子を含む実態分析
国立がん研究センター中央病院頭頸部外科に通院している頭頸部がん患者を対象とし、前向きコホート研究を行った。調査時期は初診後、治療前、初回治療終了後、治療6か月後、12か月後とした。
研究2ハイリスク集団への予防介入法開発
研究 2-1「医療安全の視点に基づく病院内での自殺対策:全国実態調査」では、2023年2月に医療の質・安全学会の会員(3,321名)を対象にオンライン質問紙調査を実施した。
研究2-2「国内外論文や取り組みに関する資料収集およびレビュー」では、航空業界におけるPilot Peer Support Programについてヒアリングを実施した。このプログラムは精神的なウェルビーイングやストレスの問題を抱えるパイロット自身、家族、同僚が秘匿環境下で支援を受けることができる仕組みであった。プログラムの中心的な役割を担うのは同じパイロット仲間であるピア(同僚)であること、会社とは独立した組織としてサポートすること、構成メンバーによるサポートと利用状況について情報共有し、意見交換を行った。また、2023年4~5月にがん診療を行っている病院に対して、スノーボールサンプリング方法にて自殺対策マニュアル・フロー図を収集した。
研究2-3「がん診療連携拠点病院の自殺対策マニュアル・フロー検討」では、研究2-2で収集した自殺対策マニュアル・フロー図をテキスト化し、記載内容を明らかにするために自然言語処理の手法であるトピック分析を用いて、自殺対策マニュル・フロー図の主要なテーマを推定した。解析の結果20トピックを抽出した。
国立がん研究センター中央病院頭頸部外科に通院している頭頸部がん患者を対象とし、前向きコホート研究を行った。調査時期は初診後、治療前、初回治療終了後、治療6か月後、12か月後とした。
研究2ハイリスク集団への予防介入法開発
研究 2-1「医療安全の視点に基づく病院内での自殺対策:全国実態調査」では、2023年2月に医療の質・安全学会の会員(3,321名)を対象にオンライン質問紙調査を実施した。
研究2-2「国内外論文や取り組みに関する資料収集およびレビュー」では、航空業界におけるPilot Peer Support Programについてヒアリングを実施した。このプログラムは精神的なウェルビーイングやストレスの問題を抱えるパイロット自身、家族、同僚が秘匿環境下で支援を受けることができる仕組みであった。プログラムの中心的な役割を担うのは同じパイロット仲間であるピア(同僚)であること、会社とは独立した組織としてサポートすること、構成メンバーによるサポートと利用状況について情報共有し、意見交換を行った。また、2023年4~5月にがん診療を行っている病院に対して、スノーボールサンプリング方法にて自殺対策マニュアル・フロー図を収集した。
研究2-3「がん診療連携拠点病院の自殺対策マニュアル・フロー検討」では、研究2-2で収集した自殺対策マニュアル・フロー図をテキスト化し、記載内容を明らかにするために自然言語処理の手法であるトピック分析を用いて、自殺対策マニュル・フロー図の主要なテーマを推定した。解析の結果20トピックを抽出した。
結果と考察
研究1リスク因子を含む実態分析
2022年2月~2022年11月に頭頚部外科初診・初療の成人患者224例が登録され、2023年12月までに全てのフォローアップ調査(アンケート調査及びインタビュー調査)を完了した。T4調査終了後、2024年2月までにデータ固定が終了した。プライマリエンドポイントである希死念慮1年有症率は14/215(6.5%)であった。
研究2ハイリスク集団への予防介入法開発
研究 2-1では、回答数は280で、患者の自殺経験あり55%、患者の自殺未遂経験あり53%、患者の自殺を心配した経験あり63%であった。自殺対策に関連する研修会に参加したことがある回答者の割合は、患者の自殺経験あり群41%、患者の自殺経験なし群20%であった。がん診療連携拠点病院の安全管理部門職員の回答によると、院内自殺対策マニュアルあり81施設、なし27施設であり、がん診療連携拠点病院要件が改正された2022年8月1日以降に新たに院内作成された施設が18施設あった。
研究2-2、研究2-3の内容から、概説、一次予防(通常時、危機介入前の対策)、二次予防(危機介入のための対策)、三次予防(事故発生後に実施すべき対策)、体制に分類した結果、概説2トピック、一次予防に関連する内容9トピック、二次予防に関連する内容8トピックが、三次予防に関連する内容10トピック、体制に関連する内容3トピックであった。
2022年2月~2022年11月に頭頚部外科初診・初療の成人患者224例が登録され、2023年12月までに全てのフォローアップ調査(アンケート調査及びインタビュー調査)を完了した。T4調査終了後、2024年2月までにデータ固定が終了した。プライマリエンドポイントである希死念慮1年有症率は14/215(6.5%)であった。
研究2ハイリスク集団への予防介入法開発
研究 2-1では、回答数は280で、患者の自殺経験あり55%、患者の自殺未遂経験あり53%、患者の自殺を心配した経験あり63%であった。自殺対策に関連する研修会に参加したことがある回答者の割合は、患者の自殺経験あり群41%、患者の自殺経験なし群20%であった。がん診療連携拠点病院の安全管理部門職員の回答によると、院内自殺対策マニュアルあり81施設、なし27施設であり、がん診療連携拠点病院要件が改正された2022年8月1日以降に新たに院内作成された施設が18施設あった。
研究2-2、研究2-3の内容から、概説、一次予防(通常時、危機介入前の対策)、二次予防(危機介入のための対策)、三次予防(事故発生後に実施すべき対策)、体制に分類した結果、概説2トピック、一次予防に関連する内容9トピック、二次予防に関連する内容8トピックが、三次予防に関連する内容10トピック、体制に関連する内容3トピックであった。
結論
実効性ある総合自殺対策を立てるためには、個別の事例検討も踏まえた階層的なエビデンスが不十分であるため、本研究により報告される質的分析を含む縦断調査の成果は対策の基礎資料となる。多領域パネルが事例の詳細な検討を含めて自殺の実態やリスクについて分析を行うことによって、自殺ハイリスク集団を対象とした臨床実装可能な予防介入法が提案できる。また、医療従事者に対する教育研修プログラムはデジタル技術を活用して開発し、有用性を評価することで、総合的ながん患者自殺予防対策として提案できる。本研究成果は自殺対策基本法に基づく自殺総合対策大綱の重点的施策である「がん患者、慢性疾患患者等に対する支援」、「遺された人への支援を充実する」への反映も期待される。
公開日・更新日
公開日
2024-05-30
更新日
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