小児がん患者在宅移行の円滑化促進と在宅療養における課題とニーズ把握のための研究

文献情報

文献番号
202307031A
報告書区分
総括
研究課題名
小児がん患者在宅移行の円滑化促進と在宅療養における課題とニーズ把握のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23EA1022
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
大隅 朋生(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 小児がんセンター)
研究分担者(所属機関)
  • 前田 浩利(医療法人財団はるたか会)
  • 紅谷 浩之(オレンジホームケアクリニック)
  • 長 祐子(松川 祐子)(北海道大学病院 小児科)
  • 名古屋 祐子(宮城大学 看護学群)
  • 荒川 ゆうき(埼玉県立小児医療センター 血液・腫瘍科)
  • 荒川 歩(国立がん研究センター 中央病院小児腫瘍科)
  • 湯坐 有希(東京都立小児総合医療センター 血液・腫瘍科)
  • 横須賀 とも子(神奈川県立こども医療センター 血液・腫瘍科)
  • 岩本 彰太郎(三重大学 医学系研究科)
  • 多田羅 竜平(大阪市立総合医療センター緩和医療科)
  • 古賀 友紀(九州大学 医学研究院)
  • 濱田 裕子(第一薬科大学 看護学部)
  • 岡本 康裕(鹿児島大学 学術研究院医歯学域医学系 小児科学分野)
  • 松本 公一(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 小児がんセンター)
  • 余谷 暢之(国立成育医療研究センター総合診療部緩和ケア科)
  • 中村 知夫(国立成育医療研究センタ- 総合診療部 在宅診療科)
  • 西川 英里(筑波大学医学部附属病院 緩和支持治療科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
9,231,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我々の研究班は令和元年度より継続的にがん対策推進総合研究事業の支援を受け小児がん在宅医療の課題に関する検討を行ってきた。本研究では、2つの研究班の調査を発展・継続させるとともに、これまでに得られた在宅移行の障壁に対する解決につながる提案、そして在宅療養の環境改善に着手することを目的とする。
研究方法
結果と考察の項参照
結果と考察
1. 終末期を見据えた小児がんのこどもの退院調整に関するインタビュー調査
本研究では終末期を見据えた小児がん患者の退院調整の特徴と工夫を明らかにすることを目的に、退院調整に関わった経験を有する病院内のスタッフにインタビュー調査を実施した。結果、終末期を見据えた小児がん患者の退院調整の特徴が明らかとなった。このような経験の蓄積と共有が小児がん患者の退院調整システムの構築に繋がっていくことが期待される。
2. 在宅輸血調査
本研究では、①在宅診療所での小児への在宅輸血の実態を調査し、問題点の抽出と改善のための基礎資料作成を行うこと、②在宅輸血を実施している医療機関をデータベース化し、小児がん拠点病院・小児がん連携病院等に提供することで、輸血依存の患者についての地域連携の円滑化のためのツールを提案することを目的として調査研究を実施した。結果、限られた施設ではあるがさまざまな工夫のもと積極的に小児在宅輸血が行われていることが明らかとなった。また、終末期小児がん患者にとって在宅輸血が療養の選択肢を拡げるという意見が多かった。一方で在宅輸血時の副反応対応を含め、地域医療連携体制強化や輸血指針の確率を求める声も多かった。
3. 社会資源の情報共有に関する検討
我々は前大隅班において在宅医療で利用可能な資源を説明するためのパンフレット(成人用・小児用)を作成した。本研究では、パンフレットを実際に運用・普及していくための啓蒙活動(学会発表、セミナー)を実施した。
4. 治癒困難な小児がんの子どもと家族の在宅療養における心理社会的課題の認識に関する横断研究
もともと本研究では近年、社会的なムーブメントとなりつつあるこどもホスピスに関する実態調査を検討していた。しかし、こども家庭庁主導の研究の動きが並行して行われていることが明らかになったため、本研究ではリサーチクエスチョンについて一から議論を行なった。結果、本研究では、治癒困難な小児がんの子どもと家族の心理社会的課題を明らかにすることをテーマとすることにした。方法としては、在宅療養の経験のある治癒困難な小児がんの患児の家族と、それに関わる医療・教育・福祉関係者を対象とした、半構造化インタビューを行い、テーマティックアナリシスを行うこととした。次年度以降研究を開始する予定である。
5. 在宅死亡後の病理解剖
本研究では、埼玉県立小児医療センターを中止に、首都圏において、在宅看取り、病院での病理解剖の流れに関するモデルを作るための研究を開始した。本研究ではその在宅看取り後の病理解剖の研究を実際に行ない、ケースでの経験をもとに普及していくための知見の蓄積を目指す。
6. こどもの意思決定支援
本研究では、こどもの意思決定支援をテーマとしたセミナーを開催していく。それにより、こどもの意思決定支援」を考える土壌を広く構築することをめざしていく。2023年度はセミナーの準備をすすめた。
7. 成人の在宅医療との連携促進
全国的に終末期の小児がん患者家族に療養場所の選択肢を提供するためには、主に成人を対象としている在宅医療機関が小児がんにも対応できるような体制整備が求められる。そこで小児がん在宅医療に興味はあるが、経験と知識がない成人在宅医に重点的に情報提供していくことが効果的であると考え、この取り組みを行うこととした。
本研究では選定した地域の在宅医療機関と小児がん診療施設をセットでレクチャーを行なっていく。本研究により、各地域で小児がん在宅医療の中心的な役割を担う施設が増えていくことで、大隅班全体の目標である終末期の小児がん患者と家族が療養場所の選択肢をもつことにつながると考える。また、副次的には小児がん在宅医療実施施設のネットワークが拡がっていくことで、情報交換などがスムーズとなり、医療の質の担保、向上に寄与していくと考えている。
8. 遺族調査
2023年度は方法に関する議論を行った。2024年度に本格的に着手していく予定である。
結論
本研究により、小児がん在宅移行に関する地方格差が小さくなり、我が国全体で終末期小児がん患者と家族が公平に療養場所を選択できるようになる。本研究を通じて、小児がんという希少疾患の終末期に対する在宅医療提供のモデルが構築され、我が国の在宅医療の発展普及に貢献するだけでなく、ライフステージに応じた適切な医療の提供につながることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2024-05-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-05-29
更新日
2024-08-02

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202307031Z