がん患者の療養場所に関する意思決定プロセス、および、療養場所における医療・緩和ケアの実態、提供体制と質に関する多面的評価研究

文献情報

文献番号
202307030A
報告書区分
総括
研究課題名
がん患者の療養場所に関する意思決定プロセス、および、療養場所における医療・緩和ケアの実態、提供体制と質に関する多面的評価研究
課題番号
23EA1021
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
浜野 淳(国立大学法人 筑波大学 医学医療系)
研究分担者(所属機関)
  • 宮下 光令(国立大学法人東北大学 大学院医学系研究科保健学専攻緩和ケア看護学分野)
  • 中澤 葉宇子(国立がん研究センター がん対策研究所)
  • 品田 雄市(東京医科大学 八王子医療センター 総合相談・支援センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
7,847,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がん患者の療養場所に関する意思決定プロセスや、拠点病院等以外や療養場所における治療や緩和ケアの提供体制や質を把握し、これらに関する継続可能な調査手法を明らかにすること
研究方法
Ⅰ. NDB、死亡個票による死亡場所の実態把握
NDB(2016年~2018年度)、および死亡個票の死亡施設情報(2018年、約37万件)、病院情報を用いて、病床数や病院機能別に、がん患者の死亡数を把握する研究を開始する。

Ⅱ. 療養場所に関する意思決定プロセスの実態把握
 拠点病院において、療養場所に関して、いつ、誰が、どのような話し合いを患者・家族と行い、実際の療養場所を決定しているかを明らかにするコホート研究を開始する。研究対象は、抗がん剤治療を受けている進行がん患者20名とし、療養場所に関する話し合いの時期、話し合いの内容などを調査する。そして、療養場所の意思決定プロセスに関わ

る医療ソーシャルワーカーの関わりを明らかにするための先行研究調査やインタビュー調査を行う。また、小児がん患者における療養場所の実態や、意思決定プロセスのいといて、こども本人が望む医療者との話し合いの在り方について明らかにするための先行研究調査や専門家による討議を行う。

Ⅲ. 終末期がん患者の医療、緩和ケアの実態把握
 NDB(2016年~2018年度)を用いて、終末期がん患者に行われた医療(抗がん剤治療、集中治療など)、緩和ケア(医療用麻薬使用、鎮静など)を調査し、関連する病床数や病院機能などを探索する研究を行う。

Ⅳ. 緩和ケアの質評価
 2019年度に行ったがん患者遺族を対象とした調査結果から、緩和ケアの質に関連する病床数や病院機能などを探索する研究を行う。また、療養場所に関する意思決定プロセスに関する調査から、次年度以降に行う遺族調査にて、療養場所に関する話し合いの時期や話し合いの内容等に関する遺族の評価を取得するための調査項目を検討する。
結果と考察
NDB、死亡個票による死亡場所の実態把握を目的とした分担研究において、2018年に非拠点病院で亡くなったがん患者は、211,776名(70.0%)、緩和ケア専門スタッフが全くいない病院で亡くなったがん患者は、98,928名(32.7%)であり、がん患者の多くが、100-499床規模の専門医のいない非拠点病院で亡くなっていたことが明らかになった。また、療養場所に関する意思決定プロセスの実態把握を目的とした研究では、がん患者の療養場所や転院に関する話し合いの時期や話し合いの内容を明らかにする医療者を対象としたインタビュー調査と、療養場所や転院に関する成人がん患者・医療者間の話し合いの実態と改善の必要性に関する質問紙調査それぞれの計画立案を行い、倫理委員会で承認を得た。そして、終末期がん患者の医療、緩和ケアの実態把握を目的とした研究では、レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)サンプリングデータを入手し、緩和ケアの質評価を目的とした研究では、拠点病院と比較し非拠点病院で死亡したがん患者は年齢が高く、ADLの低下や認知症の併存が認められることが明らかとなった。また、拠点病院ではより症状が重く、緩和ケアの質は、拠点病院と非拠点病院の間で大きな違いは見られないことが分かった。また、治療を受けているこどもたち自身が、意思決定プロセスにおいて医療者とどのような話し合いを望んでいるかについては明らかになっていないことが分かった。
結論
本年度は、NDB、死亡個票による死亡場所の実態把握と、緩和ケアの質評価において、本研究班の今後の研究の基盤となるデータを得ることができた。また、療養場所に関する意思決定プロセスの実態を把握するための研究計画の立案、および倫理委員会での承認を得た。そして、終末期がん患者の医療、緩和ケアの実態把握に用いるNDBサンプリングデータを入手することができたため、計画通りに研究を開始することができた。

公開日・更新日

公開日
2024-06-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202307030Z