地域における効率的・効果的な緩和ケア専門家へのコンサルテーション体制整備のための研究

文献情報

文献番号
202307029A
報告書区分
総括
研究課題名
地域における効率的・効果的な緩和ケア専門家へのコンサルテーション体制整備のための研究
課題番号
23EA1020
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
木澤 義之(国立大学法人 筑波大学 医学医療系)
研究分担者(所属機関)
  • 吉内 一浩(東京大学 医学部附属病院)
  • 荒尾 晴惠(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 中澤 葉宇子(国立がん研究センター がん対策研究所)
  • 余谷 暢之(国立成育医療研究センター総合診療部緩和ケア科)
  • 浜野 淳(国立大学法人 筑波大学 医学医療系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
9,232,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、現在拠点病院以外に在籍するなど緩和ケア専門家に相談することが難しいがん診療を行う医療従事者等の緩和ケアに関する相談ニーズを把握した上で、がん患者の苦痛の緩和について、各地域の緩和ケアの専門家に相談できる実装可能な体制のモデルを作成し、その有効性の評価を行うことである。
研究方法
以下の研究方法を取った。1)地域において質の高い緩和ケアを提供するための方略についてのスコーピングレビュー:系統的文献検索と批判的吟味、2)医師のコンサルテーションニーズ:半構造化インタビューとその質的分析、3)緩和ケア専門家がいない環境で勤務している医師の緩和ケアに関するコンサルテーションニーズに関する質問紙調査:郵送法の質問紙調査、4)将来のわが国の緩和ケアをどうデザインするかを考えるためのワークショップ:専門家討議、5)精神・心理的苦痛緩和に関するコンサルテーションモデルの開発:専門家討議と情報整理、6)小児科医の緩和ケアコンサルテーションニーズの調査:郵送法を用いた質問紙調査、インタビュー調査とその質的分析。7)薬剤関連ニーズに対するコンサルテーションモデルの開発:半構造化インタビュー調査とその質的分析。
結果と考察
C.研究結果
 1)スコーピングレビュー:「緩和ケア介入の標準化」、「ジェネラリストへの教育支援」、「コンサルテーション体制の整備」、「地域リソースの明確化と連携強化」、「専門的緩和ケアが必要な患者の同定支援」の5つの方略が明らかとなった。
2)医師のコンサルテーションニーズは以下の7つに集約された;「専門家の臨床知(薬剤選択の判断やコツなど)」;「複雑性の高い症例」;「倫理的課題」;「包括的ケアの提供(自施設の緩和ケア提供のあり方)」;「緩和ケアの提供体制(自施設の緩和ケア提供のあり方)」;「専門家からの保証・承認(自身が提供する緩和ケアへのフィードバックを得る)」;「自己成長に繋がる知識提供(対象者自身が緩和ケアに向き合う姿勢やスキルを高める)」。
3)緩和ケア専門家がいない環境で勤務している医師の緩和ケアに関するコンサルテーションニーズに関する質問紙調査を3409名の医師を対象として実施した。回答者の半数以上が苦痛緩和に対する支援が得られないと回答し、専門家に相談したいこととして頻度の高いものは、薬剤選択や使用法、難治性症状の対応、神経ブロックや放射線の適応、AYA世代の患者への対応、が挙げられた。
4)将来のわが国の緩和ケアをどうデザインするかを考えるためのワークショップを実施し以下の課題が明らかになった;「緩和ケアの専門家がどこにいるのかが明示されていない」;「緩和ケアの専門家に何ができるのか、が明示されていない」;「在宅や有料老人ホームで提供される緩和ケアの質は玉石混交(標準化されていない、施設によっては麻薬も扱えない」;「地域緩和ケアコンサルテーションの仕組みがない」;「患者がそのニーズの複雑さによってトリアージされていない(緩和ケア病棟が適切に使用されない)。
5)精神・心理的苦痛緩和に関するコンサルテーションモデルの開発:日本サイコオンコロジー学会が認定している登録精神腫瘍医を都道府県ごとに整理し、また、各登録精神腫瘍医ごとに、情報を掲載するようホームページの再構成を行なった。
6)小児科医の緩和ケアコンサルテーションニーズの調査:小児がん拠点病院と小児専門施設における小児緩和ケアチームの実態調査を行うための研究計画を立案し、倫理審査委員会で承認を得た。
7)薬剤関連ニーズに対するコンサルテーションモデルの開発:医療従事者及び患者又はその家族を対象に、薬局薬剤師に対する緩和ケアに関する相談ニーズを明らかにするためのインタビュー調査を計画し、現在研究計画を倫理審査委員会に付議中である。

D. 考察
 本年度の研究結果より、地域の医師は、複雑性の高い事例への対応(薬剤選択や使用法、難治性症状の対応、神経ブロックや放射線の適応、AYA世代の患者への対応)、倫理的課題、緩和ケアの提供体制、専門家からの保証・承認、自己成長に繋がる知識提供などのニーズがあり、有効性の高い先行事例から考えると、
1)地域の事情に応じて、複雑性の高い事例を相談できる地域コンサルテーションの仕組みづくり(オンライン+オンサイト)、2)専門家が実際に現地に出向いて一般医療従事者がともに診療・ケアを実践できる共同診療型コンサルテーション(コンサルテーション+チュータリング)、3)地域の医療従事者がともに学び会えるような場作りとネットワーキング、の3つの形態で体制整備を行うことが重要と考えられた。
結論
 令和6年度は,本年度実施した研究結果を詳細に解析するとともに、専門家のいない地域で緩和ケアの質をより向上させるための具体的なモデルを作成し、その実施性を検証する予定である。

公開日・更新日

公開日
2024-06-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-06-21
更新日
2024-08-07

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202307029Z