文献情報
文献番号
202307028A
報告書区分
総括
研究課題名
がんのリハビリテーション、およびリンパ浮腫診療の一層の推進に資する研究
課題番号
23EA1019
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
辻 哲也(慶応義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 酒井 良忠(神戸大学大学院医学系研究科 リハビリテーション機能回復学)
- 幸田 剣(和歌山県立医科大学医学部リハビリテーション医学講座)
- 田沼 明(静岡県立静岡がんセンター リハビリテーション科)
- 秋田 新介(千葉大学 医学部附属病院)
- 保田 知生(独立行政法人地域医療機能推進機構 星ヶ丘医療センター 血管外科)
- 高倉 保幸(埼玉医科大学 保健医療学 理学療法学科)
- 井上 順一朗(神戸大学医学部附属病院国際がん医療・研究センター リハビリテーション部門)
- 小林 毅(千葉県立保健医療大学健康科学部)
- 櫻井 卓郎(国立がん研究センター中央病院 骨軟部腫瘍・リハビリテーション科)
- 杉森 紀与(東京医科大学病院 リハビリテーションセンター)
- 阿部 恭子(東京医療保健大学 千葉看護学部)
- 増島 麻里子(千葉大学 大学院看護学研究院)
- 栗原 美穂(厚生労働省 医政局 医療経営支援課)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
8,730,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
がん患者では治療や病状の進行に伴い生活機能に障害を来し生活の質が低下することから、リハビリテーション(以下、リハ)の重要性が指摘されている。これまで医療従事者が研修を受講できる体制の構築や研修プログラムの策定が行われ体制整備を進めてきたが、今後は、がん診療連携拠点病院等の医療機関や外来、在宅医療等においても実施できる体制の構築が求められている。一方、がん治療後に生じるリンパ浮腫については、がんリハの一環として上述の研究班において医療従事者の資質の向上のための研修体制やプログラムの整備がなされてきたが、実際に診療を行っている全国の医療機関に関する情報へのアクセスに課題があることが指摘されている。
本研究では、様々な診療の場面においてがんリハを適切に提供するためのアルゴリズムに基づいた判断支援ツール(Cancer Rehabilitation in Decision Support Algorithm:CARDS)を開発、がん診療連携拠点病院等で有効性を検証し、普及させる体制を提案することを目的とする。また、全国のリンパ浮腫診療について、実態の把握と各地域における診療ネットワークの構築および診療ネットワーク情報をわかりやすい形で公開することを目的とする。
本研究では、様々な診療の場面においてがんリハを適切に提供するためのアルゴリズムに基づいた判断支援ツール(Cancer Rehabilitation in Decision Support Algorithm:CARDS)を開発、がん診療連携拠点病院等で有効性を検証し、普及させる体制を提案することを目的とする。また、全国のリンパ浮腫診療について、実態の把握と各地域における診療ネットワークの構築および診療ネットワーク情報をわかりやすい形で公開することを目的とする。
研究方法
3年間の計画で、がん診療連携拠点病院等の様々な診療の場面においてがんリハを適切に提供するためのアルゴリズムに基づいた判断支援ツール(CARDS)を開発、その有効性をデルファイ法により検証し、CARDSを活用したがんリハの提供体制を提案する。また、全国のリンパ浮腫診療の実施施設にアンケート調査を実施し、診療実態の把握と効果的な診療ネットワークの構築、およびその診療ネットワーク情報を公開する計画である。
研究の全体計画は、以下のとおりである。
がんリハビリテーション
・令和5(2023)年:CARDSの開発
・令和6(2024)年:CARDSの有効性を検証
・令和7(2025)年: CARDSの普及体制の提案
リンパ浮腫
・令和5(2023)年:全国のリンパ浮腫の診療体制について実態調査を実施
・令和6(2024)年:地域における診療ネットワークを構築
・令和7(2025)年:地域における診療ネットワーク情報を公開
研究の全体計画は、以下のとおりである。
がんリハビリテーション
・令和5(2023)年:CARDSの開発
・令和6(2024)年:CARDSの有効性を検証
・令和7(2025)年: CARDSの普及体制の提案
リンパ浮腫
・令和5(2023)年:全国のリンパ浮腫の診療体制について実態調査を実施
・令和6(2024)年:地域における診療ネットワークを構築
・令和7(2025)年:地域における診療ネットワーク情報を公開
結果と考察
R5(2023)年には、がんリハビリテーション・リンパ浮腫診療ネットワークコンソーシアムを組織し、第1回総会を開催した。このコンソーシアムは、がんリハビリテーション・リンパ浮腫診療に関するエキスパートコンセンサスを得るプラットホームとして、関連する学協会推薦の委員、地域医療関連団体、患者団体等が連携して組織された。次に、普及啓発・教育活動として、ホームページを作成し活動状況を随時報告するとともに、がんリハ治療レベル別の動画コンテンツを作成し、リンパ浮腫診療に関する動画コンテンツも作成中である。また、医療者向けのWeb講習会と市民公開講座を開催した。
がんリハ提供のためのアルゴリズムに基づいた判断支援ツール(CARDS)の開発では、システマティックレビューを実施し、リハ治療レベルの定義とレベル別の特性の試案を作成した後、ノミナルメンバー会議を開催してアルゴリズムを完成させた。がんのリハビリテーション診療ガイドライン第3版の策定作業では、日本リハビリテーション医学会診療ガイドライン委員会と協働し、システマティックレビューチームを構成してスコープとClinical Question(CQ)を完成させ、CQ検索式作成を業者に委託した。診療ガイドラインとCARDSアルゴリズムの内容は相互に反映させる予定である。
さらに、全国のリンパ浮腫診療について実態調査を実施するため、アンケート調査票を作成し、千葉大学大学院倫理委員会の承認を得た後、全国がん診療連携拠点病院とリンパ浮腫診療の関連学会会員へのアンケート調査を行った。
研究は交付申請時の計画どおり、遅滞なく実施されている。本研究課題において、がんリハを効果的に実施するためのアルゴリズムに基づいた判断支援ツール(CARDS)が普及しシームレスな提供体制が整備されること、各地域のリンパ浮腫診療ネットワークが構築されリンパ浮腫診療を行う施設の情報が患者や医療従事者に分かりやすい形で公開されることにより、学術的、社会的および経済的メリットが得られる。
がんリハ提供のためのアルゴリズムに基づいた判断支援ツール(CARDS)の開発では、システマティックレビューを実施し、リハ治療レベルの定義とレベル別の特性の試案を作成した後、ノミナルメンバー会議を開催してアルゴリズムを完成させた。がんのリハビリテーション診療ガイドライン第3版の策定作業では、日本リハビリテーション医学会診療ガイドライン委員会と協働し、システマティックレビューチームを構成してスコープとClinical Question(CQ)を完成させ、CQ検索式作成を業者に委託した。診療ガイドラインとCARDSアルゴリズムの内容は相互に反映させる予定である。
さらに、全国のリンパ浮腫診療について実態調査を実施するため、アンケート調査票を作成し、千葉大学大学院倫理委員会の承認を得た後、全国がん診療連携拠点病院とリンパ浮腫診療の関連学会会員へのアンケート調査を行った。
研究は交付申請時の計画どおり、遅滞なく実施されている。本研究課題において、がんリハを効果的に実施するためのアルゴリズムに基づいた判断支援ツール(CARDS)が普及しシームレスな提供体制が整備されること、各地域のリンパ浮腫診療ネットワークが構築されリンパ浮腫診療を行う施設の情報が患者や医療従事者に分かりやすい形で公開されることにより、学術的、社会的および経済的メリットが得られる。
結論
研究は交付申請時の計画どおり、遅滞なく実施されている。がんリハやリンパ浮腫研修のような標準化された研修が全国展開され、がん診療連携拠点病院等で実践されている国は他にはなく、我が国の研修システムは世界最先端であり、本研究は次のステップとして、その体制を在宅医療や外来へ展開するものである。欧米のみならず、今後がんが重要な社会問題となっていくアジア諸国を先導する立場にありその役割は重要である。
公開日・更新日
公開日
2024-05-28
更新日
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