インフルエンザ脳症など重症インフルエンザの発症機序の解明とそれに基づく治療法、予防法の確立に関する研究

文献情報

文献番号
200931043A
報告書区分
総括
研究課題名
インフルエンザ脳症など重症インフルエンザの発症機序の解明とそれに基づく治療法、予防法の確立に関する研究
課題番号
H21-新興・一般-010
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
森島 恒雄(岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 岡部 信彦(国立感染症研究所)
  • 中村 祐輔(東京大学医科学研究所)
  • 河岡 義裕(東京大学医科学研究所)
  • 山口 清次(島根大学医学部)
  • 水口 雅(東京大学大学院医学系研究科)
  • 市山 高志(山口大学大学院医学系研究科)
  • 奥村 彰久(順天堂大学医学部)
  • 長谷川 秀樹(国立感染症研究所)
  • 伊藤 嘉規(名古屋大学医学部附属病院)
  • 河島 尚志(東京医科大学)
  • 新矢 恭子(神戸大学大学院医学研究科)
  • 塚原 宏一(福井大学医学部附属病院)
  • 安井 耕三(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
44,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
インフルエンザ脳症の病態を解明し、治療法・予防法を確立する。また、宿主発症因子の解明と発症前診断法の確立を目指す。今年度は特に2009AH1N1インフルエンザ脳症(以下新型脳症)について研究を進めた。
研究方法
1疫学・臨床像:新型脳症の全国アンケート調査を実施した。 2病態:サイトカイン・ケモカインやフリーラジカルの新型脳症での関与について検討した。3病型:けいれん重積型の予後因子を検討した。4ガイドライン:インフルエンザ脳症ガイドラインを本研究班により改訂した。 5.H5N1:サルを用いた重症肺炎モデルの作成を試みた。6先天代謝異常の関与:先天代謝異常(特に有機酸・脂肪酸代謝異常)の関与について検討した。 7.SNP解析:宿主側の発症因子の解明のためインフルエンザ脳症(季節性)における遺伝子多型の解析を行った。
結果と考察
1臨床像:新型脳症は、中間集計約200例、主に年長児が罹患した。症状は異常言動(熱せん妄)の頻度が高かった。重症例は季節性同様サイトカインによる多臓器不全を発症した。予後は致命率約5%、後遺症約10%であり、季節性に比べてやや軽症。 2病態:病型により増加するサイトカイン・ケモカイン(血中および髄液)に差を認めた。3病型:けいれん重積型脳症の予後不良因子を明らかにした。4ガイドライン:2009年9月、インフルエンザ脳症ガイドラインを改訂した。5.H5N1:サルを用いた重症肺炎モデルを作成でき病理学的検討を進めた。6先天代謝異常の関与:インフルエンザ脳症に比べ、その他の急性脳症で先天代謝異常の疑う所見が多かった。有機酸・脂肪酸代謝異常のみられる頻度は、本症ではその他の脳症に比べて低かった。 7.SNP解析:遺伝子Xの上のSNPについて、新たな症例のDNAサンプルをジェノタイピングし、GWASサンプルおよび追加サンプルを合わせて解析し、p=3.6×10-6、オッズ比=128(95%信頼区間、7.00-2,330)を示した。今後さらに追加調査が必要である。
結論
インフルエンザ脳症について多面的な研究を進めた。特に今年度大きな問題となった新型脳症について疫学・臨床像・病態を初めて明らかにした。また、改訂ガイドラインが新型脳症に広く用いられ、有効であることを確認した。本研究班の目的のひとつである宿主発症因子の解明のため追加症例による解析が進行中である。

公開日・更新日

公開日
2010-07-28
更新日
-