がん登録を利用したがん検診の精度管理方法の検討のための研究

文献情報

文献番号
202307015A
報告書区分
総括
研究課題名
がん登録を利用したがん検診の精度管理方法の検討のための研究
課題番号
23EA1006
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
松坂 方士(国立大学法人弘前大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 松田 智大(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策研究所国際政策研究部)
  • 雑賀 公美子(国立研究開発法人国立がん研究センター社会と健康研究センター国際連携研究部)
  • 高橋 宏和(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策研究所検診研究部検診実施管理研究室)
  • 斎藤 博(青森県立中央病院)
  • 京 哲(島根大学医学部 産科婦人科)
  • 金村 政輝(宮城県立がんセンター研究所 がん疫学・予防研究部)
  • 井口 幹崇(和歌山県立医科大学 消化器内科)
  • 齊藤 英子(国際医療福祉大学三田病院予防医学センタ-)
  • 田中 里奈(弘前大学 大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
6,215,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者 高橋宏和 国立研究開発法人国立がん研究センター・がん対策研究所検診研究部検診実施管理研究室・室長から、同・研究員に役職が変更した。

研究報告書(概要版)

研究目的
 がん検診によってがん死亡率を低下させるためには精度管理が必要であるが、日本ではこのことが徹底されていない。
 精度管理指標の中でも、欧州等では直接的な検査性能の指標として感度・特異度を重要視してきた。しかし、日本ではがん検診受診者情報を集約するための体制が整備されていないために感度・特異度を算出できず、精度管理の大きな障害とされてきた。
 令和3-4年度厚生労働科学研究費補助金「がん登録を利用したがん検診の精度管理方法のための研究」では、全国がん登録を利用して感度を含む精度管理指標を算出し、それによって精度管理を向上させる事業を展開するための研究を実施した。
 さらにこの事業を進展させるためには、以下のような課題があることも明らかになった。
  (1) 精度管理指標から精度管理を向上させるための手法の検討
  (2) 子宮頸がん検診での要精検判定と精度管理の検討
  (3) 感度を含む精度管理指標を適切に情報提供する手法の検討
  (4) 職域がん検診での精度管理への応用の検討
 本研究の目的は、これらの課題を整理し、がん登録情報を利用したがん検診の精度管理をさらに進展させることである。
研究方法
1.がん検診事業の精度管理手法の開発と都道府県および市区町村における精度管理の実施と報告体制の整備
 がん検診事業の精度管理手法を開発し、自治体における精度管理の実施と報告体制の整備を行うこととした。

2.子宮頸がん検診の要精検区分と精度管理の検討
 子宮頸がん検診は、婦人科関連の健診と混同した判定が多いこと、他のがん検診と異なって浸潤がん罹患率の低下が目的であることなどから、特に要精検区分と精度管理の関連を検討する。

3.精度管理指標を適切に情報提供する手法の検討
 精度管理指標やがん検診全体を適切に理解するための情報を提供するために、情報提供の資材を作成し、公表する。

4.職域がん検診での精度管理への応用の検討
 前回の研究班では対策型検診のみを対象としたが、今回は職域がん検診の精度管理での全国がん登録の利用を検討する。
結果と考察
1.がん検診事業の精度管理手法の開発と都道府県および市区町村における精度管理の実施と報告体制の整備
 令和5年度は6都県でがん登録情報を利用したがん検診の精度管理事業(感度・特異度の算出)を実施した。
今後、このような新規に事業を開始する自治体が増加することで、さらに行政上の知見が蓄積するとともに、感度・特異度の許容範囲の設定も可能になると考えられた。

2.子宮頸がん検診の要精検区分と精度管理の検討
 子宮頸がん検診・ベセスダ分類とそれ以外の婦人科関連の健診判定との関係を整理することとした。
全国がん登録データベースシステムは昨年度からシステム障害が連続して発生しているため、モデル地域内での検討ができないため、今年度は研究班内の情報共有、今後の方針の検討のみで終了した。

3.精度管理指標を適切に情報提供する手法の検討
 本研究班はホームページを開設して厚生労働科学研究費補助金「がん検診の利益・不利益等の適切な情報提供の方法の確立に資する研究」班(研究代表者・斎藤博)が作成した資料を引き継いで再構築した。
 今後、一般市民や臨床医などへの効果的な情報提供の形式を検討し、がん検診での「見逃し」をどのように考えるのか等について丁寧な説明を検討する必要がある。

4. 職域がん検診での精度管理への応用の検討
 職域でのがん検診は法律に基づいたものではないため、全国がん登録情報と職域がん検診情報の照合による精度管理は現状では不可能であることが明らかになった。
 今後、どうすれば職域がん検診の情報をがん登録情報と照合できるかについて検討する必要がある。
結論
 がん検診によってがん死亡率を低下させるためには、徹底した精度管理が必須である。本研究はがん検診情報とがん登録情報を照合によって感度・特異度を算出して精度管理を実施する手法を普及させることを目的としている。
 今年度は、全国で算出された感度・特異度を収集して一覧表にして許容範囲の設定に向けた取り組みを開始し、愛媛県や広島県で新規に照合事業を開始する支援を行った。
 ただ、この取り組みでの感度・特異度は「がん検診事業」としての値であり、がん検診が実施する「検査」の値ではない。がん検診の「見逃し」に関する誤解も多く、これらについて一般市民や臨床医などへの効果的な情報提供を検討する必要がある。
 また、現状では職域がん検診情報とがん登録情報の照合は法的に困難である。職域がん検診を効果的なものにするためには照合による精度管理が必要であり、どうすれば職域がん検診の情報をがん登録情報と照合きるかについて、今後検討する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2024-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-05-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202307015Z