食品由来感染症調査における分子疫学手法に関する研究

文献情報

文献番号
200931036A
報告書区分
総括
研究課題名
食品由来感染症調査における分子疫学手法に関する研究
課題番号
H21-新興・一般-003
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
寺嶋 淳(国立感染症研究所 細菌第一部)
研究分担者(所属機関)
  • 清水俊一(北海道立衛生研究所)
  • 甲斐明美(東京健康安全研究センター)
  • 松本昌門(愛知県衛生研究所)
  • 勢戸和子(大阪府立公衆衛生研究所)
  • 中嶋 洋(岡山県環境保健センター)
  • 堀川和美(福岡県保健環境研究所)
  • 渡辺治雄(国立感染症研究所)
  • 片山和彦(国立感染症研究所 ウイルス第2部)
  • 岡智一郎(国立感染症研究所 ウイルス第2部)
  • 染谷雄一(国立感染症研究所 ウイルス第2部)
  • 田中智之(堺市衛生研究所)
  • 三瀬敬治(札幌医科大学・医療人育成センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
48,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品由来感染症の原因病原体となるウイルスや細菌の遺伝学的解析方法について検討し、原因解明のために解析結果を共有して当該感染症の予防や制御に資する情報ネットワークを構築することを目的とする。原因病原体の解析データと疫学情報を含むデータベースをオンラインで利用することにより、食品由来感染症の発生に即応できる情報を提供できる体制を構築する。
研究方法
1) 画像等の解析ソフトウエアであるBioNumerics(BN)及びBN serverを利用し、全国6ブロックの研究分担者がBN server上のデータベースにアクセスして解析できるオンラインシステムを構築する。BNによる解析方法について研修会を実施し、解析基準の標準化を行う。発生事例に応用したPFGEによるデータベース構築を継続し、EHEC O157に対するMLVAやIS法等の利用による解析手法を検討する。2) 近年流行したNoV株の全塩基配列を決定し、ゲノム全長に渡る塩基配列を蓄積する。ウイルスゲノム情報と疫学を連結させて解析するためのカリシウェブを整備する。ノロウイルス(NoV)及びサポウイルス(SaV)の組換えウイルス様粒子(VLPs)の作成から抗体作成を行う。抗体を利用した迅速診断方法としてイムノクロマト(IC)キットの開発を行う。
結果と考察
分離株の解析情報と疫学情報を共有するためのネットワーク、PulseNet Japanの機能強化を目的としてBioNumerics(BN) serverによるオンラインシステムの構築を行った。2009年の腸管出血性大腸菌O157においても、遺伝子型が一致する株が広域から分離されており、今後も継続的な監視活動が必要である。高頻度でNoVゲノムの組換えが起きていることが示唆された。環境水中のSaV検出率向上に有用な新たなRT-PCRも構築した。サポウイルス感染症におけるイムノクロマト迅速診断法の開発を試みた。カリシウイルスの情報共有のためのウェブサイト、カリシウェブのリニューアル作業、システムプレビューから、デザインや使い勝手の改善作業を行った。

結論
食品由来感染症の原因病原体に関する解析情報を共有するシステムとして、細菌感染症起因菌に関してはBN serverを利用したオンラインシステム、NoVやSaVに関してはカリシウェブの構築と改善が開始された。病原体の解析手法として、分子遺伝学的手法に基づいた方法の検討を行いながら、正確な病原体解析情報を蓄積してデータベースを構築してゆくことが今後の課題と考えられる。

公開日・更新日

公開日
2010-07-14
更新日
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