生まれ年度ごとの HPV ワクチン接種状況と子宮頸がん罹患リスクの評価とキャッチアップ接種者に対する子宮頸がん検診の受診勧奨手法の開発

文献情報

文献番号
202307011A
報告書区分
総括
研究課題名
生まれ年度ごとの HPV ワクチン接種状況と子宮頸がん罹患リスクの評価とキャッチアップ接種者に対する子宮頸がん検診の受診勧奨手法の開発
課題番号
23EA1002
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
上田 豊(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科産科学婦人科学)
研究分担者(所属機関)
  • 平井 啓(大阪大学 コミュニケーションデザイン・センター/大学院医学系研究科生体機能補完医学講座/人間科学研究)
  • 中山 富雄(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策研究所 検診研究部)
  • 片山 佳代子(国立大学法人 群馬大学 情報学部)
  • 伊藤 ゆり(大阪医科薬科大学 医学研究支援センター医療統計室)
  • 木村 正(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 八木 麻未(大阪大学大学院医学系研究科産科学婦人科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
今後の本邦における子宮頸がん対策においてHPVワクチンの正確な接種状況の把握は不可欠であるが、接種状況の把握は必ずしも十分とは言えない。また、海外では16歳までの接種で子宮頸がんが劇的に減少することが報告されているが、本邦においては、我々の報告等により前がん病変の予防効果までしか示されておらず、浸潤がんの予防効果を検証する必要がある。さらに、本邦におけるキャッチアップ接種が有効でない可能性も考えられ、キャッチアップ接種者に対する、子宮頸がん検診の受診勧奨手法の強化も求められる。当研究では、これら課題に取り組む。
研究方法
(1)各生まれ年度のHPV ワクチン接種状況の適切な把握
自治体から即時にデータ提供を受けて翌年度には接種状況を把握できる。キャッチアップ接種も区別し、接種状況に応じて10ケースに分類して集計、生まれ年度ごとの接種率等を算出する。
(2)本邦における社会環境による子宮頸がん・前がん病変の罹患状況の変化の把握
(2-1)HPVワクチンの浸潤がん予防効果の検証と全国がん登録を活用したHPVワクチン接種状況による子宮頸がん罹患率の評価
当研究班は各自治体が実施する調査研究、すなわち、1991~2002年度生まれの女性について全国がん登録データを活用した25歳・30歳・35歳までの子宮頸がん累積罹患率および死亡率の解析を学術的に支援し、複数の実施自治体から公開されたデータの統合解析を行う。
(2-2)全国の自治体における20 歳の子宮頸がん検診の経年的観察研究
全国の自治体の協力を得て、20歳・24歳・28歳の住民検診としての子宮頸がん検診結果を経年的に観察する。HPVワクチンについては生まれ年度別に累積接種割合を解析する。
(3)キャッチアップ接種者に対する子宮頸がん検診受診手法の開発
キャッチアップ接種者に対して、インタビュー調査・インターネット調査を行って子宮頸がん検診受診勧奨リーフレットを開発し、その効果検証を自治体で実施する。
結果と考察
(1)各生まれ年度のHPV ワクチン接種状況の適切な把握
積極的勧奨が差し控えられて以降の各年度の小6~高1の累積初回接種割合は、2013年度:3.4%、2014年度:2.9%、2015年度:2.6%、2016年度:2.3%、2017年度:2.1%、2018年度:2.0%、2019年度:2.1%、2020年度:3.1%、2021年度:5.6%、現実的に積極的勧奨が再開した2022年度は8.0%と、定期接種が徐々に再普及し始めたことを初めて具体的な数字で示すことができた。現在、生まれ年度ごとの詳細な接種率を解析するためのデータを自治体から収集している。
(2)本邦における社会環境による子宮頸がん・前がん病変の罹患状況の変化の把握
(2-1)HPVワクチンの浸潤がん予防効果の検証と全国がん登録を活用したHPVワクチン接種状況による子宮頸がん罹患率の評価
全国の自治体と研究実施の打ち合わせをおこなっている。川口市とはプロジェクト開始に向けた学術的支援を開始している。
(2-2)全国の自治体における20 ・24歳・28歳の子宮頸がん検診の経年的観察研究  
2001年度生まれ(HPVワクチン接種率:2.1%)のASC-US以上の細胞診異常率は8.68%と、接種世代(HPVワクチン接種率:59.8~69.6%)の細胞診異常率(3.55~4.14%)より著明に上昇していた。さらに、CIN 1以上の組織診異常率はワクチン導入前世代(1993年度以前生まれ、HPVワクチン接種率:0%)では年々上昇傾向であったが、ワクチン接種世代(1994~1999年度生まれ)では、導入前世代の上昇傾向から予測される率よりも低値であった(1.78~2.35%)。一方、2000年度生まれ(HPVワクチン接種率:10.1%)では2.96%と、接種世代のCIN 1以上の組織診異常率より著明に上昇していた。
(3)キャッチアップ接種者に対する子宮頸がん検診受診勧奨手法の開発
キャッチアップ接種者に対して、子宮頸がん検診受診に関するインタビュー調査およびインターネット調査を実施し、これを踏まえて、キャッチアップ接種者に対する子宮頸がん検診受診勧奨資材としてリーフレットを作成した。群馬県前橋市の協力を得て令和5年度の再勧奨に当リーフレットを送付している。ただし、前橋市での検診受診勧奨に合わせて年度年齢23歳・24歳・25歳で検証を行っている。
結論
各生まれ年度のHPV ワクチン接種状況の適切な把握、本邦における社会環境による子宮頸がん・前がん病変の罹患状況の変化の把握、キャッチアップ接種者に対する子宮頸がん検診受診手法の開発、いずれにおいてもほぼ計画通り進捗しているが、まだ確定的な結果は得られておらず、今後、データ収集と解析を行っていく。

公開日・更新日

公開日
2024-05-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-05-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202307011Z