がん診療連携拠点病院等におけるがん診療の実態把握に係る適切な評価指標の確立に資する研究

文献情報

文献番号
202307007A
報告書区分
総括
研究課題名
がん診療連携拠点病院等におけるがん診療の実態把握に係る適切な評価指標の確立に資する研究
課題番号
22EA1005
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
藤 也寸志(国立病院機構 九州がんセンター )
研究分担者(所属機関)
  • 若尾 文彦(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策研究所 がん対策情報センター本部)
  • 東 尚弘(国立大学法人 東京大学 大学院医学系研究科公衆衛生学分野)
  • 高山 智子(静岡社会健康医学大学院大学 社会健康医学研究科)
  • 前田 英武(高知大学 医学部附属病院)
  • 増田 昌人(琉球大学医学部附属病院第二内科)
  • 津端 由佳里(島根大学医学部内科学講座 呼吸器・臨床腫瘍学)
  • 横川 史穂子(地方独立行政法人 長野市民病院 がんセンター)
  • 小寺 泰弘(国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
8,280,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、がん診療連携拠点病院等(拠点病院)に関するがん診療の実態を継続的に把握・評価できる適切な評価指標の開発・選定を通じて、以下の観点において「がん診療提供体制のあり方に関する検討会」にエビデンスを提出し、次期整備指針の策定や「がん対策推進基本計画(基本計画)」の推進に寄与することを目的とする。
1) 継続的な評価を通じて、拠点病院のがん診療の質向上に役立つ客観的な評価指標を策定する。
2) 策定した指標が、拠点病院が基本計画の目標に向けて機能しているかを評価できる指標になっているかの検証を行う。
研究方法
1. 拠点病院の整備指針をベースとしたロジックモデル(たたき台)の作成  
1) 研究班メンバーによるコンセンサスの形成
2) 全国拠点病院、都道府県がん診療連携協議会、都県行政の現場へのインタビュー調査
3) 拠点病院の活動に関わる厚労科研研究班の研究代表者等へのインタビュー調査
4) 以上の結果をまとめて、ロジックモデルの原案(たたき台)を完成させる。
2.拠点病院へのアンケート調査の計画と実施
1.で整理された指標を含むロジックモデル(たたき台)を提示して、拠点病院の活動実態の評価のために必要な指標や現場が評価を望む活動等について、全国拠点病院を対象としてアンケート調査を行う。
結果と考察
1.拠点病院の整備指針をベースとしたロジックモデル(たたき台)の作成 
1)研究班メンバーによるコンセンサスの形成
研究班メンバー全員での議論により、整備指針の各領域別に、各指定要件とそれらが目指す中間アウトカム・分野別アウトカム(最終アウトカムは、第4期基本計画ロジックモデルと同一)の内容を言語することを図り、各々に必要な評価指標案(たたき台)を策定した。
2)全国拠点病院、都道府県がん診療連携協議会、都県行政への現場へのインタビュー調査
昨年度に引き続き、今年度も各拠点病院等の現場体制や診療実態に係る意見を対面に
よるインタビュー調査で収集し、その結果をロジックモデルに組み入れた。
3)拠点病院の活動に関わる厚労科研・研究班の研究代表者等へのインタビュー調査
がん医療の諸問題(高齢者・AYA世代・小児のがん、希少がん、緩和ケア、ピアサポート、生殖医療・妊孕性温存)に関する研究代表者の意見を収集し、ロジックモデルに組み入れた。
4)以上の結果をまとめて、ロジックモデル(たたき台)を作成
全国の拠点病院の活動の効果を評価するためには、今まで未施行の医療者調査や、既に施行されている患者体験調査の新項目を提案する必要があると考え、中間アウトカムと分野別アウトカムに多くの新たな指標を加えた。
2.拠点病院に対するアンケート調査の計画と実施
ロジックモデル(たたき台)を提示して、拠点病院の活動実態の評価のために必要な指標や現場が評価を望む活動等について、全国拠点病院を対象としてアンケート調査を行った。アンケート調査は、施設各部門の担当者からの回答を求めた。その結果、133の拠点病院から回答を得た。
このアンケート調査では、各領域の中間アウトカム・分野別アウトカムに提示したアウトカムとその内容、さらに提示した指標への意見や新しい指標の提案などを求めた。さらに、各拠点病院の現状を明らかにするためのベンチマーキングに適した指標という観点からも意見を求めた。
本研究の目的は、拠点病院に関するがん診療の実態を継続的に把握・評価できる適切な評価指標を策定することである。拠点病院の活動が大きな比重を占める基本計画の評価のためのロジックモデルにも拠点病院の現況報告が多く取り入れられている。しかし、多くの指標が「各指定要件の達成ための体制整備の有無(はい/いいえ)」の自己申告指標(拠点病院に指定されるためには当然「はい」が100%になるはず)であり、客観的な判断ができない危険性がある。そこで本研究班では、より拠点病院に特化した評価指標を策定すること、拠点病院という制度そのものの我が国におけるがん医療全体への有効性や問題点を客観的に評価できる指標を策定することを目指している。

結論
本研究班によって、初めて拠点病院におけるがん診療の実態を継続的に把握・評価できる適切な評価指標の開発・選定のための研究が進められている。最終的な目標は、策定した評価指標の調査により、拠点病院全体としての活動実態やあり方を評価すること、また各施設の活動状況を見える化してPDCAサイクル推進活動を進展させることで、次期整備指針策定や基本計画の推進に寄与することである。理想を求めて現場のモチベーションを高めることが可能な評価指標の策定が望まれるが、指定要件をクリアーすることに過大な負荷を感じている拠点病院の活動の持続可能性も考慮するべきことは銘記しておく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2024-05-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202307007Z