子宮頸がん検診におけるHPV検査導入に向けた実際の運用と課題の検討のための研究

文献情報

文献番号
202307004A
報告書区分
総括
研究課題名
子宮頸がん検診におけるHPV検査導入に向けた実際の運用と課題の検討のための研究
課題番号
22EA1002
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
青木 大輔(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 八重樫 伸生(国立大学法人東北大学 大学院医学系研究科)
  • 藤井 多久磨(藤田医科大学 医学部 婦人科学)
  • 宮城 悦子(横浜市立大学 大学院医学研究科 生殖生育病態医学)
  • 中山 富雄(国立がん研究センター がん対策研究所 検診研究部)
  • 齊藤 英子(国際医療福祉大学三田病院 予防医学センタ-)
  • 森定 徹(杏林大学 医学部 産科婦人科学教室)
  • 高橋 宏和(国立がん研究センター がん対策研究所 検診研究部)
  • 戸澤 晃子(小野 晃子)(聖マリアンナ医科大学 医学部 産婦人科)
  • 雑賀 公美子(JA長野厚生連 佐久総合病院 佐久医療センター 総合医療情報センター)
  • 黒川 哲司(福井県済生会病院 産婦人科)
  • 上田 豊(大阪大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
国立がん研究センターより「有効性評価に基づく子宮頸がん検診ガイドライン2019年度版」(ガイドライン)が刊行され、検診方法の推奨として細胞診単独法の推奨グレードAと並んでHPV検査単独法:同Aが示された。ガイドラインでは、HPV検査を導入して効果を上げるためには、検診プログラムの手順と運用方法(アルゴリズム)の検討と決定が必要としており、さらに検診提供者と受診者とがそのアルゴリズムを遵守できる体制整備と精度管理も必要である。本研究では一貫して、HPV検査での子宮頸がん検診の実際の運用を検討する際の根拠とする学術的見解を示すことを実施しており、今年度は。地域保健健康増進事業を中心とする対策型検診での実際のアルゴリズムと運用・導入条件検討し、厚生労働省からの要望により、これまで得られた学術的見解に基づいた範囲でがん検診のあり方に関する検討会に示す体を暫定的に作成し、検討の布石とすることを目的とした。
研究方法
HPV検査を用いた検診アルゴリズムについての網羅的文献調査を行ない、実際に実施されている検査方法の体系的把握を行った。続いてHPV検査による検診で、最も鍵となるトリアージ精検受診率確保の対応策を検討するために、有効とされている対策で導入すべきものについて検討した。その際、わが国の細胞診単独検診での精検受診についての把握も実施した。これらを踏まえて、わが国の精度管理状況を考慮したHPV検査単独による子宮頸がん検診のフローを、「有効性評価に基づく子宮頸がん検診ガイドライン2019年度版」の記述との整合性をとりながらデザインした。 
続いて上記の検診事業のフローを元にHPV単独法による子宮頸がん検診のアルゴリズムを作成し、それを実行する、また導入の可否判断の根拠にするための「対策型検診におけるHPV検査単独法による子宮頸がん検診マニュアル」(案)の策定をした。
結果と考察
網羅的文献検索により、HPV検査を用いる子宮頸がん検診のフローは様々であったが、検診方法をHPV単独法とする場合、最も汎用されているトリアージの検査は細胞診単独であり、またHPV陽性かつトリアージ検査が陰性で、「リスク保持者であり、かつ検診時点では前駆病変を含め未だ発病していない可能性が高いと目される者」の後日の発病の有無を追跡する精密検査として最も用いられている検査手法はHPV検査単独法で、これらを組み合わせた。「HPV検査単独による検診→検診陽性者全員に細胞診によるトリアージ→トリアージ陰性者には後日HPV検査」が最も頻度の高いフローであった。
そして、この「HPV検査単独による検診→検診陽性者全員に細胞診によるトリアージ→トリアージ陰性者には後日HPV検査」というフローは、報告されたHPV検査単独法検診の中では比較的シンプルで、ほかのフローと比較して実施の際の混乱が少ないと想定された。また過去のデータと比較しつつ精検受診率を最も高くするための検体採取方法・検査方法としては医師採取液状化検体を用いたHPV検査とその残余検体を用いた液状化細胞診によるトリアージであった。これらの知見とガイドラインの要件からアルゴリズムを策定することができ、さらにはそのアルゴリズムを実施するための「対策型検診におけるHPV検査単独法による子宮頸がん検診マニュアル(HPVマニュアル)」(案)を策定し、がん検診のあり方に関する検討会に供することができた。がん検診のあり方に関する検討会での評価は本アルゴリズムとマニュアルに基づくHPV単独検診の実施にはパイロット事業が不可避という意見が多数得られれたことから、令和6年度中に開始を検討する自治体に対する「令和5年度HPV検査単独法による子宮頸がん検診の導入に向けた精度管理支援研修会」ではHPVマニュアルの内容を元にして、導入に必要な要件の説明すると共に、自治体において十分な精度管理がなされるか、運用上の問題点が許容範囲にあるかなどを把握するためにもパイロット事業としての実施が必要であることを提示するに至った。
結論
暫定的ではあるが、HPV単独検診でのアルゴリズムを決定した。またそのアルゴリズムを実施するための「対策型検診におけるHPV検査単独法による子宮頸がん検診マニュアル」(案)を策定し、がん検診のあり方に関する検討会の検討資料とした結果、同検討会で「わが国の対策型検診への本格的導入に先立ちパイロット事業の実施が必要」という結論を得た。今後は対策型検診である住民検診において、パイロット的な事業を経るなかで、厚生労働省等公的機関の責において、運用の実効性、プログラムとしての安全性がモニタリングされる体制が構築され、改訂が行われる、わが国で初めての国際標準的がん検診導入法になることが想定される。

公開日・更新日

公開日
2024-05-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-05-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202307004Z