地球温暖化に伴い変化する感染症に対する早期防御法確立に関する研究

文献情報

文献番号
200931030A
報告書区分
総括
研究課題名
地球温暖化に伴い変化する感染症に対する早期防御法確立に関する研究
課題番号
H20-新興・一般-015
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
倉根 一郎(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
研究分担者(所属機関)
  • 小林 睦生(国立感染症研究所 昆虫医科学部)
  • 高崎 智彦(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
  • 泉谷 秀昌(国立感染症研究所 細菌第一部)
  • 大前 比呂思(国立感染症研究所 寄生動物部)
  • 宮崎 義継(国立感染症研究所 生物活性物質部)
  • 江下 優樹(大分大学医学部)
  • 鈴木 隆二(独立行政法人国立病院機構(相模原病院臨床研究センター))
  • 前田 秋彦(北海道大学大学院獣医学研究科)
  • 我妻 ゆき子(筑波大学大学院人間総合科学研究科)
  • 滝澤 剛則(富山県衛生研究所 ウイルス部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
60,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究においては、地球温暖化が感染症に及ぼす影響を早期に検出し、わが国における地球温暖化に伴う感染症の被害を防止するためのモニタリングのための基盤技術の確立とわが国のみならずアジアを含めたネットワークシステムの構築を確立することを目的とした。本年度は、1)地球温暖化を伴う気候変動が、ウイルス、細菌、寄生虫・原虫、真菌感染症に及ぼす影響をモニタリングするための技術基盤を確立する、2)地球温暖化が各種感染症に及ぼす影響をわが国及びアジア各国において予測するためのシステムを構築し、影響予測を行う、ことを目的とした。
研究方法
地球温暖化が感染症におよぼす影響については海外において断片的な報告がなされているのみである。一方、わが国においては気候変動と感染症に関する研究はほとんどなされていない。また、多くの解析は必ずしも病原体の活動を反映する最適の指標を用いていない。本研究においては、ウイルス、細菌、寄生虫・原虫、真菌を含め全種類の病原体についての解析を進めた。
結果と考察
水との関連が深い食水系感染症を引き起こす細菌、特にビブリオ属菌に着目し環境モニタリングを行うための基礎技術の開発を行った。タチウオやサバに寄生するアニサキス属幼虫の種が、温暖化や海水温・潮流の変化と、関係している可能性が示唆された。わが国でのヒストプラスマ属の存在が示唆された。インドネシアから帰国のチクングニヤ熱患者を確認しウイルスを分離した。バングラデシュにおいて、下痢症患者の発生数の20年間の変異には2つのピークがあり、プレモンスーンでは気温変動が、モンスーンでは異常降雨が影響していることが観察された。コレラに関する分析では、多雨と少雨の両方で閾値をもって発生が増加した。中空ウイルス粒子を用いたフラビウイルス血清試験法を確立した。媒介ベクターと地球温暖化研究においては、コガタアカイエカが国内で越冬できる地域は限局されその確率は低いと考えられるが、アカイエカの生理・生態的特徴はむしろ日本脳炎ウイルスの越冬に適していることが明らかとなった。
結論
地球温暖化が、ウイルス、細菌、寄生虫・原虫、真菌感染症に及ぼす影響をモニタリングするための技術基盤を確立することを中心に研究を進めた。本研究により、細菌、ウイルス、寄生虫・原虫、真菌感染症に関して、温暖化影響評価の技術確立が進展した。

公開日・更新日

公開日
2010-07-14
更新日
-