がん検診の精度管理における指標の確立に関する研究

文献情報

文献番号
202307001A
報告書区分
総括
研究課題名
がん検診の精度管理における指標の確立に関する研究
課題番号
21EA1009
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 宏和(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策研究所検診研究部検診実施管理研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 斎藤 博(青森県立中央病院)
  • 佐川 元保(東北医科薬科大学 医学部)
  • 青木 大輔(慶應義塾大学)
  • 松田 一夫(公益財団法人福井県健康管理協会)
  • 笠原 善郎(福井県済生会病院 乳腺外科)
  • 中山 富雄(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策研究所 検診研究部)
  • 加藤 勝章(宮城県対がん協会がん検診センター)
  • 祖父江 友孝(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科 社会医学講座環境医学)
  • 小川 俊夫(学校法人常翔学園 摂南大学 農学部食品栄養学科公衆衛生学教室)
  • 立道 昌幸(東海大学 医学部)
  • 齊藤 英子(国際医療福祉大学三田病院予防医学センタ-)
  • 森定 徹(慶應義塾大学 医学部)
  • 雑賀 公美子(国立研究開発法人国立がん研究センター社会と健康研究センター国際連携研究部)
  • 細野 覚代(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策研究所 検診研究部)
  • 町井 涼子(国立がん研究センター がん対策情報センターがん医療支援部検診実施管理支援室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
6,154,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本におけるがん検診は、実施主体により地域住民検診(住民検診)および職域検診に大別されるが、その精度管理の状況は異なる。健康増進法のもとに、精度管理が整備されてきた住民検診と異なり、職域検診においては根拠となる法令がなく、多くの場合保険者や事業主により福利厚生の一環として提供されており、精度管理はされていないのが現状である。がん検診を行うことにより利益と不利益が生じるが、精度管理を適切に行うことで、利益を最大化し不利益を最小化することが可能となるため、がん検診のプログラムのいずれにおいても精度管理体制が整備され、検診の質を高めることが、国全体のがんの死亡率減少につ
ながる。本研究では、住民検診においては、これまでの住
民検診の精度管理体制を見直し、チェックリストおよびプロセス指標の改定を検討する。また、レセプト情報を用いたこれまでの検討をもとに、がん検診に関するデータの利活
用を検討する。
研究方法
〇住民検診
1.住民検診における精度管理体制の検討
精度管理の指標となるチェックリスト実施率やプロセス指標のモニタリングおよび評価・改善への取組を継続することにより、その体制を整備している。本研究では、これまでの検討を継続しつつ、実施主体となる自治体が受診者に対してより適切な受診行動を提供できる方策を、また不利益よりも利益が上回る検診を提供できるような方策を検討する。
2.地域保健・健康増進事業報告の項目および利活用法の検討
地域保健・健康増進事業報告は、毎年市区町村から都道府県を通じて国に報告され、がん検診などの現状を把握し、適切な対策を検討するための資料となるが、項目が多く複雑であるなど問題点が指摘されていることから、簡素化することががん検診のあり方に関する検討会において求められている。また、自治体における利活用が進んでいないことから、わかりやすい利活用法が望まれている。本研究では、これらに対する解決策を検討し、自治体の精度管理機能の向上を目指す。上記の検討は、「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」で推奨されている、5つのがん種の検診に精通している分担研究者を中心に実施する。
〇職域検診
1.「職域におけるがん検診に関するマニュアル」の精度管理に関する検討
職域検診における指針として、平成30年に「職域におけるがん検診に関するマニュアル」が示されたが、解釈が難しく利活用は進んでいない。特に、チェックリストやプロセス指標に関する項目については、現状と乖離している箇所が指摘されている。これらの改善点を検討することにより、実施主体となる保険者や事業主の利活用を促し、職域における精度管理の水準が向上するよう検討する。
2.レセプト情報のがん検診への活用に関するこれまでの検討を踏まえ、妥当性の評価や具体的な利用法を協力保険者において実施し、実装化に向けた検討を行う。
結果と考察
令和5年度は、班会議を1回開催し、住民検診および職域検診に関する問題点や対策について議論を行った。本年度の結果を以下にまとめる(詳細は研究分担者の研究報告書参照)。
〇がん検診指針の修正点について
・「問診」は要精検判定の基準にすべきでないので指針の検診項目から外し、5 がん共に医師以外による「質問」にできないか
・胃がん検診の「当面の間」の見直しにはデータ(特にプログラム感度の再解析など)での検討および慎重な議論が必要
・子宮体がんに関する記述は削除すべき
〇レセプトを用いたがん精密検査抽出ロジックについて
・汎用化についてシステムとしてはできあがっているが普及のための組織体制を検討する段階
〇職域における乳がん・頸がん検診の実態について
・4 年ぶりに行ったアンケートによると、対象年齢の遵守率は、子宮頸がんは高いが乳がんは低く、受診間隔はどちらもほとんどが1 年間隔であった
・検診受診勧奨は実施しても精検受診率の把握はできていない
〇地域保健・健康増進事業報告の簡素化について
・報告項目が複雑化する一方、細かい数値がどのように役立っているのか評価が必要
・項目の整理は一気に減らすのではなく、吟味が必要
〇HPV 検査単独法による子宮頸がん検診導入におけるチェックリストについて
・現在、まず厚労青木班で実施マニュアルを作成しており、それに基づいたチェックリストが作成できるよう検討することになる
〇ロジックモデルについて
・第4 期がん対策推進基本計画のロジックモデルにつて、精度管理の不利益に関する中間アウトカム指標の偽陽性割合の代替として、要精検率を用いてはどうか
結論
第4期がん対策推進基本計画においては、がん検診の精度管理はその充実が掲げられている。本研究班で議論された課題は今後も継続して検討する必要があるため、必要に応じてほかの厚生労働科学研究班との情報交換などを適宜行い、がん検診の精度管理向上に努める必要がある。

公開日・更新日

公開日
2024-05-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202307001B
報告書区分
総合
研究課題名
がん検診の精度管理における指標の確立に関する研究
課題番号
21EA1009
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 宏和(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策研究所検診研究部検診実施管理研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 斎藤 博(青森県立中央病院)
  • 佐川 元保(東北医科薬科大学 医学部)
  • 青木 大輔(慶應義塾大学)
  • 松田 一夫(公益財団法人福井県健康管理協会)
  • 笠原 善郎(福井県済生会病院 乳腺外科)
  • 中山 富雄(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策研究所 検診研究部)
  • 加藤 勝章(宮城県対がん協会がん検診センター)
  • 祖父江 友孝(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科 社会医学講座環境医学)
  • 小川 俊夫(学校法人常翔学園 摂南大学 農学部食品栄養学科公衆衛生学教室)
  • 立道 昌幸(東海大学 医学部)
  • 齊藤 英子(国際医療福祉大学三田病院予防医学センタ-)
  • 森定 徹(慶應義塾大学 医学部)
  • 雑賀 公美子(国立研究開発法人国立がん研究センター社会と健康研究センター国際連携研究部)
  • 細野 覚代(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策研究所 検診研究部)
  • 町井 涼子(国立がん研究センター がん対策情報センターがん医療支援部検診実施管理支援室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本におけるがん検診は、実施主体により地域住民検診(住民検診)および職域検診に大別されるが、その精度管理の状況は異なる。健康増進法のもとに、精度管理が整備されてきた住民検診と異なり、職域検診においては根拠となる法令がなく、多くの場合保険者や事業主により福利厚生の一環として提供されており、精度管理はされていないのが現状である。がん検診を行うことにより利益と不利益が生じるが、精度管理を適切に行うことで、利益を最大化し不利益を最小化することが可能となるため、がん検診のプログラムのいずれにおいても精度管理体制が整備され、検診の質を高めることが、国全体のがんの死亡率減少につ
ながる。本研究では、住民検診においては、これまでの住民検診の精度管理体制を見直し、チェックリストおよびプロセス指標の改定を検討する。また、地域保健・健康増進事業報告の項目や利活用法をわかりやすく整理する。職域検診においては、平成30年にとりまとめられた「職域におけるがん検診に関するマニュアル」の精度管理に関する指標を見直し、実施主体である保険者や事業者の実情
を踏まえた改定を提案する。さらに、レセプト情報を用いたこれまでの検討をもとに、がん検診に関するデータの利活用を検討する。
研究方法
〇住民検診
1.これまでの検討を継続しつつ、実施主体となる自治体が受診者に対してより適切な受診行動を提供し、不利益よりも利益が上回る検診を提供できるような方策を検討する。
2.地域保健・健康増進事業報告の項目および利活用法の検討
地域保健・健康増進事業報告は、項目が多く複雑であるなど問題点が指摘されていることから、簡素化に対する解決策を検討し、自治体の精度管理機能の向上を目指す。
〇職域検診
1.「職域におけるがん検診に関するマニュアル」の精度管理に関する検討
職域検診における指針として、平成30年に「職域におけるがん検診に関するマニュアル」における、チェックリストやプロセス指標に関する項目の改善点を検討することにより、実施主体となる保険者や事業主の利活用を促し、職域における精度管理の水準が向上するよう検討する。
2.レセプト情報を用いたがん検診に関するデータの利活用に関する検討
レセプト情報のがん検診への活用に関するこれまでの検討を踏まえ、妥当性の評価や具体的な利用法を協力保険者において実施し、実装化に向けた検討を行う。
結果と考察
令和3年度
 胃内視鏡検診における適切な生検の実施を自治体に再度周知すること、肺がん検診における判定を人間ドック学会などの基準と統一すること、職域検診の実施者に対して精度管理の考え方を提供することなどが取り上げられた。また、乳がん検診におけるブレスト・アウェアネスの啓蒙、子宮頸がん検診におけるHPV検査の導入に向けた問題点の整理、レセプトを用いた新たな精度管理手法の開発については、関連する厚生労働科学研究班などと協力体制が構築され検討することが可能であった。
令和4年度
がん検診による死亡率減少効果を高めるために、組織型検診に向けた整備が必要であり、現状では乖離の大きい住民検診と職域検診の統合について検討した。職域検診と住民検診の連携による、受診しやすい体制の構築や職域におけるがん検診に関するマニュアルの周知について検討された。
令和5年度
がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針について、現状に沿わない点についての指摘がなされた。また、子宮頸がん検診の方法が変更になったことや、ロジックモデルによるがん対策の評価などについても、ほかの厚生労働科学研究班との連携のもと情報交換がなされた。地域保健・健康増進事業報告の簡素化については、データの利活用の評価が必要であることや、項目の整理には慎重な検討が必要なことが意見として挙げられた。
結論
本研究の成果については、厚生労働省「第33回がん検診のあり方に関する検討会」、「第34回がん検診のあり方に関する検討会」、「第37回がん検診のあり方に関する検討会」に報告し、政策決定の参考資料として情報共有を行った。がん検診の精度管理における今後の課題として、組織型検診に向けた整備、職域におけるがん検診に関するマニュアルの周知、がん検診教育プログラム、人間ドックなどにおけるがん検診の判定基準の統一などが挙げられ、引き続きほかの厚労科研研究班や学会などとの連携し、課題解決することが求められる。
また、職域検診と住民検診の連携による、受診しやすい体制の構築や職域におけるがん検診に関するマニュアルの周知および、医学生教育・医師会教育プログラム・産業医教育におけるがん検診教育の導入・拡充についても、関連学会・団体などと連携して取り組む必要がある。

公開日・更新日

公開日
2024-05-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202307001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
がん検診の指針改正に関する修正点について、専門的観点から政策提言を行った。これらを踏まえた指針改正が2024年2月に公表された。レセプトを用いたがん精密検査抽出ロジックについて、汎用性を高めた実用化のための妥当性検討を行った。
臨床的観点からの成果
職域におけるがん検診のうち、乳がんおよび子宮頸がん検診に関するアンケート調査を行い、実態を評価した。職域におけるがん検診に関するマニュアルに記載された事項のうち、特に2年に1度の受診間隔がほとんど遵守されておらず、受診者管理の煩雑さから、1年に1度の検診が多く提供されており、不利益が大きい実態が明らかとなった。
ガイドライン等の開発
子宮頸がん検診におけるHPV検診単独法の導入について、関連する他の厚生労働科学研究班と共同してチェックリストを検討した。
その他行政的観点からの成果
第4期がん対策推進基本計画のロジックモデルについて、がん検診に関わる中間アウトカム指標について検討を行った。
その他のインパクト
がん検診のプロセス指標値を改訂し、第37回がん検診のあり方に関する検討会に報告した。また、2023年6月に公表された「がん検診事業のあり方について」の基礎資料を作成し第37回がん検診のあり方に関する検討会に報告した。

発表件数

原著論文(和文)
7件
原著論文(英文等)
23件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
51件
学会発表(国際学会等)
13件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
がん検診のあり方に関する検討会で議論
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2024-06-19
更新日
-

収支報告書

文献番号
202307001Z