新型インフルエンザ大流行時の公衆衛生対策に関する研究

文献情報

文献番号
200931022A
報告書区分
総括
研究課題名
新型インフルエンザ大流行時の公衆衛生対策に関する研究
課題番号
H20-新興・一般-007
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
押谷 仁(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 小坂 健(東北大学 大学院歯学系研究科)
  • 森兼 啓太(山形大学 医学部附属病院検査部)
  • 神垣 太郎(東北大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
新型インフルエンザによるパンデミックによる大きな被害が想定されておりこれまで世界中で対策が進められている。そのなかで被害を軽減するために公衆衛生対応を組み合わせることは重要であると考えられる。研究2年目では、2009年4月より北米を端として新型インフルエンザA(H1N1)の発生を経験した。そのためにこれまでの公衆衛生対応に関する知見をまとめるとともに新型インフルエンザA(H1N1)の疫学像についてまとめた。
研究方法
新型インフルエンザA(H1N1)の疫学像およびその対応についてまとめるために、米国、EU、オーストラリアやニュージーランドにおける疫学情報を、ウェブサイトなどを通して調査を行い日本のデータを比較する形でその疫学像の監視を行った。またオーストラリアにおける実際の対応について現地での視察および討議を通してまとめを行うとともに、介護施設における対応をアンケート調査によって情報収集を行った。公衆衛生対応の中で特に効果が期待される学校閉鎖については研究1年目におこなった文献調査を追加するかたちでまとめた。
結果と考察
事前計画ではフェーズによって公衆衛生対策の目的およびその手段や強度が変わることが計画されていたが、その決定にはフェーズの違いだけでなく重症度を含めた疫学的な特徴に基づく検討が重要であると考えられる。オーストラリアの聞き取り調査からも従来想定していたパンデミックによる社会インパクトよりも低く、それを受けた公衆衛生対策の修正のタイミングに課題があったことがわかった。介護施設においても併設サービスの停止基準に関する混乱や感染した職員の補てんに関する問題点として認められている。
また学校閉鎖に関する知見を文献調査および過去のパンデミックにおける解析からまとめ、「基本的考え方」として公表した。学校閉鎖は社会ネットワークあるいは年齢別罹患率を考えると有効であるとk考えられるがその継続期間や便益点については知見が不十分であった。
結論
日本では新型インフルエンザA(H1N1)による粗死亡率が海外に比して低いと考えられる。加えて従来の季節性インフルエンザシーズンにかけては非常に低いレベルに留まったためにパンデミックによるインパクトは予想よりも小さかったと考えられる。これらを適宜報告することができたが、公衆衛生対策がどの程度で被害の軽減あるいは遅延に寄与したのかについて今後の検証のなかで明らかにする必要があると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2010-07-14
更新日
-