臨床試験が実施困難な希少疾患等に対する医薬品の迅速な国内導入を図るための薬事承認審査制度の構築に向けた調査研究

文献情報

文献番号
202306027A
報告書区分
総括
研究課題名
臨床試験が実施困難な希少疾患等に対する医薬品の迅速な国内導入を図るための薬事承認審査制度の構築に向けた調査研究
課題番号
23CA2027
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
成川 衛(学校法人北里研究所 北里大学 薬学部臨床医学(医薬開発学))
研究分担者(所属機関)
  • 間宮 弘晃(国際医療福祉大学 成田薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
2,639,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、(1) 米国及び欧州の条件付き(迅速)承認制度に係る実態の調査(承認時の根拠資料、付される条件及び条件への対応状況、取り消しとなる場合の要件など)、(2) 米国で迅速承認制度に基づいて上市された医薬品に係る医療現場での運用や医療保険の取扱い、同制度に対する製薬企業等の評価に係る調査、(3) 日米欧における条件付き(迅速)承認制度に係る法的枠組みの比較等を行い、今後、日本において条件付き承認制度をより適切に運用していく上での課題を明らかにし、対応の方向性について検討することを目的とした。
研究方法
(1) 米国及び欧州の迅速/条件付き承認制度に関する調査
米国及び欧州において迅速/条件付き承認制度に基づき承認された医薬品に関する情報を、各規制当局のウェブサイト、公表論文等に基づいて調査し、その概要を整理した。また、日米間の承認状況等の比較を行った。
(2) 米国の迅速承認制度及び同制度に基づき承認された医薬品に係る運用状況の調査
大手グローバル製薬企業3社の米国薬事部門担当者から米国の迅速承認制度に関する運用状況等を聴取し、得られた情報をまとめた。
(3) 日米欧における条件付き承認制度に係る法的枠組みの比較
条件付き(迅速)承認制度に関する各国の規制等を調査し、その法的枠組みについて日米欧で比較した。
以上の結果を踏まえて、今後、日本において条件付き承認制度をより適切に運用していく上での課題を明らかにし、対応の方向性について提案した。
結果と考察
(1) 米国及び欧州の迅速/条件付き承認制度に関する調査
米国及び欧州ともに、迅速/条件付き承認制度に基づいて承認される新薬は増加傾向にあり、抗悪性腫瘍薬が多くを占めた。また、迅速/条件付き承認の後、通常承認に移行した品目が一定程度あった一方、承認取消しとなったものもいくつか存在した。承認後の検証的試験としては、迅速/条件付き承認取得時の試験の継続、新たな試験の実施の両者があり、無作為化比較試験が実施されていたケースが多かった。
米国で迅速承認された品目(適応)に係る日本での承認状況は、約6割が日本でも承認されている一方、残りの約4割は未承認であり、日本でも承認されたものの多くは米国での迅速承認から通常承認への移行の間に承認されていた。米国で迅速承認されてから日本で承認されるまでのラグは平均約3年あった。
(2) 米国の迅速承認制度及び同制度に基づき承認された医薬品に係る運用状況の調査
米国での迅速承認医薬品と通常承認医薬品との間で医療保険における取扱いに違いはなく、また、迅速承認制度に対する医療従事者及び患者の一般的な評判はよいことが把握できた。迅速承認された医薬品において実施される市販後の検証的試験は、被験者確保の面で課題があり、また、迅速承認が取り消された場合に、企業から医療従事者や患者に対して何らかの対応が規制上求められているわけではないが、例えば一定の条件を満たす患者にはコンパッショネートユースプログラムにより継続使用の機会を確保するなどの対応事例があった。
(3) 日米欧における条件付き承認制度に係る法的枠組みの比較
日本では「検証的臨床試験の実施が困難又は相当の時間を要すること」が適用条件とされている一方、市販後における有効性の検証の必要性について明確な言及がないこと、米国では代替エンドポイントの結果に基づいて承認することが明示(強調)されていること、欧州では条件付き承認品目については1年ごとの承認更新が必要となることやパンデミック関連の緊急的な承認も制度の対象に含まれることなどが特徴として挙げられる。米国の迅速承認制度に関しては、より適切な運用に向けた議論が進んでおり、今後の動向をフォローしていく必要がある。
結論
十分な臨床試験の実施が困難な希少疾患等に対する医薬品の迅速な国内導入を図るための対応策として、条件付き承認制度のより積極的な運用を検討することは意義があるものと考える。この際には、新たな治療法の迅速な提供と、その有効性及び安全性の検証(それを市販後に委ねることも含め)の2つの視点を常に意識しながら、外国での臨床開発が先行している医薬品、国内開発が先行する医薬品、日本を含む国際共同試験成績に基づいて欧米で条件付き(迅速)承認が検討されている医薬品など、いくつかの具体的な状況を想定した議論を行っていくことが重要である。併せて、承認取消しの必要が生じた際の対応についても事前の準備を進めていく必要と考えられる。

公開日・更新日

公開日
2024-06-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-06-14
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202306027C

収支報告書

文献番号
202306027Z