我が国における日本脳炎の現状と今後の予防戦略に関する研究

文献情報

文献番号
200931018A
報告書区分
総括
研究課題名
我が国における日本脳炎の現状と今後の予防戦略に関する研究
課題番号
H20-新興・一般-003
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
高崎 智彦(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
研究分担者(所属機関)
  • 倉根 一郎(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
  • 小西 英二(神戸大学 医学部)
  • 多屋 馨子(国立感染症研究所 感染症情報センター)
  • 竹上 勉(金沢医科大学)
  • 森田 公一(長崎大学)
  • 脇口 宏(高知大学 医学部)
  • 寺田 喜平(川崎医科大学 医学部)
  • 玉那覇 康二(沖縄県衛生環境研究所)
  • 原田 誠也(熊本県保健環境科学研究所)
  • 前田 健(山口大学 農学部)
  • 田部井 由紀子(東京都健康安全研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
25,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本脳炎(日脳)は、2005年5月より予防接種の積極的勧奨が中止されている。日脳ワクチンが定期接種からはずれたわけではないが、就学時前の小児の予防接種率は極端に低下している。このような状況下で日本脳炎の現状、日脳ウイルスの活動状況の解明が本研究の目的である。
研究方法
1.我が国における日本脳炎の自然感染率、不顕性感染率を調査し、発症率を解析する。2.急性ウイルス性脳炎における日本脳炎に関する検査の実施率及び発症時の病態(髄膜炎、脊髄炎、熱発)等を明らかにする。3.ブタ以外の日本脳炎ウイルス増幅動物の検討、国内で活動する日本脳炎ウイルスの病原性の解析をする。
結果と考察
NS1抗体ELISAにより計算された年自然感染率は、熊本県で1.8%、東京都で1.3%であった。ワクチン非接種者の中和抗体陽性率からは、9歳以下の集団を対象にした場合、熊本県及び東京都では共に2.6%と推定された。日脳患者は、熊本と高知で小児例、大阪で成人例が各1例あった。熊本の症例の発病は、注意報発令より20日以上も前であった。高知の症例は1歳半で、ワクチン標準的接種年齢は3歳であるが、住環境によっては生後6カ月以降3歳未満でのワクチン接種が必要である。また、γ-グロブリンの投与された脳炎症例で日脳抗体上昇が低い場合、グロブリン投与の影響を考え髄液中の日脳IgM抗体検出が有用である。増幅動物では、イノシシから分離された日脳ウイルスに対して、現行ワクチンの有効性が確認された。ブタからは広島、静岡、熊本、長崎県で計9株が分離され、長崎県ではコガタアカイエカから1株が分離された。沖縄県の感染源調査では、最近抗体上昇の時期が遅れ、調査期間の見直しが必要である。動物の感染状況は、室外犬で45%、室内犬で8%であり、四国・九州で高く東北地方は9%、北海道は0%であった。またシカの抗体保有率は94%であった。インドシナ半島北部のJEVが、比較的頻繁に日本に飛来する可能性とともに、移動しないJEVが存在することが明らかになった。
結論
日本国内の日脳ウイルスの活動は依然として夏季には活発であり、ヒトや動物への自然感染は存在し、予防接種は必要である。

公開日・更新日

公開日
2010-07-14
更新日
-