文献情報
文献番号
202306025A
報告書区分
総括
研究課題名
法令改正に向けた産業用途大麻栽培における管理基準策定に資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23CA2025
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
渕野 裕之(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 薬用植物資源研究センター筑波研究部栽培研究室)
研究分担者(所属機関)
- 河野 徳昭(独立行政法人医薬基盤研究所 薬用植物資源研究センター 筑波研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
大麻草の医療用途・産業用途への活用を踏まえ、令和5年12月に改正法が公布された。その中で大麻草の製品の原材料として栽培する場合を第一種大麻草採取栽培者免許、医薬品の原料として栽培する場合を第二種大麻草採取栽培者免許と区分することになった。第一種大麻草採取栽培者に関しては、THCの濃度が基準値以下の大麻草から採種した種子等を用いて栽培しなければならないと規定されている。
同法施行にあたり新たな産業用途の大麻草栽培拡大に向けて、①収穫する前にTHC検査を実施しTHC濃度が基準値以下であることを確認するための手法、②輸入等で入手された種子が基準を満たす種子であることの確認をするための手法が必要である。これらの手法を用いた栽培用種子管理を徹底することにより、THC濃度の適合性の確保ができ、さらに検査機関が基準を満たす種子であることを確認する手法を確立することができる。種子段階においてTHC含量の推定はできないことから、大麻草の屋内環境制御栽培技術により、栽培期間を圃場栽培の約半分以下に大幅に短縮した上でTHC含量の確認を行い、検査手法の標準化のための基礎データを得るとともに、大麻草の人工栽培と同ロットの種子を圃場栽培した個体について、THC含量の同等性の検証を行うことを目的とした。
同法施行にあたり新たな産業用途の大麻草栽培拡大に向けて、①収穫する前にTHC検査を実施しTHC濃度が基準値以下であることを確認するための手法、②輸入等で入手された種子が基準を満たす種子であることの確認をするための手法が必要である。これらの手法を用いた栽培用種子管理を徹底することにより、THC濃度の適合性の確保ができ、さらに検査機関が基準を満たす種子であることを確認する手法を確立することができる。種子段階においてTHC含量の推定はできないことから、大麻草の屋内環境制御栽培技術により、栽培期間を圃場栽培の約半分以下に大幅に短縮した上でTHC含量の確認を行い、検査手法の標準化のための基礎データを得るとともに、大麻草の人工栽培と同ロットの種子を圃場栽培した個体について、THC含量の同等性の検証を行うことを目的とした。
研究方法
AOAC,UNODCにおける推奨分析法に基づき定量法の検討を行い、UHPLC, LCMSを用いた分析手法による定量を行った。2023年3月に圃場播種した低THC種大麻草より、各月サンプリングを行い、栽培期間と総THC含量の相関を検討した。また個体内での部位間差を詳細に検討し、最適なサンプリング法を検討した。さらに圃場と同一系統の低THC種及び高THC種の大麻草を環境制御人工光室内に播種して栽培し、短日処理による栽培期間の短縮を検討、その各生育ステージ毎の総THC、総CBD含量を測定した。屋外圃場栽培と人工環境制御栽培での含量比較を行うことにより同等性を検討した。
結果と考察
屋外圃場個体において最適な採取部位や採取時期などの検討を行った結果、THC含量は頭頂部を含めた先端部の含量が高いことが確認された。人工栽培での検討も合わせ、最適な採取時期は雌株の未熟花穂であることが確認された。
Δ9-THC及びTHCA-A、CBD及びCBDAの4種類の同時定量法の検討を行い、最終的にUHPLC、LC/MS/MSによる分析法の提案を行うに至った。
大麻草の成分分析に供試可能な植物試料育成のため、低THC含量国内系統、海外産高THC系統の2種を材料とし、人工環境制御条件下での検討を行った。セルトレイでの育成では18時間明期/日で育成し、播種後4週間で本葉第5対期に到達することが明らかになり、この栽培期間中に成分分析用の実生個体の葉や全草の試料のサンプリングが可能であることが示された。ポリポットでの育成では、16時間明期/日で育成し、播種後6週間後に不織布ポットに移植した。播種後8週間(本葉第8~12対期)に日長条件を12時間明期/日に変更し開花を誘導したところ、短日処理開始8日後に雄花の開花が、12日後に雌花の形成が確認され、16日後までにすべての雌花の開花を確認した。このように人工環境制御下、播種後約10週間で開花期の雌花または雄花の花穂等を分析に提供可能な試料を育成可能であることが示されたが、本結果は2系統での例であり、分析試料が得られるまでの栽培期間は系統ごとに検討を要すると思われる。
Δ9-THC及びTHCA-A、CBD及びCBDAの4種類の同時定量法の検討を行い、最終的にUHPLC、LC/MS/MSによる分析法の提案を行うに至った。
大麻草の成分分析に供試可能な植物試料育成のため、低THC含量国内系統、海外産高THC系統の2種を材料とし、人工環境制御条件下での検討を行った。セルトレイでの育成では18時間明期/日で育成し、播種後4週間で本葉第5対期に到達することが明らかになり、この栽培期間中に成分分析用の実生個体の葉や全草の試料のサンプリングが可能であることが示された。ポリポットでの育成では、16時間明期/日で育成し、播種後6週間後に不織布ポットに移植した。播種後8週間(本葉第8~12対期)に日長条件を12時間明期/日に変更し開花を誘導したところ、短日処理開始8日後に雄花の開花が、12日後に雌花の形成が確認され、16日後までにすべての雌花の開花を確認した。このように人工環境制御下、播種後約10週間で開花期の雌花または雄花の花穂等を分析に提供可能な試料を育成可能であることが示されたが、本結果は2系統での例であり、分析試料が得られるまでの栽培期間は系統ごとに検討を要すると思われる。
結論
今年度屋外圃場で栽培した低THC含量国内系統を用いて最適なサンプリング法を検討し、頭頂葉が最もTHC含量が高いことを確認した。屋外栽培において播種から66日目以降の試料では、総THC含量は0.1%以下で安定して推移していること、総CBD含量は2.0%以下で安定していることを確認した。当該系統は、人工環境制御下では播種から4日目に子葉が展開し始め、その後の生長ステージ毎の総THC、総CBD含量を検討した結果、圃場栽培と同様に、短日処理後の雌株の未熟花穂が出現した頃が最も含量が高いことを確認した。
本研究において、屋外及び環境制御下での大麻草栽培方法を検討し、最適なサンプリング部位、時期を確認し、また環境制御下においては播種から出穂までの期間を屋外栽培に比べ約半分に短縮できることが分かり、今後の検査業務における重要な基礎データになると思われた。総THC、総CBD含量の定量法について検討を行ったが、今後公定法とするためには、バリデーションや大麻草の生育特性の系統間差などの更なる検討が必要と思われた。
本研究において、屋外及び環境制御下での大麻草栽培方法を検討し、最適なサンプリング部位、時期を確認し、また環境制御下においては播種から出穂までの期間を屋外栽培に比べ約半分に短縮できることが分かり、今後の検査業務における重要な基礎データになると思われた。総THC、総CBD含量の定量法について検討を行ったが、今後公定法とするためには、バリデーションや大麻草の生育特性の系統間差などの更なる検討が必要と思われた。
公開日・更新日
公開日
2024-08-01
更新日
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