中空粒子を用いたウイルス性肝炎の新しい検査・予防法の開発

文献情報

文献番号
200931014A
報告書区分
総括
研究課題名
中空粒子を用いたウイルス性肝炎の新しい検査・予防法の開発
課題番号
H19-新興・一般-014
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 哲朗(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
研究分担者(所属機関)
  • 田中 智之(堺市衛生研究所)
  • 恒光 裕(動物衛生研究所)
  • 勝二 郁夫(神戸大学 大学院医学研究科)
  • 李 天成(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 石井 孝司(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
32,151,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ウイルス抗原のウイルス様粒子(VLP)としての大量調製を基礎に、ワクチンの開発と診断検査法の向上を目指す。
研究方法
VLPの作製調製には主に組換えバキュロウイルスを利用した。ヒト肝癌細胞株などで各肝炎ウイルスの遺伝子発現、蛋白発現を行った。E型肝炎ウイルス(HEV)の感染動物実験にはノトバイオート豚を用いた。
結果と考察
1)ネイティブ粒子と同一サイズのHEV-LP作製に成功した。小型VLPでは認められなかったHEV遺伝子パッケージングが観察された。2)ノトバイオートブタ感染モデルで、HEV-LPが高い免疫原性を有することを確認し、単回経鼻投与によりワクチン効果が期待できることを明らかにした。3)大阪南部地域野生イノシシを対象にHEV保有調査の結果、今年度はHEV抗体/遺伝子の検出は認められなかった。4)2または3種類のプラスミドを同時導入することで、一過性の感染はおこるが増殖はしないHCV-LPの作製法を確立した。5)HCV J6/JFH-1感染系を用いてC型肝炎患者血清中の中和抗体測定系を樹立した。6) HBV粒子の分泌を制御する配列がpreS1-preS2領域にも存在する可能性を示した。7) 新規ポリオーマウイルウ(MCV)のVLP作製と精製に成功し、これを使った抗MCV抗体測定系を開発し我が国健常者における同抗体保有率を明らかにした。
結論
HEV、HCV、HBVの組換えVLP作製技術を改良しワクチン、診断系の開発に繋がる知見を得た。特にHEVについてはVLPワクチンによって感染が阻止されることを初めて示した。

公開日・更新日

公開日
2010-07-13
更新日
-

文献情報

文献番号
200931014B
報告書区分
総合
研究課題名
中空粒子を用いたウイルス性肝炎の新しい検査・予防法の開発
課題番号
H19-新興・一般-014
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 哲朗(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
研究分担者(所属機関)
  • 武田 直和(19、20年度 主任研究者)(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 田中 智之(堺市衛生研究所)
  • 恒光 裕(動物衛生研究所)
  • 勝二 郁夫(神戸大学 大学院医学研究科)
  • 李 天成(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 石井 孝司(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ウイルス抗原のウイルス様粒子(VLP)としての大量調製を基盤に、ワクチンの開発と診断検査法の向上を目指す。
研究方法
VLPの作製調製には主に組換えバキュロウイルスを利用した。各肝炎ウイルスの遺伝子、蛋白発現には主にヒト肝癌細胞株を使った。E型肝炎ウイルス(HEV)の感染動物実験にはノトバイオート豚を用いた。
結果と考察
(1)HEVでは、HEV-LPのワクチン化に向けた基盤研究の他に、野生動物での疫学調査、感染培養細胞系の確立、またネイティブ粒子様VLPの作製などの成果を得た。(2)HCVでは、一過性に感染するが増殖しないHCV-LPの作製、また中和抗体測定法の開発を行った。(3)HBVでは粒子分泌を規定するPreS領域を明らかにした。(4)新規ポリオーマウイルスMCVではVLP作製と精製に成功し、これを使った抗MCV抗体測定系を開発し我が国健常者における同抗体保有率を明らかにした。
結論
HEV、HCV、HBVの組換えVLP作製技術を改良しワクチン、診断系の開発に繋がる知見を集積した。特にHEVについては、VLPワクチンが感染阻止効果を持つことを明らかにした。新たに発見されたポリオーマウイルスMCVのVLP作製、抗体診断系を開発した。

公開日・更新日

公開日
2010-07-14
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200931014C

成果

専門的・学術的観点からの成果
ネイティブ粒子と同様の形態を示すE型肝炎ウイルス様粒子(HEV-LP)の作製に成功した。ウイルス構造解析等に極めて有用である。またこれまでの小型HEV-LPにはHEV遺伝子は取り込まれていなかったが、今回のVLP内部にはHEV配列が取り込まれていた。このことから、本ネイティブ様VLPを利用することにより、HEVのゲノムパッケージングなどウイルス複製機構の研究が進展するものと期待される。
臨床的観点からの成果
近年、B型肝炎ワクチンに対するエスケープ変異ウイルスの出現が問題になっている。これを克服しB型肝炎ワクチンによる予防効果を上げるためには現行のワクチンには含まれていないPreS抗原が重要と考えられるが、本研究ではPreS抗原を含んだHBV-LPの効率のよい産生法を確立した。また、E型肝炎ワクチンの評価法としてノトバイオート豚感染モデルが有用であることを示し、HEV-LPワクチンによるHEV感染防御には経粘膜投与が非常に有効であることを初めて報告した。
ガイドライン等の開発
ウイルス肝炎研究財団が作成したウェブサイト「Q and A: E型肝炎」の作成にあたり、ウイルス学研究者の立場から助言、協力を行った。また、人獣共通感染症として、動物衛生研究所のホームページでもE型肝炎関連情報の提供を行った。
その他行政的観点からの成果
前述の「Q and A: E型肝炎」は多くの衛生試験所等、自治体関連機関のホームページとリンクしており、野生動物及び豚肉を介したE型肝炎に対する適切な情報の提供、予防診断法についての啓蒙活動に寄与した。また、大阪府、和歌山県を対象に野生イノシシ、シカにおけるHEVの感染実態調査を継続的に実施し報告した。人へのHEV感染源を特定する上で、野生動物の実態調査が重要であることを示した。
その他のインパクト
19-20年度主任研究者の武田は、HEVの国内感染状況、推定される感染経路などについて新聞取材を受け一般紙などにコメント記事が掲載された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
58件
その他論文(和文)
21件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
75件
学会発表(国際学会等)
25件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Suzuki, R., Moriishi, K. Suzuki T et al.
Proteasomal turnover of hepatitis C virus core protein is regulated by two distinct mechanisms: ubiquitin-dependent and ubiquitin-independent but PA28gamma-dependent.
J Virol , 83 , 2389-2392  (2009)
原著論文2
Hara H, Aizaki H, Suzuki T, et al.
Involvement of creatine kinase B in hepatitis C virus genome replication through interaction with the viral NS4A protein.
J Virol , 83 , 5137-5147  (2009)
原著論文3
Matsuura Y, Suzuki M, Li TC, et al.
Prevalence of antibody to hepatitis E virus among wild sika deer, Cervus nippon, in Japan.
Arch Virol , 152 , 1375-1381  (2007)
原著論文4
Li TC, Miyamura T, Takeda N
Detection of hepatitis e virus RNA from the bivalve yamato-shijimi (corbicula japonica) in Japan.
Am J Trop Med Hyg , 76 , 170-172  (2007)
原著論文5
Li TC, Takeda N, Tsunemitsu H, et al.
Serological Evidence for Hepatitis E Virus Infection in Laboratory Monkeys and Pigs in Japan.
Exp. Animals.  (2008)
原著論文6
Naotaka Ishiguro, Yasuo Inoshima, Tomoyuki Tanaka et al.
Construction of three-year genetic profile of Japanese wild boars in Wakayama prefecture, to estimate gene flow from crossbred Inobuta into boar populations.
Mammal Study , 33 , 43-49  (2008)
原著論文7
Deng, L., Adachi, T., Shoji, I, et al.
Hepatitis C virus infection induces apoptosis through a Bax-triggered, mitochondria-mediated, Caspase-3-dependent pathway.
J Virol , 82 , 10375-10385  (2008)
原著論文8
Wang CY, T-C Li, Takeda N, et al.
Crystallization and preliminary X-ray diffraction analysis of recombinant hepatitis E virus-like particle.
Acta Crystallogr Sect F Struct Biol Cryst Commun. , 64 , 318-322  (2008)
原著論文9
Yamamoto H, Li TC, Takeda N. et al.
Serological evidence for hepatitis e virus infection in laboratory monkeys and pigs in animal facilities in Japan.
Exp Anim. , 57 , 367-376  (2008)
原著論文10
T-C Li, Yuriko Suzaki, Naokazu Takeda, et al.
Mice are not susceptible to hepatitis E virus infection
J Veter Med Sci , 70 , 1359-1362  (2008)
原著論文11
Sugitani M, Li TC, Takeda N, et al.
Detection of hepatitis E virus RNA and genotype in Bangladesh.
J Gastroenterol Hepatol.  (2008)
原著論文12
Masaki T., Suzuki R, Suzuki T. et al.
Interaction of hepatitis C virus nonstructural protein 5A with core protein is critical for the production of infectious virus particles.
J Virol , 82 , 7964-7975  (2008)
原著論文13
Ishii K., Murakami K., and Suzuki T. et al.
Trans-encapsidation of hepatitis C virus subgenomic replicon RNA with viral structure proteins.
Biochem Biophys Res Commun , 371 , 446-450  (2008)
原著論文14
Aizaki, H., Morikawa, K.,,Suzuki, T.et al.
A Critical Role of Virion-Associated Cholesterol and Sphingolipid in Hepatitis C Virus Infection.
J Virol , 82 , 5715-5724  (2008)
原著論文15
Yamashita T, Mori Y, Li TC, et al.
Biological and immunological characteristics of hepatitis E virus-like particles based on the crystal structure.
Proc Natl Acad Sci USA , 106 , 12986-12991  (2009)
原著論文16
Bungyoku, Y., Shoji, I., Makine, T, et al.
Efficient production of infectious hepatitis C virus with adaptive mutations in cultured hepatoma cells.
J Gen Virol , 90 , 1681-1691  (2009)
原著論文17
Kasai, D., Adachi, T., Shoji, I. et al.
HCV replication suppresses cellular glucose uptake through down-regulation of cell surface expression of glucose transporters.
J Hepatol , 50 , 883-894  (2009)
原著論文18
Sasase, N., Kim, SR, Shoji, I. et al.
Outcome and early viral dynamics of viral mutation in PEG-IFN/RBV combination therapy for chronic hepatitis with high viral loads of serum HCV RNA genotype 1b.
Intervirology , 53 , 44-48  (2010)
原著論文19
Kiyohara T., Totsuka A., Ishii K. et al.
Characterization of anti-idiotypic antibodies mimicking the antibody-binding site and the receptor-binding site on hepatitis A virus.
Arch Virol , 154 , 1263-1269  (2009)
原著論文20
Kiyohara T., Ouchi Y., Ishii K. et al.
Evaluation of an in-house anti-hepatitis A virus (HAV)-specific immunoglobulin M capture enzyme-linked immunosorbent assay kit and its practical use for analysis of an HAV outbreak.
J Med Virol , 81 , 1513-1516  (2009)

公開日・更新日

公開日
2016-06-27
更新日
-